第31話 エキシビションマッチ
俺達が闘技場のあるテーブルにつくと、何事かとどよめきが起こった。その原因の大半は鮒田の不遜な態度だが。雑魚ども、どけっ! と言わんばかりの入場で、早くもヒール役が確定した。
テーブルの上に置かれた闘技場は円形で、直径は100cm程度か。随分と広く感じるが、今後はどんどんモンスターのサイズも大きくなるだろうし、チーム戦も考えられる。これぐらいあった方がよいのかもしれない。
一応椅子も置かれているが、これはインターバルの時に座る用だろう。立ったまま俯瞰の方が指示が出しやすい。よほど召喚モンスターに自信がない限り、対戦中に座ることはない。
立会人が誓約書へのサインを求めてくる。内容は理解しているので、サッと読み飛ばして記入すると段田さんが声を上げた。
「これより、本日のエキシビションマッチを行います!」
どよめきが大きくなる。
「それでは両者、召喚を!」
鮒田が何やら腕をシュッシュッと突き出し格好をつける。ポーズとはこのことか。観客の冷やかな視線もお構いなしだ。
「出でよ! 武蔵!!」
ふてぶてしい顔のオークが現れると歓声が上がった。星1モンスターの召喚石はどんどん市場に出回るようになってきたが、星2以上となると珍しい。ましてや星3はほとんど出回らない。さっきまで戦っていたモンスターもスケルトン以外は星1評価だ。
「ゴ治郎、来い!」
赤い帽子を被ったゴブリンが現れると割れんばかりの歓声が──ない。皆、ポカンとしている。さっきまでの盛り上がりは何処へ行った? ボソボソと聞こえてくるのは「クリスマス仕様?」「まだちょっと早いよな?」「オークの蹂躙劇かぁ。悪趣味だなぁ」のような声ばかり。
こいつらの目は節穴か!? ゴ治郎が普通のゴブリンに見えるというのか? この溢れ出すカッコ良さに気が付かないなんて、もはや不幸だろ。
武蔵は既に闘技場のゲートをくぐり、腕組みをして中央で待っている。ダンジョン産の革装備で身をかため、右手には相変わらずのハンマーだ。
「ゴ治郎、驚かせてやれ」
「ギギッ!」
タンッ! という足音がテーブルに響くと同時にゴ治郎が消え、闘技場の中央に土埃が舞った。それが晴れるとゴ治郎の姿が現れる。
観客が沈黙した。
段田さんに視線をやると、ゆっくりと頷く。そして息を吸い──。
「はじめっ!」
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