第11話 充実

「よっしゃー!!」


「ギッギー!!」


宝箱の中に入っていたのは革のズボンだった。やっとこれで腰のボロ切れとおさらばだ。実はゴ治郎が股間を触ると、見えてたんだよね。革のズボンを穿けば、そんなアクシデントともおさらばだ。


いやー、しかしここまで装備を集めるのは並大抵ではなかった。もう、諦めて自分で作ろうかと思うぐらいに。ゴ治郎は昼夜を問わずダンジョンアタックを繰り返し、俺は昼夜を問わず食事を続けた。もう何を食べても味に飽きてしまって、ほぼ作業だった。


しかし、見よ! この装備の充実っぷりを!


【ゴ治郎の装備一覧】


頭:なし

胴:革の胸当て

右手:銅の剣

左手:革の丸盾

腰:革のズボン

足:革のブーツ


野蛮なゴブリンから、見事な駆け出し冒険者に!


これらの装備は全てダンジョン第1階層の宝箱から見つけたものだ。宝箱の出現位置はランダムだが、第1階層に同時に現れるのは一つだけだった。一度宝箱を開けると4時間はリポップしないことも分かっている。


また、さんざんゴブリンを倒したが、こちらは一切武器や防具のドロップはなし。全て魔石だった。召喚石も落ちることはなかったから、俺は相当運が良かったことになる。


「よし。革のズボンを穿いていいぞ」


「ギギッ!」


早速、ゴ治郎がボロ切れを脱ぎ、革ズボンを穿いて飛び跳ねている。余程嬉しいのだろう。


見ため的には、銅の剣のところだけショボくなっているが、実情は全く違う。やはりキーホルダーはキーホルダー。武器ではなかった。ちゃんと作られた銅の剣の威力は驚くべきもの。ゴ治郎の腕力が合わさると、嵐のような暴力が生まれるのだ。


実際、ゴ治郎が普通のゴブリンを銅の剣で叩くと、体が吹き飛ぶようになってしまった。完全にゴア。視覚の共有を切るぐらいに凄まじい光景だ。もう慣れてしまったが。


「宝箱はしばらくリポップしない。今日はもう切り上げるぞ。明日、あの赤帽子にリベンジだ!」


「ギギギッ!」


ゴ治郎が手のひらの召喚石に戻ると、波打つように輝いた。ゴ治郎が復活してから3週間。ただひたすら戦い続けた努力の結晶がそれだ。


明日、リベンジが叶わなければ夏休み中のリトライは難しい。何としても勝たなければならない。そう考えると俺はなかなか寝付けず、夜半過ぎまでしばらく天井を眺めているのだった。

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