第22.4話 父娘4

「……ということで、私はKYUTEの活動を続けることができたんです。しずくも後から加入してくれて益々活動に熱が入る一方で、父とは一層険悪になり、ひと悶着あった結果、私は叔母の家に居候させてもらうことになりました。学業を疎かにしなければKYUTEでの活動に一切口出しをしないという取り決めだけを交わし、私たちは相互不干渉を貫いていました」

長い独白を終え、いよいよ須川が本題へと切り込む。

「それなのに、こうして出向してきて、さらには一番大事な時期にしゃしゃり出てきて、挙句の果てには役員権限で私をやめさせようとするなんて、公私混同もいいところですし、ふざけてると思いませんか?」

一気に捲し立てて、須川がため息をつく。

「なるほど、須川ちゃんの気持ちは分かった。それで、お父さんがこのタイミングでやめさせようとしてきた理由に心当たりはあるか?」

田中が頭を掻きむしりながら問う。

ただでさえ業務で手いっぱいのところに、お家騒動が飛び火し対応を求められる田中の心労は如何ばかりか、戸松からすればただただ気の毒としか言いようがない。

「それが分かりません。私も父から話を聞いたときに取り乱しちゃって、その結論に至った経緯を聞く由もなかったんです……」

力なく首を垂れる須川の姿は幾分痛々しく映る。

「そのあたりは確認せにゃあかんな。とりあえず、須川ちゃんのお父さんと会わないことには始まらないな。須川ちゃん、叔母さん経由でもなんでもいいから、急ぎお父さんとアポをとりつけてくれ。あ、とまっちゃんは話すことがあるからこのまま残ってくれ」

「分かりました。ご迷惑をおかけします」

須川が一礼し退出する。

「はぁ、厄介ごとが途切れないな……。なぁ、とまっちゃん、いっそのこと総合プロデューサーの役割も引き受けないか?やりがいに溢れる仕事だぞ」

須川がいなくなった途端、田中がだらしなく姿勢を崩す。

「確かに随分とやりがいがありそうですね。ただ、大変魅力的な提案ですけど、彼女たちの手綱を握るのは、私には荷が勝ちすぎていますね」

今まさに直面しているのは須川の問題であるにもかかわらず、真っ先に脳裏に浮かぶのは香坂の姿。

彼女だけでも十分持て余しているにもかかわらず、他のメンバーにも気を配ることは戸松には到底できそうにもなかった。

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