私、VTuber。〜二次元の存在です〜
つきがし ちの
序章 ライブ配信
「Live配信始めたはいいんだけどさ、
今日、ネタなんもないんだよな〜」
とあるチャンネルのライブ配信。
画面に写る3Dのモデルのキャラクターは、
顔や体を動かし、声に合わせて口をパクパクと自然に動かしながら、視聴者に話しかける。
「そうだ!夏だし、怖い話大会しよう!
誰か怖い話とかあったらコメントして!」
それを聞いて視聴者たちは、画面横のチャットに一気にコメントを投稿する。
それらの大量のコメントは、かなりのスピードで流れていく。
キャラクターはコメントをいくつか拾って読む。
「『トイレの花子さん』『メリーさん』…有名なやつ
それは某掲示板のじゃん!それはつまんなさそう!
なんか知ってるのばっか」
しばらくケラケラと笑いながらコメントを読み上げていたが
とあるコメントに興味を示した。
『最近のニュースで気になるやつがあります』
たったそれだけのコメントがあった、でもだからこそ気になったんだろうか。
「へーなんだろう、教えて」
キャラクターは詳細を要求した。
『https://gohoo.○○○○.△△△△△.news.co.jp/×××××/page02139/5320939』
すぐにコメントが投稿された。
キャラクターはお礼を言うと、
リンク先に書かれている記事をかいつまんで読み上げた。
「えーっと、『〇〇会社の社員が失踪』
『都内に住む会社員××さんが、△△日から行方がわからなくなっている』
『社内でスマホを見ながら昼食をとっていたというのが、最後に目撃した人の証言』
『荷物はスマホを含めたすべてが、その場に残ったまま』
これ怖い話ではなくて事件じゃね?」
キャラクターはそう思ったらしく落胆したが
視聴者の一部は、ただの事件…とは見ていなかったらしい。
『その人が見てたのVTuberの動画だったとかいう噂だよね』
『あーそういうことw察したw』
そのコメントにキャラクターはコメントに食いついた。
「え、察したとか何?教えてよ!」
するとコメントで詳細が流れてきた。
『とあるVTuber用のアプリを使って配信したチャンネルは、100万人登録達成すると使用者が消えるらしい』
「え!何それ詳しく!」
キャラクターを含め、なにも知らない人たちは、
さらに詳しい話を聞くために続きのコメントが流れてくるのを待ち、
知ってる人間は、知らない人たちがどんな反応をするのか
ワクワクしながら見守った。
しかし
『なぁ、お前誰だよ。』
このコメントで、配信の空気が変わった。
「なにこのコメント」
戸惑うキャラクター
『誰?』
コメントの意味が全くわからない。
『誰』
そのコメントは止まらない。
『誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰。』
「うわっ!なんだこれ!」
キャラクターは慌てて何かを操作している素振りを見せる。
「みんなごめん!変なのに絡まれたから今日ここまで!
また次のライブで!チャンネル登録よろしく!」
こうして、このチャンネルの、この日のライブは終わった。
こんなことが起きたにもかかわらず、
このチャンネルは、その後も何事もなかったかのように存在している。
そして今でも新作動画は毎日アップされ、
定期的にライブ配信が穏便に行われている。
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