物件探し、準備、開店

第14話 ドライアドの棲み処

 宿のご主人に紹介された不動産屋の元へと向かった僕とエレミー。

「超オススメ物件だぜぃ~」と言われ、案内されたのは町外れの庭付き一軒家。

 予想外に大きな邸だった。

 だがもう一つ予想外なことが……。

 なんと邸の壁も屋根も庭も、蔦だらけで一面グリーンだったのだ。

 なんてジャンゴォ……。

 まるで緑の腐海! 

 王蟲出てきそう……。

 僕が顔を引きつらせていると、不動産屋が恐る恐る訊ねてくる。

「手入れはちょっと大変だけども……どぉだい?」

「……ちょっと?」

「やっぱり、ダメですかい……? お値段の方も異常な値引きをさせて貰いますけど? 破格の家賃ですけどぉ~?」

 ダメだ! 

 そう言おうとも思ったが、僕はあることに気付いた。

 この一面の植物……葛だ! 

 聞いたことがあるぞ! 

 アメリカ等の海外で爆発的に葛が増えて、特定外来種として問題になっているって! 

 きっとこの葛邸も、そういうことなのだろう。

 そして葛と言えば葛餅を始め、和菓子の材料にもなる。

 よって僕が下した決断は――! 

 不動産屋が半ば諦め気味に、最終確認をしてくる。

「こちらの物件、買いますか? 買いませんか?」

「買ーいーまー……」

「買いま……?」

「――すッ!」

 この瞬間不動産屋とエレミーの、ギョッとした目がこちらを向いた。

「えええ!? いいんですかい!?」

「そうだぞナギ。こんなドライアドの棲み処みたいなところでいいのかー? 一日で肌が緑になりそー」

 僕は二人に言ってやる。

「だってこの植物、食べてしまっても構わないんでしょう?」

「あ……はい……」

「ナギ……」

 思っていた以上にドン引きした目を、二人から向けられるのだった。

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