第5話 孤児の名は。
夜の支配者の種族?
僕がそのことについてを訊ねるよりも早く、丁度近くを通りがかった中年のオジサンが話に割り込んでまでこう突っ込んでくる。
「嘘つけ嬢ちゃん! 夜の支配者の種族といやぁ、あの伝説のヴァンパイアってぇことだぞ? エルフ、ドワーフ、獣人、魚人、オーク、オーガ、リザードマン等々、数多く居る亜人種。その中でも特に稀少として挙げられるのがウェアウルフや妖狐、そしてヴァンパイアだ。そんなのが真っ昼間っからこんなところで行き倒れているかよ」
「えぇ……」
「どうせ近くのスラムから来たんだろ? 兄ちゃんもそういう質の悪い孤児に騙されて、金をむしり取られないようにな!」
それだけを言って、オジサンはどこかへ行ってしまった。
「……だ、そうだけど?」
「ほ、ほんとだもん。ほんとに夜の支配者の種族だもん」
涙目でそう訴えてくる少女。
きっと、引き際がわからなくなってるんだな……。
僕はそんな彼女の肩にポンと手を置き、努めて優しい口調で訊ねる。
「本当の目的は?」
「私、子供だしどこでも働かせて貰えなくて、食うに困ってお人好しのお前に付いていこうと考えました」
「やっぱりそういうことじゃないか……」
でも一度は助けた少女が、その後再び餓死してしまうなんて気分が悪い。
けれど金貨はたったの三枚しかないのだ。
余計な出費は抑えたいというのが本当のところではある。
それでも僕は……。
「……僕は伊澤凪。ナギでいいよ」
「私はエレミー」
「エレミー、これからよろしくね」
「うん、こちらこそよろしくな? ナギ」
それでも僕は、この少女と共に歩む道を選んだのだった。
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