第2話 アンデッド!?
とにかく、状況を整理しよう。
これまでの会話の流れや西洋風建築だらけの景色から察するに、どうやらここは異世界らしい。
そして魔王なのか敵国なのかはわからないが、この国では剣や魔法の心得のある勇者を欲し、異世界召喚を行った。
しかし現れたのは望んだ勇者では無く、僕というただの高校生で、価値が見出だせずに放逐された……と、つまりはそういうことなのだろう。
Whhhhhhy anoter world people!?
なんッッッて自分勝手な!?
あんッッッのチビ姫め、可愛らしい顔してなんつー冷酷な!?
喚んだのはそっちなんだから、せめて僕を元の世界に帰してくれよっ!
勝手過ぎるだろ!?
一体これから僕はこんな見知らぬ世界で、どうすればいいんだぁぁぁぁっ!?
状況の整理が出来たところで、まず金貨を拾ってポケットに突っ込んだ。
縁もゆかりも無いこの世界において、お金は最重要。
金貨三枚にどの程度の価値があるのかはわからないが、ガチのマジで命にも関わる。
……まあ門兵の言葉通りならば、数ヵ月は生き延びることが出来るくらいの額なのだろうと楽観的に推測した。
「はああああ」
大きく溜め息をついてから、心機一転甘えた気持ちを改めるためにも異世界の空気を肺へとたっぷり吸い込む。
今僕がやるべきことはなんだろうか?
それを考えた時、まず思い浮かんだのは情報収集をすることだ。
この世界についてのあれこれ。
特にお金の価値などを知っておかなければあっという間にぼったくられて、たちまち行き倒れてしまうかもしれない。
よし、そうと決まれば情報収集のためにも散策開始だ!
そう思い歩き始めた矢先――。
足の裏に「ぐにり」という嫌な感触が伝わる。
驚いて視線を下げれば、そこには早速路上で大文字にうつ伏せで倒れている少女が居た。
「うわぁ」と思わず声が漏れる。
まだこんな子供なのに……。
どうやらここはかなり厳しい世界みたいだ。
僕は絶対にこうはなるまい……。
そう、元の世界に帰るまでは……!
遺体の横にまで移動し、そこで膝を折り手を合わせ、誤って踏んでしまったことと供養のために「南無~」とだけ簡単に祈る。
すると突然遺体の手が伸び、僕の足首をわしっと掴んだ。
「ヒィィィィッ!? 生き返った!?」
この瞬間、僕の脳裏にとある可能性が過る。
――しまった!?
まさかコイツは――!
「アンデッド!?」
だが、そうでは無かったようで……。
僕の足首を掴んだ手は握力を弱め、遺体は力無い声で呟く。
「死んで……ない……」
「生きてる!?」
「お腹……減った……」
そう、それはアンデッドどころか遺体ですらなく、されど飢え死に寸前の人間だった。
「あ……ダメだ……声を出したら……余計にお腹が空いて……死が近付いてきたかも……しれない……」
言いながら少女はチラチラと、こちらを何度も窺うように見上げてくる。
「……」
……タカりか?
どうやら死体よりも余程厄介そうなものを踏んでしまったらしい。
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