第2話 今年の目標
「はぁはぁはぁ……」
最初に言っておくが、俺は息が弾んでいるだけであって、別に何かに欲情している訳ではない。
というか、欲情しているとき本当に『はぁはぁ』言うやつなんてごく少数だろう。
「くそ、お前のせいだぞ!」
俺は左の手首に着けている腕時計を睨んだ。
家を出る時に8時5分だった腕時計は、時間が経った今も8時5分を指している。
「いや、俺のせいでもあるか」
登校中『8時5分ならまだ大丈夫』と思った場面が何度もあったのにも関わらず、腕時計が壊れていることになかなか気づかなかったのだ。
それから俺はポケットからスマホを取り出して正確な時間を確認する。
「8時25分、あと5分で着かなきゃいけないのか」
ため息をついたその時、後ろから俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「おーい煉牙(れんが)ー!」
振り返ると、今年も同じクラスになった城野明正(しろのあきまさ)が手を振っている。
明正は俺が中学からの友達で、遅刻の常習犯でもある。少しスケベでアホなやつではあるが、俺の一番の親友だ。
「明正、新学期早々遅刻か?」
「おっと煉牙、お前にだけは言われたくないぜ!それより俺たちって2年1組だったよな?」
「いや、俺もお前も2組だぞ」
「ジョ、ジョークだよジョーク!ハハハハ!」
たぶん笑い事じゃないしジョークでもないが、明正はスルーして話を進める。
「そういや覚えてるか?俺たちの今年の目標」
「ああ、『彼女をつくる』、だろ?」
俺はニヤリとしながら明正を見る。
高校に入ったのもそのためだ。忘れるわけがない。
「ふっ、正解だ」
「まあ毎年同じ目標だからな」
「でも今年こそは頑張って、お互いリア充になろうぜ!」
「おう!」
俺たちは固い握手を交わしながら正門をくぐる。
2年2組にかわいい子がいますようにと願いながら。
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