【「私、兄貴のこと嫌いだから」→「お兄ちゃん、大好き!」~俺のことが嫌いな妹が催眠術でブラコンになった件~】

青葉

第1話 目覚まし時計

 『ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ……』


 俺がこの世でもっとも嫌いな音は目覚まし時計のアラームだと言っても過言ではない。


 『ピピピピ、ピピピピ、ピ』

 「死ね!」


 俺は少々の殺意をこめてボタンを押す。

 感謝はしているがもっと優しい音で起こしてくれてもいいんじゃないのか。

 例えば「お兄ちゃん朝だよー」とか「早く起きないとキスしちゃうぞー」とか。


 「……とりあえず朝飯食おう」


 ただの目覚まし時計に何求めてんだろうと思いながら、俺は階段を降りリビングへと向かう。


 「兄貴の目覚まし時計いつもうるさいんだけど」

 「あ、すまん」

 「くそ迷惑だから早く止めて」

 「はいはい」


 食パンを食いながら俺に説教をするのは一つ下の妹、夜川揚羽(よるかわあげは)だ。

 金髪の美少女が妹なんて羨ましいと思うやつもいるかもしれないが、兄である俺は相当嫌われている。数年前は「お兄ちゃん大好き!」とか言って抱きついてくる愛嬌のあるやつだったが、今やその面影はない。


 「なあ揚羽、今日は俺と一緒に登校するか?」

 「……え、発情期?キモいんですけど」

 「いやだってお前今日が入学式だろ?学校までの行き方とか分かるのか?」

 「私友達と行く約束してるから。それに、もし分からなかったとしても兄貴と一緒に行くなんてことは絶対にないから」


 揚羽は俺と一度も目を合わせることなく家を出ていってしまった。


 「俺もそろそろ行かないとな」


 腕時計を見ると8時5分ピッタリだ。スクールバッグを肩にかけた俺は急いで家を出ることにした。

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