第4章 始動編
第071話 麓の村ドラゴティップ!
毎度おなじみの青い空、白い雲。
そして。
「あれが、ドラゴンの宝物庫があるっていう、白竜山脈か!」
彼方に高くそびえ立つ、アルプスもかくやの白い笠をかぶった山たち!
「ようやく着いたわね」
「麓の村はまだあと少しにございますが……この景色を見れば、これまでの労も浮かばれますね」
「だな」
娯楽と破滅の町ガイザンから出発し、森を大きく南側から迂回しつつの長い旅路の果て。
ここまで舗装された道を、健脚頼りでえっちらおっちら歩いては。
「さぁ、もうひと踏ん張りだ。行こうか」
「はい。主様」
「村に着いたら絶っ対! 宿に泊まるんだから!!」
もう少しで目的地、というところまでやって来た。
というわけで改めて、ハローヤーヤー皆の衆。
異世界転生者のセンチョウ・クズリュウだ!
第二の人生の舞台であるモノワルドで、レアアイテムのコンプリートを目指してます!
旅の仲間は二人。
一人は俺を救世の使徒と慕う
もう一人は北の王国貴族サウザンド家が誇るド根性お嬢様、メリー・サウザンド。
どちらも飛び切りの美少女で、中々に恵まれた道中を過ごしています。
んで。俺たち三人は今、ドラゴンが貯め込んだ財宝を求めてパーティーを組んでいる。
白竜山脈にいるドラゴンの巣には、ドラゴンが出入りしている穴とは別に、人が通れる扉があるらしく、だがその扉はずっと人の通りを拒絶し続けている開かずの扉なのだそうだ。
普通なら誰もが諦めるところだが、俺の手にはそれを打開する切り札がある。
――
使えば大体ぶっ壊れるが、一度だけならバッチリ鍵の掛かった扉を開けてくれる超有能アイテムだ。
これを手に入れたおかげで、俺たちはドラゴンの財宝への挑戦権を得た。
(だったら当然、挑むよな!?)
レアアイテムハンターとしても、一介の冒険者としても、何より、ファンタジーなんて前世じゃ想像の産物だった世界出身の転生者としても!!
このロマン、十分に命を懸けるに足る大冒険が期待できるのだ。
「あ、見えてまいりました。主様!」
「見て、白布。あれが……!」
「おおー!」
遠くに見える特徴的な景色に、俺たちは色めき立つ。
遠方の山並みにひときわ高くそびえ立つ山を正面に、やたらと幅がある中央通りを挟んで左右に家が立ち並ぶ、そここそが。
「あれがドバンの爺さんが言ってた麓の村、ドラゴティップか!」
今回の旅の目的地であるドラゴンの財宝へと続く、開かずの扉に最も近い場所にある村。
ドラゴティップの村だった。
※ ※ ※
さらにしばらく歩いて、俺たちはようやくドラゴティップ村の門をくぐる。
「ほー」
「これは……」
「王都の大通りと同じか、それ以上に広い、わね」
村に入った俺たちをさっそく迎え入れたのは、道幅8車線の道路並みの広さの、中央通り。
「……ドラゴンロード!」
かつて白竜山脈の長である至竜と呼ばれるドラゴンが、この地に降り立ったときに取った幅を再現しているという村のメインストリート。
遠めに見てもわかるほどの広さだったが、実際に見てみると壮観だ。
左右の家並みが木と石造り中心なおかげで、マカロニウェスタンな雰囲気もある。
「っていうか、村っていう割にはかなりの人で賑わってるんだな」
「そうね。旅人、この場合は観光客かしら? その手の類の人が沢山いるみたい」
「ガイザンと違って、ひたすらに明るい印象を受けますね」
治安悪々商業都市と比べるのはどうかと思うが、ナナの言葉ももっともだ。
「こういうのが、正しい意味で活気があるってことなんだろうな」
おやっさんの冒険者の宿周り以外は、マジで天国と地獄がウロボロスってるからなガイザン。
それに対してこの村はどうかというと。
「さぁさぁドラゴンロードのど真ん中で、オイラの芸を見てってよ!」
「BGMは私、竪琴装備適性Bの、竪琴装備適性Bの! モニャックがお届けいたします!」
「安いよ安いよ! 今ならドラゴンまんじゅうが安いよ! 向かいのクソみてぇな店とは比較にならないよー!」
「うるせぇ甘ったるいだけのまんじゅう売りがよぉ! お客様お客様、うちのフライドイモスティックで塩っ気補充していけー!!」
「はいはーい、白竜山脈最高峰! アルバ山をバックにー……!」
「「あいっ、ポーズ!」」
「開かずの扉、ダメだったねぇ……」
「伊達に“竜が認めた者しか入れない”門じゃないね。ビクともしなかったし」
「ま、あと数日は観光して、連環都市同盟に戻ろうぜ」
「「さんせーい」」
往来で人が芸を見せ、客引きが仲良く喧嘩して、観光客や挑戦者でごった返す。
「あ~、平和だな~~」
パルパラを思い出す、いやそれ以上の明るい雰囲気に、気が抜けた俺は思わず大きく伸びをした。
「とりあえず、私は宿を探すことにするわ。シングルとダブルの2部屋でいいわよね?」
「いや、そこはツイン……」
「ダブルで」
いい笑顔のナナ。
「ツイン……」
「ダブルにて、よろしくお願いいたします。メリー様」
キリッとした顔のナナ。
「ダブルでいいわね、白布?」
「はい」
「了解、それじゃ行ってくるわ。待ち合わせはあの道のど真ん中にある水晶柱で」
まだ日は高いが、有言実行のメリーは俺たちの元を離れ、宿を探しに向かう。
「主様。わたくしたちはいかがいたしましょう?」
そして、いかにも今の私は忠実なしもべですという顔をしているナナ。
「「………」」
この従者、さっき見事に反抗したにもかかわらずニッコニコである。
「じゃ、情報を集めようか。とりあえずは、あそこ辺りから」
「はい! 主様!」
しっかりと自分の意志を持っている、頼れる従者と共に。
「……火を吐くドラゴン亭、ご当地感あるな」
俺はドラゴティップの、適当な酒場へと足を運ぶのだった。
※ ※ ※
「おう、いらっしゃい!」
「悪いね、カウンター席で頼むわ」
「了解。行こうか、ナナ」
「はい。主様」
ちょうど昼飯時だったからかテーブル席はいっぱいで、俺たちは案内されるまま、ドワーフの店長の立つカウンター席に向かう。
ナナを奥に座らせてから、俺は席に着く前に、隣の客へと声をかけた。
「ちょいと失礼するよ」
「ううん、大丈夫。ボクのことは気にしなくていいよ」
やや高い、愛らしさを持った声。
砂塵除けのフードマントを被っているその客は、どうやら同い年くらいの女の子のようだった。
(……って、ちょっと待て)
ボクっ娘、だと!?
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