第195話
「うん。何か、あったんだよね?」と目を細めて言った。心の中まで見られているような気になって、ごまかせないな、とため息をついた。
「永里」
「うん」
「なんで、なにかあったってわかった?」
「私が入院しているのに、三浦君からなにも連絡が来ないっておかしいから……」
そうだよな、と思う。三浦は永里が好きだから、南由の件に関わってきたのだ。永里が入院したのに、見舞いに来ない訳がない。
「そうだよなぁ」とため息のように、思った通りの言葉がこぼれる。
「ねえ、何があったの? 教えて」
「聞かない方がいいかもしれない」
「う……ん。でも、私のせいかもしれないし。それならやっぱりちゃんと知っておきたい」
「永里のせいって、なんで……」と、言いかけて思い出した。
あの日、三浦は永里に頼まれて来た、と言っていた。
「そういえば、なんであの日、俺が南由の部屋にいるって分かったんだ?」
「紘大君が病室を出て行く少し前から、本当は目が覚めていたんだ」
「起きていたのか? なんで言ってくれないんだよ」
「あは! 最初は寝ていたんだよ? 紘大君の声で目が覚めたの。もう永里を傷つけさせない!って、格好よく宣言していたから、目を開けるタイミングを逃しちゃって」
人の口から聞くと、自分に酔っているような台詞が恥ずかしくなって、両手で顔を覆った。
「南由に会うって言っていたから、南由の部屋に行くんだと思ったの」
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