第178話

 「紘くん、急に来てくれなくなっちゃって、寂しかった……」


 南由がぽつりとつぶやいた。


 永里と付き合うようになって、亡霊になった南由がどこか疎ましく感じられるようになっていた。生前の南由は大人しいが優しく明るい子だった。しかし亡霊になった南由を取り囲む空気は、暗く湿っぽくなってしまった。


 それに南由と会った後は、いつも体がだるかった。

 南由に会うのは癒しだったのに、いつしか、だんだんと苦痛になっていった。


 悪いとは思う。だけど、死んでしまった者よりも生きている人間が優先されてもいいよな? と自分を誤魔化した。そして一人で九枝不動産に行った時、部屋の解約を申し出た。今月末で契約が終わる。もう終わりにしようと思ったのだ。


 そして実際に南由を忘れられたと思っていた。永里と生きていこうと思った。それなのに……、こうして南由に会うと、懐かしいいとしさに胸が締めつけられてしまう。

 南由の頬を涙が伝う。


 「南由……」


 腕を広げて南由に歩み寄る。

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