第123話
フォークやスプーンがぶつかり合う音が響き、永里は金切り声をあげ、ダンゴムシのように体を丸めた。
引き出しの中身が、床に散らばっている。
白い磁器製のれんげ、コーヒースプーン、デザートフォーク、バターナイフ、カレースプーン、大きなフォーク、箸、ステーキナイフ……。床に散らばったモノたちが、カチカチと耳障りな音をかすかに立て続けている。
はじめはカサカサと震えるように床を叩いていたモノ達が、だんだんとまるで煽り立てているように、騒がしく音を立て始めた。いつ終わるともしれない不協和音に、永里の神経がもたなくなってしまった。
耳を両手でふさぎ、頭を左右に激しく振っている。
「嫌、嫌、嫌……」
「永里、こっちへ……」と手を伸ばすと、それが合図だったように、レンゲが浮かび上がり、あっと思う間もなく、永里に狙いを定めて飛んだ。手を伸ばして防ごうとしたが間に合わず、ガツッという音がして、永里の悲鳴、その後にすすり泣く声が響く。声をあげるのもおそろしいのか、小さく「ううー…」とうめいては、喉をヒクッと鳴らして息を吸い込む。
「痛いよ……」
「大丈夫か、永里?」と、這って永里のいる場所に移動する。永里は頭を押さえていた。
「頭にぶつかったのか?」
永里の手を掴み、そっと手の下を覗くと血が溢れて流れてきた。
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