第110話
「きこえなかった? なゆ、目を、あけなよ。い・い・も・の、みせてあげるから」
ゆっくりとい・い・も・の、と一言ずつ区切って言う。言うことを聞かなかったら、また……。少女の手で脳みそを握りつぶされるに違いない。あの痛みを思い出すだけで、吐き気がするほどだ。開けるしかない。
私は仕方なく細く目を開けた。定規のように細長い視界に、部屋中を焼き尽くしている火が割り込んできた。炎の中に、黒焦げの死体がひとつ。黒こげの腹部が、うねるように動めく。やがて焦げた腹部を破って、煤けた何かが這い出てきた。そして私の方にずり……、ずり……、とにじり寄ってきた。這うたびに、体から赤黒い液体が滴る。
ずり……ずり……ぴしゃ、ずり……ぐしゃ……ず、ずず……ぽた……
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