第67話 3
一体、何が起こっているのかな?
ひとりぼっちの部屋で、私は膝をぎゅうっと抱きかかえた。
なぜか部屋中に楽しそうな笑い声が響いている。
「きゃははは! なゆもおいでよ。一緒に遊ぼう? こっちも、こっちも! こんどはこっち。おにーちゃん、ねえ、抱っこして、とどかないの……」
くぐもった声が反響しているのが聞こえてくる。楽しそうな声はあの灰色の目の女の子が「おにーちゃん」と遊んでいるのかな? そういえば、あの子がお母さんに「おにーちゃんが欲しい」とねだっていたっけ。ということは、あの子が望んだとおり、「お兄ちゃん」が出来たということ? でもどうやって……?
「いてて、髪をひっぱらないでくれよ」
お兄ちゃんと呼ばれている男の人の声は、低くて聞き取りにくい。髪を引っ張られているみたいだ。痛い、と言っているわりには声が嬉しそう。
そこまで考えて、我に返る。声はどこから聞こえてきているんだろう? 部屋には私ひとりきりのはずなのに。もし隣の家で多少騒いだとしても、壁に耳でもつけない限り声が聞こえることはない。と、いうことは、家の中に誰かがいることになる。楽しそう、なんて思っている場合じゃない。
私はそろっと立ち上がった。怖い。けれど家の中に誰かがいるなら、確かめなきゃ。
「こっち、こっちよ!」
少女の声を頼りに進んで行く。足音をひそめて、そこにいる誰かに気が付かれないように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます