第54話
ティンロン、とスマートフォンの通知音が鳴って目が覚めた。
昨夜もよく眠れなかったな。
正確に言えば、一人で布団に入るのが怖くて、テーブルで突っ伏して時間を潰すうち、ほんの少しまどろんだばかりだった。
寝不足で痛む頭をゆるゆると振って、スマートフォンを見る。
「紘くんからだ!」
とたんにパッチリと目が覚めて、画面に食いついてしまう。そのげんきんさに自分で笑ってしまった。
「ええと。『永里と一緒にストーカー犯を探すことになったよ。でも三浦さんも一緒だから、安心して(笑)』」
三浦さんは永里の友達で、飲み会の幹事だった人だ。記憶を辿ると、明るくて永里になにかと絡んでいる姿が思い浮かんできた。二人が協力してくれるのは、不思議ではないし心強いことのはずだけれど……。
永里って、呼び捨てなの……? 胸がチリッと熱くなる。
「探偵ごっこみたい」と独り言がこぼれ落ちる。「楽しそう……」
なんだか、みじめだ。私だけ、一人で部屋にいるなんて。
ダメだダメだ、そんなこと考えちゃ。皆は私のためにストーカー犯を探してくれているんだから。部屋から出られないのは自分のせいなのに、皆に嫉妬するなんてお門違いもいいところだ。
……そう思うのに。
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