出演者??? - イレギュラー


「へぇ、じゃあそのハルネって奴が怪しいと?」


「あくまで勘だが……アイツはこの街の毒な気がするんだ」


「そんな物を抱えて蒼矢そうやは大変だな〜担当区域変えてやろうか?」


「いや、良い。妹がいる以上俺は札幌から動く気はないさ。弥生会の他のメンバーにも迷惑だしな」


 札幌から離れた麻生あさぶ駅にあるマンションの一部屋。

 そこで二人は話していた。

 一人は二日前に『リバース』の事件に大きく関与したさかい家の人間。

 そしてもう一人は────


「別に初期メンバーの蒼矢の頼みなら羽咲はずき以外なら聞くと思うけど?まぁ、変わりたくなったらいつでも言ってよ」


「悪いな。迷惑かけて。にしても何で急に札幌に?来るなら連絡の一つでもくれれば良かったってのに」


「連絡に関してはすっかり忘れてたね〜札幌に来た理由は蒼矢の親父さんが壊滅させちゃった『リバース』のリーダーを一目拝もうと思ってさ」


「……?それはまた何で」


「魔術って奴が見たかっただけさ。本当に魔術師だったんだろ?しかも不死身ときた。一度でもこの目に焼き付けて起きたかったが、捕まったのなら仕方ない。今回はライムって奴の事は諦めるとするよ」


 男は残念そうな顔を浮かべたのち、すぐに顔に笑顔を取り戻して話を続けた。


「その代わり────ハルネって奴に会ってみようかな」


「……マジか?」


「大マジさ!ソイツも何やら怪しげなんだろ?なら直接会って魔術って奴を披露してもらおうじゃないか」


「おいおい、確信があるわけじゃないぞ。話してた所を遠目から見ただけで……それに今のアイツは市長だ。警備も厳重だし────」


「俺がそんな奴らに負けると思うか?」


 男は蒼矢の言葉を最後まで聞く事なく、実に淡白な質問を投げつけた。

 蒼矢は一瞬にして吐き掛けた言葉を飲み込み、緊張感を持ちながらその返答をする。


「いや、思わない……けどわざわざ危険を犯す理由はないだろ」


「何、安心しろ。俺一人で乗り込む。さっきテレビで見たんだが今日の夜にはパーティーを開くそうだな?入場券なんて物は持ってないし、招待すらもされてないが少しお邪魔させてもらおうじゃないか」


「一人って……隊長の俺がいる前でそんなことを言い出したら俺が付いて行くしかないだろ」


「じゃあ蒼矢も行こうか」


「あのな……」


 蒼矢は頭を抱えながら目の前にいる男、現弥生会という犯罪組織のトップにして蒼矢にとっての最強男──── 籤骸くしがら 洞爺とうやに小さな溜め息を吐いた。

 部下に溜め息を吐かれと言うのに、洞爺はさして気にする事はなく、飄々とした調子で言葉を返した。


「まあまあ、無茶はしないさ。他のメンバーに心配もかけられないしな」


 洞爺は笑いながらソファーから立ち上がり、弥生会の象徴とも言える黒いロングコートを羽織った。

 洞爺の格好は頭から足までオールブラックとなっており、まるで夜に溶け込んでしまいそうな格好をしていた。

 髪型も目元に毛先が掛かる程度の髪型であり、簡単に言うならば『今風』と捉えられる。

 そんな男は確かに見える体表の一部、口元を歪ませながら楽しげに呟く。


「今夜も────俺の世界は楽しくなりそうだな」


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