第十八話 最強の陰陽師、内情を訊ねる
物品は位相に入れて運ぶことができるので、けっこうな荷物を持ち込めた。
全員で手分けして滞在の準備を整えた、その夜。
「さて、疲れているところ悪いが」
簡単な食事を終えたぼくらは、魔王城の円卓を共に囲んでいた。
灯りのヒトガタが室内をぼんやりと照らす中、ぼくは言う。
「できればぼくも、なるべく早く魔族の内情を知っておきたい。今日は軽くでかまわないから、いくつか君たちに教えてほしいことがある」
あまりもたもたしていると、また妙な連中に嗅ぎ回られかねない。
もう日が沈んでいるからあまり長話はできないが、問題の全体像だけでも把握しておきたかった。
やや緊張した様子の王たちがうなずくのを待って、ぼくは再び口を開く。
「この場で言いにくいことがあれば言わなくてもいい。後で個別に訊くことにする。では、順番に行こうか。まずはシギル王」
「あ……おれからか」
「君ら
「あー、だろうなぁ……」
「それを種族の意思であるとも言っていた。だが歴史上、
「それは……はぁ」
シギル王が頭を掻く。
「……一言で言うと、
「
「なあ。魔王様は
「……ああ。会ったことがある。前回の魔王と勇者誕生時に、
「会ったことがあるなら話が早い。それじゃあ、おれらと
シギル王の問いに、ぼくは少し考えて答える。
「それは……肌の色と……悪いが、君らの文化に詳しくなくて他に思いつかない」
「いや、それでいいんだよ」
シギル王は、苦笑を漏らしながら言う。
「それくらいなんだ、おれらの違いって。だから五百年以上前、おれらは一つの種族みたいなものだったんだ」
シギル王は続ける。
「同じように森に感謝し、同じように精霊と共に生きてきた。肌の色は違うし、暮らす集落も別々だったけど、同じ価値観を共有する同胞だと思っていたそうなんだ。何千年もの間な。ただ……人間が勢力を増すにつれ、それは変わっていった」
「……」
「
シギル王は淡々と話し続ける。
「だから五百年前、人間の領土へ侵攻しようとしていた魔王に、
「事情はなんとなくわかったが……それが今回の侵攻とどう関係するんだ?」
「おれらはさ、
シギル王は表情を変えないまま答える。
「今の
「そうだったのか……」
種族の歴史やら主義やらが絡んで、想像以上にややこしい事情だった。
「その……君自身は、どう思ってるんだ。やはり独立領を併合して、一つの種族に戻るべきだと考えてるのか?」
「……いや。アホくせーって思うよ」
シギル王が苦笑する。
「考えてもみてくれよ。おれが生まれる前から、
「それなら……」
「ただ、それを大事だと感じてるやつらの気持ちは、馬鹿にしたくないんだ」
シギル王は真剣な声音で言う。
「おれ、これでも王様だからさ。臣民の思いはないがしろにしたくないんだよな」
「……」
「おれは一つの種族に戻るべきとも思わないが、戻らないべきとも思わない。『こうであるべき』なんてものはないんだと思ってるよ。……あー、これで答えになってるか?」
「……ああ。なんとなくわかったよ」
「そうか、よかった。ま、実権のないおれが何偉そうに語ってんだって感じだけどな」
シギル王は、そう言っていくらか明るい笑みを浮かべた。
「ただ、軍部としては今の権勢を維持したいから、戦争で自分らの重要性を高めたいって思惑もたぶんあるんだよな。だから実は種族の問題だけで語れる話でもないんだ」
「や、ややこしそうだな。それはまた明日以降に聞かせてもらうよ……。それじゃあ次は、プルシェ王」
「む、余か」
どうやら眠たいらしかった。
「先にも言ったが、余は内政などよくわからぬぞ?」
「答えられる範囲でかまわない」
また重たい事情が来たらどうしようと身構えつつも、ぼくは訊ねる。
「代表のパラセルス殿は、侵攻に対して強い否定の立場を取っていた。それはなぜなんだ?」
「そのようなことは簡単じゃ。
プルシェ王の言葉に、ぼくはわずかに眉をひそめる。
「邪眼という異能を持ちながら、弱いとはどういうことだ? 邪眼の呪詛は専用の護符や印で対策しない限り、普通は防ぐことすら難しいはずだが」
「詳しいのう魔王よ。確かに我らは強い。狩猟や一対一での決闘ならば、他の種族にも決して引けを取らぬ。しかし……戦争は別じゃ」
首を傾げるぼくに、プルシェ王は続ける。
「自ずと集団戦となるであろう。そうなれば邪眼の優位は失われてしまう」
プルシェ王は自らの額に指を当て、その邪眼が収まる縦の瞼をわずかに開く。
「我らはこの第三の目で見つめ、敵の動きを止める。卓越した者ならば、鼓動をも止め死に至らしめたり、身体を石に変えてしまえるとも聞くの。しかし、集団戦となればそうもいかぬ。視線は周りに釣られ、どうしても一人の敵に集中することが難しくなる。我らの肉体は他の種族に比べ脆弱じゃ。数で勝る人間に対し、分が悪いと言わざるを得ないのう」
「……あー、なるほど」
なんとなく納得した。
そういえば前世で出会った狩人も、はぐれた鳥を狙うよりも群れの中の一羽を
「しかし、それならどうして五百年前は侵攻に参加していたんだ?」
「知らん。余はまだこの世に生まれ落ちていなかったからの」
「……」
「じゃが、想像はできる。おそらく単純に、人間側の侵攻が脅威だったのだろうの。我らは
プルシェ王の話を、ぼくは感心しながら聞いていた。
「なるほど、だいたいわかったよ。それにしても、内政なんてわからないと言いながらけっこう語れるんだな」
「この程度なら子供でも語れるわ。財政や産業や社会基盤について詳しく教えろと言われても余はわからぬぞ」
「じゃあ、どうしても知りたくなったらあの宰相殿にでも訊くとしよう。さて次は……ガウス王」
「オレの番か! よし、なんでも訊いてくれ!」
ガウス王が張り切ったように立ち上がる。
この城は巨人でも余裕で入れるほど天井が高いので、ガウス王が立っていても狭さは感じない。
「オレはバカだから、難しいことはわからねーけどな!」
「そんな堂々と言われても困るが……質問はこれまでと同じだ。代表のエンテ・グー殿が魔王軍への不参加を表明していたのはなぜだ? 話を聞いていた限りでは……前回の戦争がきっかけで、他種族に不信感を抱いていたようだったが」
「ああ……それか」
急に気力が萎えたように、ガウス王が再び席へと座る。
「単純な話だ。五百年前の戦争では、巨人族で死人が多く出た。それを他種族に嵌められて、激戦区になっていた前線に送り出されたせいだって言い張ってる連中がいるんだよ。他種族ってのはまあ、悪魔とか
「おい、聞き捨てならねーぞ」
シギル王が鋭い声を出すが、ガウス王は煩わしそうに手を振る。
「聞き捨てろ、こんなの。言ってる連中だって、どこまで信じてるかわかったもんじゃねぇ」
「……実際にあったことではなかったのか?」
ぼくが訊ねると、ガウス王が肩をすくめるような仕草をする。
「わからねー。なんせ五百年前だ。
ガウス王らしくない神妙な語りに、円卓には沈黙が降りていた。
ぼくはわずかに間を置いて訊ねる。
「それなら……どうしてそんな、自分たちの先祖を貶めるようなことを言う者がいるんだ?」
「……巨人の者は、争いを好まない」
ガウス王がぽつりと言った。
「いや、争いっつーか……人間や他種族との関わりを丸ごと、好ましくないものだと思ってるんだ。オレたちは体の大きさが違いすぎて、他種族とは食べる物も、使う道具も違う。だから、どうしても閉じた暮らしになるんだが……それをどう歪めて受け止めたのか、巨人は他種族と交わるべきじゃねーんだって考える奴が少なからずいる……そんなわけねーのにな」
「……」
「人間や他種族が発展する中で、オレたち巨人はずっと昔のままだ。他の種族と比べて人口だってそれほど増えてない。いくら力が強かろうと、変化についていけなければいずれ滅びる。親父にどれだけ言っても聞きやしねーがな。……だからオレは、これが最後のチャンスだと思ってるんだ」
ガウス王が静かに言う。
「かつて魔王軍として戦ったオレたちの父祖のように、人間相手に戦果を立てられれば……いや、他種族と肩を並べて戦う機会でも生まれさえすれば、この失った五百年を取り戻して、巨人族としての発展を始めるきっかけになるんじゃないかってな」
「……」
ぼくは、無言のままガウス王を見つめた。
この少年はぼくの考えていた以上に、王として自らの種族を思い、憂いていたようだった。
「……この男は馬鹿ですが、今言ったことは間違っていません。魔王様」
おもむろに口を開いたのは、ヴィル王だった。
「巨人族は閉鎖的で、何より種族としての価値観を極度に重んじます……僕ら、
「……君たちの代表であるドムヴォ殿は、侵攻には賛成の立場を取っていたな」
「ええ」
ヴィル王が険しい表情でうなずく。
「巨人とは対照的に、僕ら
「……」
「しかし昔に比べ、暴力によって生計を立てることが困難になり、それが求められる機会も減ってきています。侵攻は、富の獲得と種族としての在り方の維持、その両方を達成できる手段です。だから僕の母であるメレデヴァ王太后をはじめ、多くの者が支持しているのでしょう。……まったく、愚かしいとしか思えませんが」
「……。それは、どうして?」
「そんなものは場当たり的な対処に過ぎないからです」
ヴィル王は眼鏡を直しながら言う。
「僕ら魔族の人口が増えたためか、森の大型モンスターは昔に比べ減少しています。またかつては時折見られた魔族間での小競り合いも、今ではほとんどなくなりました。狩人としても傭兵としても稼げなくなり、若年層の職不足が深刻となっています。戦争で一時的に雇用を吸収できたとしても、その後は? 根本的な解決にならなければ、結局元に戻るだけです」
「……」
「
溜め込んでいた思いを吐き出すように、ヴィル王が言い切った。
重い空気の中、ぼくは短く言う。
「……わかった。ありがとう」
そしてわずかに間を空けて、次の王へと話を向ける。
「それでは次に……フィリ・ネア王」
「えー……フィリにも訊くの?」
フィリ・ネア王は、若干気後れしたように言った。
「フィリに獣人族のことなんて訊かれても、なんにも答えられないんだけど……」
「いや、獣人の事情は、ニクル・ノラ殿の話からなんとなくわかっている。少し確認したいだけだ。ええとまずは……猫人の経済状況が、どうも人間相手の商取引に大きく依存しているような口ぶりだったんだが、それは本当なんだろうか。一応人間と獣人は互いに敵対していて、正式な国交はないはずなんだが」
「それは、うん、ほんとうだよ」
フィリ・ネア王がこくりとうなずく。
「もちろん国とのやりとりはないけど、人間にはたくさん物を売っているし、たくさん買ってもいるよ。人間と直接取引しない猫人でも、扱う商品が最終的にそっちに流れていくことも多いから、人間相手に商売できなくなったら困る人が多いと思う。人間側だってそうなんじゃないかな」
「そう……だな」
帝国にも、魔族領産と銘打たれた物品は少なくない数が流通し、特に工芸品の類は貴族が珍品としてありがたがっていた。
もちろん正式に輸入された物ではなく、すべて民間での私貿易品だ。
何も妙な話じゃない。前世でもぼくが生まれるはるか以前に宋との国交は途絶えていたが、その後も商人たちの私貿易船は来航し続けていた。
「でも、依存しているのはフィリたちだけじゃないよ」
フィリ・ネア王が続ける。
「神魔の魔道具とか、
「確かに、そうとも言えそうだな。しかしそれにしても……君、全然答えられるじゃないか」
「フィリ、お金のことは詳しいよ。好きだから」
「それなら、こちらは難しいかもしれないんだが……」
ぼくはややためらいながらも、もう一つ問いかける。
「猫人以外の獣人は、商いとは縁遠いまったく別の暮らしをしているとも聞いたんだが、それは本当なのか?」
「……うん。ほんとうだよ」
フィリ・ネア王は少々ふて腐れたように、小さくうなずいた。
「牧畜とか農耕とか、傭兵をやってたりとか……種族によって違うよ。こんなに商人が多いのは、猫人だけ」
「それは……どうして?」
「フィリ、かわいいでしょ?」
唐突に、フィリ・ネア王がにこりと笑って言った。
ぼくは思わず目が点になる。
「は?」
「フィリたちは他の獣人たちと比べて少しだけ人間に好かれる見た目をしていて、愛想が良くて……そしてずる賢くて抜け目なかった。だから、商人に向いてたんだと思う」
「ああ、そういうことか……」
「他の獣人もそうだったらよかったのにね。それなら僻まれることもなかったし、フィリたち猫人が王様なんてやらずに済んだのに」
ぼくは無言でフィリ・ネア王を見た。
猫人の少女王は伏し目がちに続ける。
「王様になったってほとんどいいことないのに、お金があるから引き受けてただけなのに、文句ばっかり言われて……パパもほんとうに苦労してた。しかも魔王様が戻ってきたら、今度は戦争を始めろだなんて……ばかみたい」
「……ニクル・ノラ殿は侵攻に反対していたが、やはりそうでない獣人もいるのか?」
「うん……みんな、戦ってなにかを奪ったら、豊かになると思ってるみたい。猫人の中にだって、戦争に賛成してる人はいる」
「……」
「たしかに、武器とか売れば儲かりそうだもんね。魔族相手にはもちろん、人間相手にも。でも……」
フィリ・ネア王は、はっきりとした口調で言う。
「フィリ、それはちょっと違うと思う」
「……わかった。ありがとう」
ぼくはそう言うと、重い溜息と共に気力を振り絞り、最後に悪魔の王たる少年へと話を向けた。
「ではアトス王。いいだろうか」
悪魔の少年王が、曇った表情でうなずいた。
ぼくはできる限り明るい口調になるよう続ける。
「ええと、ただ君に訊きたいことはあまりないんだ。少々野心のありすぎる貴族が軍部を掌握し、代表の地位に収まっていることは知っているが……それ以外に悪魔族の抱える問題があれば、教えてほしい」
アトス王は、深刻な顔でわずかに沈思した後、銀の悪魔に耳打ちする。
「はい、はい……。『我が種族は発展を続けており、おおむね良好な社会を維持できています。もちろん細かな問題は多々ありますが、いずれも種族の存続に差し障るような重大なものではありません。最も懸念すべき点があるとすれば、それは、』」
そこで、銀の悪魔はためらったように言葉を一度止めた。
「……『我の存在でしょう』と、王は仰せでございます」
「……。それは、どういうことだ?」
「『ご覧の通りです』」
耳打ちされ、従者の悪魔が答える。
「『満足に言葉を話すことができず、演説ばかりか臣下への呼びかけもままなりません。エーデントラーダ卿のような貴族の増長を許しているのも、我が不甲斐ないためです。年齢のせいばかりではなく、』……。『我が、君主としての能力を欠いていることが原因でしょう』……と、王は仰せでございます」
ためらいがちに、銀の悪魔は言い切った。
アトス王自身は、じっとうつむいたまま。
魔王城の一室に、再び沈黙が満ちる。
「そんなこと言われたら、こっちも立つ瀬がねぇよ。アトス」
それを破ったのは、シギル王だった。
場を和ませるような、朗らかな調子で言う。
「だってここにいるおれら全員、誰も王としての実権なんて持ってないんだしさ」
王たちの間に、苦笑するような雰囲気が生まれた。
実際のところ皆、自らの立場を不甲斐なく思っているのかもしれない。
「……気になっていたんだが、どうして皆、そんなに若い年齢で王になったんだ?」
ぼくは王たちに問う。
「魔族は人間よりも寿命が長く、病にも強いのだと聞いていたんだが……」
「おれの場合は、単なる偶然だよ」
真っ先に、シギル王が答える。
「先王に男児がなかなか産まれずに、早世したんだ。実のところ、寿命まで生きる
「……ああ」
今生ではもちろん、前世でもよく聞いた話だった。
「確か、アトスやヴィル、プルシェも同じような感じだったよな?」
「僕の父は、特に早世というわけではありませんけどね」
ヴィル王が眼鏡を直しながら言う。
「跡継ぎに恵まれなかったわけでもなく、兄もいました。皆互いに争い、怪我などが元で全員死にましたが」
「余はそもそも実子ですらない。病に倒れ、子がいなかった王の下に、急遽養子として迎え入れられただけの他人じゃ。喫緊の事情で、わずかに血のつながりもあったとはいえ、このような女児を王位に据えるとは……なんとも陰謀のにおいがしてくるのう」
まるで他人事のように、プルシェ王は笑って言う。
「とはいえ……先王の毒殺疑惑すらある、悪魔ほどではないが」
「……はい。『先王である我が父は、暴君であり暗君でした。実際にはただの病死と結論づけられていますが、そのような疑惑も詮無いことと言えるでしょう』と、王は仰せでございます」
アトス王は再びうつむいてしまう。
ぼくは少し置いてから口を開く。
「……四人はわかったが、フィリ・ネア王とガウス王の場合はどうなんだ?」
「フィリの王位はね、パパが買ってくれたんだ」
フィリ・ネア王の答えに、ぼくはぽかんと口を開く。
「はい?」
「獣人の王位は、毎回競りに出されるんだよ。落札した人が次の王様」
「な……なんでそんな制度になってるんだ?」
「獣人にとって、王位なんてそんなものだから」
フィリ・ネア王が退屈なことのように答える。
「それぞれの種族で自治しているから、誰かに言うことを聞かせるとか、法律を作るみたいな権限は最初からないの。王政ってことにしているのも、他の魔族と対等に付き合うためでしかないもん。お金があって、地位がほしい、余裕とやる気のある人がやればいいよねってことで、こういう仕組みになってるの」
「ええ……」
思わず唖然としてしまったが、よく考えればそもそも獣人は単一の種族ではない。
征服しあったわけでもなく、ただ便宜上団結しているだけならば、君主に強力な権限が集中するはずもない。となると、王の価値もそんなものなのかもしれない。
そこで、フィリ・ネア王が目を伏せる。
「パパがフィリを王様にしてくれた理由は、よくわかんない」
「……」
「遺言で勝手に落札されちゃったから、なるしかなかったんだけど……フィリならできる、って思ってくれてたのかな。パパ、がんばって王様してたから……フィリになんて、務まるわけないのにね」
答えに窮していると、ガウス王が口を開く。
「オレの場合は、これが普通だ」
「普通……とは?」
「オレくらいの年齢で王になるのが当たり前ってことだ。若くても関係ない、政務は先王が取り仕切るからな。巨人の王族はこういう伝統なんだ」
「ああ……そういうことか」
「はるか昔、たまたま王や経験豊富な側近らが早死にしちまった時に、先王が政治の場に戻ってきたことが始まりだったそうだぜ」
経緯まで含めて、前世の日本で行われていた政治形態と変わりない。
ぼくが大陸から戻ってきて少し経った頃から、すでに退位した帝である上皇が治天の君となり、若い帝に代わって
「夜も更けた」
ふと口を開いたのは、プルシェ王だった。
「今夜のところは、そろそろ終いとしてくれないかのう魔王よ。余は眠い」
プルシェ王が大きく欠伸をする。
言われてみれば、ずいぶんと話し込んでしまっていた。
「……確かにその通りだな。みんな、今日は助かったよ。どうかゆっくり休んでくれ」
そう言って、ぼくは席を立つ。
そして踵を返すと、魔王城の一室を後にした。
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