短編集

久石あまね

第1話 最後の花見

 青い空。照りつけるポカポカとした春の陽射し。風がふんわりと吹いた。道路の両側に平行に生えた満開の桜の木々が揺れ、ピンク色の桜の花びらたちが吹雪のように舞い踊る。

 「絵麻、お花見楽しいねっ」

 「うんっ、楽しいぃ」

 「もっといっぱい食べていいよ」

 「ありがとう。お姉ちゃんは食べないの?」

 「うん。お腹いっぱい」

 やばい。堪えないと。うっ。咳が出る。

 

 ハンカチで口を塞ぎ咳をした。


 青いハンカチには赤い血が付いていた。

 

 わたしは思った。

  

 来年はもう花見は出来ないな。

 

 風が吹く。


 桜が散っていく。

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