ドーガ視点「よぅ。昼間は世話になったな」

 -ドーガパーティ-

 -ドーガ視点-



 いい加減、我慢の限界だった。

 なんでこの俺が我慢しなくちゃいけないだ。


 宿屋のベッドに座り、今までの事を振り返る。

 アンリの事、ミーシャの事。

 俺は今まで出来る限り我慢してきて。足を引っ張る役立たずの為に体を張って頑張って来た。 


 しばらく考えて、一つの結論に至った。俺が我慢する必要なんて、どこにもなかったんだ。

 アンリをボコボコにして金品を奪ったり、ミーシャを切り捨てた事をギルドに咎められはした。

 だが、次は無いぞと言いながらも、なんだかんだでギルドは俺を処罰しようとしない。 


 何故か?

 答えは簡単だ。俺が優秀だからだ。

 他の冒険者と違い、俺は優秀だ。冒険者ギルドの財産と言っても良い。

 だから許されているのだ。いや、俺が正しいと理解してくれていると言った方が良いか。


「だったら、やるしかねぇよな」


 それなのに我慢していたなんて。俺はどうやら優し過ぎたようだ。

 お人好しの度が過ぎたな。


「行くか」


 俺は剣を腰にかけ、宿を出た。



 ★ ★ ★



 夜の街を歩く。

 辺り一面真っ暗で、道は酒場から漏れる光だけが頼りだ。

 あてもなく歩いた。


「見つけた」


 俺は無意識的に口角が上がるのを感じる。俺の前からドランが歩いてくるのが見えたからだ。

 他の冒険者と飲み歩いていたのだろう。ふらふらした千鳥足で、他の冒険者と肩を並べて歩いてやがる。

 ヘタクソな歌を歌いながら、俺の横を抜けて行った。


 どうやら俺に気づいて居ないようだ。これは好機。

 暗闇の中、こっそり跡を付けていく。


「おっと、俺はちょっとションベンしてから帰るわ」


「そうか、じゃあまたな」


 そう言って冒険者と別れ、暗がりの路地裏へと入って行った。

 どうやら運は俺に向いてるようだ。


 鼻歌を歌いながらズボンを下げ、ションベンをしているドラン。

 足音を立てないようにそっと近づいた。 


「よぅ。昼間は世話になったな」


「あぁ?」


 間抜けな声を出しながら振り返るドラン。その背中目掛け剣を突き付けた。


「……えっ?」


 背中から刺した剣は、貫通し腹から生えたようになっている。

 酔っぱらいドランが、やっとそこで理解したようだ。


「お前っ」


「おせぇ!」


 ドランが腰に掛けた剣に手をかけようとする前に、俺がそれを引き抜き奪った。

 そして、その剣で今度は首を貫いた。


「かっ……フシュ……」


 ドランが必死に声を出そうとするが、貫かれた喉からシューシューと空気の出る音がするだけだ。 

 剣を引き抜くと、ドランはバタンと倒れ、力なく目だけ俺の方に向けた。


「ざまぁないな!」


 血だまりが広がり、段々と光の失っていくドランの目を見て俺は満足げに笑った。


「まだ生きてるみたいだし、もう少し楽しませてもらうぜ」


 動く体力はもう無いというのに、剣で突き刺すとビクンビクンと動き、時折何か蠢いているのが面白い。

 完全に動かなくなるまで、ドランを串刺しにして遊んでやった。


 俺に逆らうという事がどういう事か、これで分かっただろう。

 分かった所で、もう遅いんだがな。


 はぁ、最高の気分だ。思わず笑ってしまう。

 昼間は俺の事を馬鹿にして笑っていた奴が、俺に殺され笑われているんだ。

 あー愉快愉快。俺はドランの剣をその場に投げ捨て、自分の宿まで帰った。

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