第2話 新たな変化
翌日の朝、俺はベッドから身体を起こすと、またしてもなにも考えずに青い窓が現れた。
また新たな変化かと思いきや、言葉の意味も分からなかったのでスルーしていた『スキル』という欄に1つだけ追加されていた。
【平和主義者 Ⅰ】と。
確かに俺は平和主義だが、だからなんなんだ。スキルといい、新しく追加された物といい、全く訳が分からん。
今日、俺は仕事を休みこのステータスについて知るために病院へ行くことにしている。
何故病院なのかははっきりと言えないが、まだこれが魔道具であるという予想は拭えないが、もし魔道具なら手で持つことが出来る物体なんだ。
だがこれは俺の目で見ているものであり、更に俺の周りの友達や家族もこれを見ることが出来る。
ならば俺の身体になにか異常があるのでは無いかと予想した。
俺の行きつけの病院はメドウ先生という医師がいる。俺の家から徒歩数分で行ける距離にあり、カイの軽い怪我や、仕事中にやってしまった骨折とかでも快く手当してくれた先生で、俺はとても信頼している。
「やぁ、メドウ先生」
「おぉ、ゼクト君。今日は急だね。どうしたんだ?」
歳は60を超えており、前は他の国で大きな病院の院長をしていたが、定年ともう歳でやっていけないという理由でミューリアに小さな病院を個人で開くことにした移住民の一人だ。
王都ミューリアを建設した最初の頃に居たらしく、よく俺も遊び回って怪我をしたときに世話になっていた。
誰に対しても当たりが良く、子供に対する面倒見も良いので、仕事でどうしても遠出しなくてはいけない時は、アマリアの負担を減らす為にメドウ先生の所にカイを預けていたりもする。
仕事から帰ってきた俺がカイを迎えに行くときも、カイは楽しそうに迎えてくれるから、本当に良い先生だと思っている。
「あぁ、実はこれについてなんだか……」
昨日の夜色々試してみて分かったことが1つだけある。それは、念じるだけで窓を出現させることができるということだ。
仕事中に何度も勝手に出てきた所で気になって調べてみたことだ。
「おぉ、これはこれは。私は魔道具については医療系以外専門外なんだがなぁ……」
「自分で調べてもこれらしき魔道具を全然持ってないんだよ。目から直接見える感じでさ、もしかして俺の目が悪いんじゃないかと思うんだ」
「目、ねぇ。目薬とかいうものでも無いんだよね? 目は脳とも繋がっているから、もしそうなると脳の部類になるんだよなぁ。
ただ、人間の脳に直接的に影響する魔道具なんて聞いたことすら無い。うーむ。何か他に変わったことはあるかな?」
「うーん、昨日仕事中にこの身体能力の欄にある筋力がC+からC+1に変化したんだ。
これだけじゃ分からんか」
「すまない。私じゃあ役に立たない様だ」
「いや、ありがとう。今の所は、頭痛とか無いからこのまま様子を見るよ」
「分かった。もし何か異常を感じたら直ぐに言ってくれ。私がどうにか出来るか分からないが、できる限りのことはしよう」
俺が考えた中での一番の有力候補さえも、ステータスの原因は分からなかった。あとはもう自分で調べるしか無いか。
コイツは、念じることで開くことが出来るのは分かった。ならば念じることで何か他にも出来るのだろうか?
俺はとりあえず病院から家へ帰ると自室でステータスにある項目全てを片っ端から念じてみる。
名前、年齢、性別、職業……。
体力、筋力、魔力、敏捷、スキル……。
最後に【平和主義者 Ⅰ】。
「ん……? これが平和主義者か?」
最後に念じた【平和主義者 Ⅰ】だけ反応があった。青い窓の文字が変化する。
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[スキル]
【平和主義者 Ⅰ】:
1分間、何もせずに動かないでいると、体力2倍のバフ効果が1時間継続する。
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??? 体力が2倍? バフとは?
恐らくこのスキルとやらの詳細が書かれているようだが、俺にはさっぱり理解出来なかった。
ならばバフ効果と念じるが、それ以上の情報は出てこなかった。
ただ辛うじて理解出来るものと言えば、体力が2倍になることだ。
体力とは要はスタミナのことなんだろうが、これをこのままの意味で理解するなら、単純にスタミナが少しだけ上がるということになるのだろう。
確かに仕事が疲れにくくなることは嬉しいが……、なんというか鍛えれば済む話であってこれをわざわざ頼るものでも無いと思う。
さて、スキル以外をいくら念じても何も起こらなかったのは、何もそれについての情報が無いからだろう。
そしてまだ条件は分からないが、何かをすればスキルが増え、何かをすれば身体能力が上がるということか。
まぁ、身体能力については単純にトレーニングすればいいと思うが……色々試す価値はあるだろう。
今日は仕事を休もうとは思ったが、病院ではなにも分からなかったからそれほど時間は経過してないない。
仕事で手に入るお金は完全歩合制だから、空いた時間で働くことは損にはならない。
俺は自室から出ると、アマリアは今日の買い出しに、カイは外に遊びに行って居ないので、リビングに「仕事へ行ってくる」と書き置きしてから家を出る。
不思議なことは起こるが、俺の生活は何一つ変わらない。全く以て平和だ。
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