新婚さんのお正月

CHIAKI

第1話 馴れ初め

私たちは新婚さんです。


自分で言うのはちょっと恥ずかしいけど、新婚ほやほやのカップルです。


まあ、正直に言うと、元々こんな早く結婚するつもりはなかったが、こうなったのには理由がありました。



私たちの出会いは5年前の見本市だった。当時、私は洋菓子チェーン店のバイヤーとして、東京で行われる農産物の見本市に行った。会社の商品に使われる果物を日本各地の農場から仕入れることが仕事なので、普段はいろんな農場を訪れて、農家さんたちと交流することが多かった。


そこで北川きたがわ海里かいりと出会いました。


海里の実家は代々農場を経営していて、東京から車で1時間半ぐらいのところに農場があります。生産したのは果物がメインで、主に地元や近隣の県に売ることが多い。


彼は家の長男で、地元の農業大学を卒業後、農場で本格的に手伝うことになりました。専門知識を生かし、農産物の生産と改良に力を入れます。3歳年下の弟海斗かいとは経営学を学んでいたので、大学卒業後農場の商品の宣伝・発売・広報の仕事を担当することになります。


普段なら、見本市で顔を出すのは海斗の仕事だけど、あの東京での見本市は北川農場の初東京進出なので、海里は商品の良さをより良く紹介するために、同行することになりました。


北川農場のブースで海里と出会った時の第一印象は物静かな感じでした。彼は外で仕事しているせいで、日焼けで肌色が黒く、すごい厚そうな眼鏡をかけて、背が高く、そして無口な人に見えました。海斗は彼と対照的にすごく社交的で、明るい感じがしました。最初は海斗と話していたけど、のちに海里に紹介され、商品の話を進めました。


海里は自分が育てた農産物に対する情熱が半端ないです。どれだけ工夫をして品質管理と改善をしたか、彼からの話ではよく分かりました。それで、後日北川農場へ現場視察という目的で訪れることになりました。



妻・森山もりやま真由奈まゆなと出会ったのは弟・海斗のおかげでした。


東京のあの見本市に行けなかったら、真由奈と会えないかもしれません。うちのブースに訪れた真由奈に先に声をかけたのは海斗だけど、うちの商品に関してもっと詳しく知りたいと言うから、俺が真由奈と話をすることになりました。


第一印象として、真由奈は可愛い系というより、ボーイッシュで洗練された感じでした。真っ黒で少しウェーブがある短い髪、顔がすっぴんのように薄い化粧しか見えてない、そして全身黒のパンツスーツを着ていました。


彼女は洋菓子店のバイヤーとして、いろんな農場から果物などの食材を仕入れる仕事をしていました。だから、農産物について結構詳しい方でした。初めてこういう業界の人と接触したので、とても新鮮な体験でした。だから、私は珍しく初対面の人である真由奈を農場に誘いました。


無論、当時は仕事のための誘いでしたが、内心ではもう一度真由奈と会いたいというのも目的でした。一目ぼれとかじゃないかもしれないが、ただ彼女に興味が湧いてきたのは事実でした。


正直に言うと、真由奈に対する気持ちは今まで付き合ってきた人たち(二人しかいないけど)とは違うかもしれない。自分から相手のことをもっと知りたいし、彼女ともっと会いたいというのは一切なかった。それに、前の恋人たちと別れた原因は農場の仕事でした。普段は農作物の世話や研究することで結構忙しいのに、週末になると客が見学に来ることが多く、中々恋人と会えませんので、結果的に呆れてしまい去っていきました。


今振り返ってみれば、真由奈に対する気持ちの方が強かったので、多分それが自分から積極的に彼女にアプローチした理由でした。


だけど、真由奈に興味を持っていても、内心では俺たちは多分うまく行かないだろうと思いました。だって、真由奈は東京で仕事していて、全国の農場を回ることも多かった。俺の場合は農場から長期間離れないので、一緒に東京にいられないのも現状でした。


それでも、運命の糸は俺たちを結び付けました。

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