316_冬に自転車を漕ぐと前に進まないぞ #道具 #環境

「フランスの貧乏貴族で生まれたモラリストのリュック・ド・クラピエ・ド・ヴォーヴナルグは『老人の忠告は光を与えるが温めない、冬の太陽のように』と申しました。年寄りの忠告はありがたいですが、意味があるものは少ないです」


「やっほー、人生よくなってる読者様。使える知識をお届けする世界一の美女サクラです! 今回は『冬に自転車を漕ぐと前に進まないぞ』のお話をしますよ」


「では、よろしくお願いします」


「読者様は冬に自転車に乗りますか?」


「え? 『通勤・通学で毎日乗っている』ですか。そういう人もいるでしょう」


「そんな冬の自転車に乗っている時ですが、『なんか、進みが遅いなぁ』と思ったことはありませんか?」


「ある、と思った読者様、それ、気のせいじゃないですよ」


「実は、冬の自転車は進みが遅いのです。冬は着込むから、体が思うように動かせない、という話ではないですよ。ちゃんと科学的根拠に則っています」


「今回は、どうして冬の自転車が進みが遅くなるのか、3つのポイントからお話ししたいと思います」


「冬に自転車に乗る読者様は気にかけてくださいね」


「まず、一つ目のポイントは人間です」


「冬の気温が肉体に影響を与えて、最大のパフォーマンスが出ないのではないか、という考えです」


「読者様も、冬の寒さで筋肉が縮む、という話を聞いたことがあると思います」


「ですが、あまり関係ないみたいです」


「確かに、気温が低いと肺に入った酸素の吸収効率が悪いです。しかし、体が外の寒さに慣れれば、問題はなくなります」


「自転車に乗っている時間が極々短いのなら、影響があるかもしれませんが、長い時間乗っている場合には関係がなくなります」


「外出して、自転車に乗り出した直後は進みが遅いように感じるかもしれませんね」


「続いてのポイントは、タイヤです」


「実は、タイヤは、というよりゴムは温度によって柔軟性が変わるのです」


「ゴムの柔軟性が高いほど、道路との転がり抵抗が少なくなります。逆にゴムが固いと摩擦が強くなり、進みが遅くなります」


「素材やら製造法法を抜いて、ゴムの柔軟性を決めるのが温度です」


「温度が高いほど、ゴムの柔軟性が高くなるのです」


「地面というのはフラットに見えても、細かく見るとデコボコです。そのため、タイヤは地面の形に合わせて変形します」


「固いゴムだと地面の形に合わせるのに大きなエネルギーが必要になります。柔らかければ、変形のエネルギーも少なくて済みます」


「読者様も、固い煎餅と柔らかい煎餅、どちらが顎が疲れないか一目瞭然でしょう」


「また、読者様はF-1を見たことがありますか?」


「その際に、レース前にタイヤを暖めているシーンを見たことがありませんか?」


「少しでも、早くするために必要な準備なんですよ」


「と、ここまでゴムの話をしましたが、気温でどれくらい抵抗が変わるのかが問題です」


「とある実験によりますと、気温が8℃上昇すると地面との転がり抵抗が5%減少したそうです」


「自転車において、地面との転がり抵抗は全体の10%くらいだそうです。多くても20%となります」


「このことから考えると、気温によるゴムの柔軟性が与える影響は、全体の1%にも満たないそうです」


「つまり、ゴムは気にしなくていい、ということです。ゴムの柔軟性で冬の自転車が遅くなることはありません」


「ちなみに、天然のタイヤより、合成タイヤのほうが低温でも柔軟性を保ってくれます。もし、わずかな差が気になるのなら、ゴム選びも大切です」


「まあ、ロードレースに参加する選手でもなければ、気にしなくて大丈夫です」


「とまあ、2つのポイントをお話しましたが、どちらの冬の自転車の進みに影響を与えるものではありませんでした」


「ですが、安心してください。最後のポイントは、きちんと冬の自転車の進み具合を遅くするお話です」


「その最後のポイントとは、空気抵抗です」


「え? 『夏でも冬でも、前から受ける空気抵抗は同じだろ』ですか。いいえ、それが違うのです」


「冬のほうが天気が悪くて、風が強い、なんて結論ではないですよ」


「まず、空気抵抗というのは、計算で求められます。高校物理を履修している読者様ならお茶の子さいさいでしょう」


「具体的には『FD = 1/2p × CD × A × VA2』で求めることができます」


「数式でわからない人のために言葉で説明しますと、空気抵抗=空気密度の2分の1×抗力係数×前面投影面積×速度、となります」


「まあ、この説明でもわからない人に説明すると、気温が変わると空気抵抗も変わる、それだけのことです」


「そして気温だけを変えて、同じ人、同じ自転車、同じ速度で自転車に乗ったと仮定して、公式に当てはめます」


「途中式をぶっ飛ばして答えを求めると、夏に比べて冬は、空気抵抗が5%増加することがわかります」


「『それだけ?』と思った読者様もいるでしょう。しかし、この5%がものすごいのです」


「一般的なサイクリストが受ける抵抗のうち、空気抵抗は70%~90%に及びます。その全てに5%が上乗せされると考えると、相当だと思いませんか?」


「体感的には、時速が1km~2kmの違いになります」


「これが、冬に自転車の進みが遅くなる正体だったのです!」


「冬は空気抵抗が多くなるから、自転車の進みが遅くなるのです。一つ、賢くなりましたね」


「読者様も体重の5%の重りを着けて生活するのを想像してください。しんどいと思いませんか?」


「体重が50kgの人でも、2kg以上の重りになります。そりゃ、進まなくても仕方ないですよ」


「重りを着けて生活なんてしたくないよ、って思わされた所で今回のまとめです」


「どうして冬になると自転車の進みが遅くなるのか解説してくれたよ」


「その理由は、気温が問題だよ」


「気温が低くなると空気密度が高くなって、空気抵抗が増えるよ。それが、冬に自転車を進ませない原因だよ」


「人の体とか、ゴムの性質とかは無視できるような誤差だったよ」


「読者様も冬に自転車を漕ぐ際は、空気抵抗が強くなるこを覚えてね」


「まあ、覚えた所で相手は自然なので、対策は難しいです。空気抵抗を減らす自転車やウェアを使うくらいしかありません」


「一番の対策は、自転車に乗らないことです。車や電車を使いましょう。……元も子もない、というツッコミはなしでお願いします」


「ちなみに、私はそもそも自転車に乗りません。夏も冬も自転車に乗らないので、冬に自転車が遅くなるのは関係ないんですよね。てへっ」


「ということで、今回は『冬に自転車を漕ぐと前に進まないぞ』のお話でした。読者様の人生の潤いになれば嬉しいです」


「最後まで、ありがとうございます。高評価や応援コメント、お願いします」


「読者様が『こんなことが知りたい』というリクエストも受け付けてます!」


「次回の『若ハゲになる人の特徴が判明しました』で、お会いしましょう!」


「もしくは、読者様が気になるお話でもいいですよ。目指せ、知識の宝物殿。バイバイ」



参考文献

Why do we ride slower in the cold?

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