194_方向音痴は育った街に影響される #スキル #環境

「アメリカの教育改革者であり奴隷制度廃止論者であったホレース・マンは『徳は天使であるが、盲目なので、その目的に導く道を示す知識をえなければならない』と語っています。いいことをしても、目に見えるとは限りません」


「やっほー、人生よくなってる読者様。使える知識をお届けする世界一の美女サクラです! 今回は『方向音痴は育った街に影響される』のお話をしますよ」


「では、よろしくお願いします」


「読者様は目的地に迷わず到着できますか?」


「いわゆる方向音痴でしょうか?」


「え? 『一度も迷ったことがない』ですか。それは、とても素晴らしいです。驚異的な空間把握能力の持ち主ですね」


「迷わない方がいる一方で、目的地に全然到着できず、同じ場所を何度もぐるぐる回っちゃう方向音痴もいます」


「では、問題です。読者様は方向音痴の方と方向感覚に優れている人の違いは何だと思いますか?」


「ということで、道案内スキルについてフランス国立科学研究センターとユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームが調べてくれました」


「今回のお話を聞けば、方向音痴になる理由が知れます。是非、ご活用ください」


「それでは、本題です。研究者が利用したのはパズルアドベンチャーゲームです」


「このゲームは、最初にスタート地点といくつかのチェックポイントの記された地図が渡されます。プレイヤーは地図を見ながらキャラクターを操作して、順番にチェックポイントを巡る、というゲームになっています」


「要は、地図と実際の空間をきちんと把握できているか調べたのです」


「元々は認知症の患者がどのように道を歩くのか調べるために開発されたものだそうです」


「開発の意図はともかく、研究者は世界38ヶ国から39万7162のプレイデータとプレイヤーのデータを収集して、方向音痴を決める要因を調べました」


「さて、読者様にもう一度質問です。どのような人が方向音痴になるのでしょうか?」


「シンプルに頭が悪い人でしょうか? それとも道を覚えられない記憶力が悪い人でしょうか? はてさて、年齢が関係しているのでしょうか? もしくはい生まれた時から決まっているのでしょうか?」


「正解はですね…………環境でした!」


「実は、育った地域によって方向音痴になることが分かったのです」


「研究者は都市ごとに、その地域が地理的に複雑かどうか計算して、プレイヤーの育った環境と方向音痴の関係性を明らかにしました」


「地理的な複雑さを研究者はストリートネットワークエントロピー(SNE)と呼称しました」


「たとえば、アメリカのシカゴは道路が碁盤の目のように綺麗に並んでいます。ほとんどの道路は直線です。なので、地理的な複雑さはありません。SNEは低い都市になります」


「日本で言えば、京都のような碁盤の目をした都市でしょう」


「逆にチェコのプラハは道路が曲がっていたり、交差点が直角でなかったりします。そのため地理的には複雑な都市となります。SNEは高い都市になります」


「日本なら、東京です。東京の複雑さは世界屈指です」


「そして、ゲームの結果と育った環境を調べた結果、SNEが低い都市で育った人はSNEが低い都市で好成績を残しました。一方でSNEが高い都市での成績は奮いませんでした」


「では、SNEの高い都市で育った人が迷わなかったのかと言いますと、そんなことはありませんでした」


「SNEが高い都市で育った人は、SNEが高い都市では好成績を残しました。ですが、SNEが低い都市では成績は芳しくありませんでした」


「これって面白い結果ですよね。大は小を兼ねると言いますが、複雑な都市で育ったからと言って、シンプルな都市で通用することはなかったのです」


「つまり、方向音痴というのは、自分の育った環境と似たような都市では起こらず、自分の育った環境と違った都市で起こるのです!」


「どうですか? 面白くありません?」


「誰でも、方向音痴になる可能性はあるのです!」


「もし読者様の中に道に迷った経験がないのでしたら、それは自分の育った環境と似たような場所にしか行ったことがないからかもしれません」


「京都で育った人が東京へ、東京で育った人が京都へ行くと、もしかしたら道に迷うかもしれませんよ」


「またですね、都市以外の場所で育った人の方向感覚が優れていることも判明しました」


「年齢、性別、教育レベルを調整しても変わらなかったそうです」


「目的地に向かおうとすると、曲がる回数を少なくしたり、大きい道を選ぶことが多いです。これは道順を分かりやすくするためでもあります」


「ですが、SNEが高い都市では、思うようにいきません。カーブしている道や斜め方向に曲がる交差点などがあります」


「目的地の正確な場所や位置、方向を正しく認識していないと目的地に到着できません」


「ですので、研究者は『目的地を毎回把握するために、日常的に認知スキルを使うことになる。そうして、方向感覚が身に付く』と述べています」


「つまり、方向音痴は直せるということです」


「道を意識して歩いたり、いろんな都市を歩いたりすると方向感覚は身に付きます。方向感覚は後から身に付けることが可能なんです」


「読者様もご自身が方向音痴だと自覚があるなら、行ったことのない都市を歩いてみてはいかがでしょうか? 方向音痴が治るかもしれませんよ」


「ちなみに日本のアンケート調査によりますと、方向音痴の自覚がある日本人は4割にも登るそうです」


「とはいえ、最近はスマホがありますので、そうそうに道に迷うことはありません。使えるテクノロジーは使っていきましょう」


「自分にできないことを他の人に任せたり、機械に頼るのは恥ではありません。自分にしかできないことをする方がもっと大切です」


「何でもかんでも自分でする必要はない、と申した所で今回のまとめです」


「研究者がゲームを利用して方向音痴が起こる理由を探ったよ」


「すると、方向音痴は地理が関係していたよ」


「複雑な都市で育った人は複雑な都市で迷わなかったよ」


「複雑じゃない都市で育った人は複雑じゃない都市で迷わなかったよ」


「要するに、自分が育った環境と似ている環境では迷わないんだよ」


「自分の育った環境と似ていない場所だったら、誰でも迷う可能性があるんだよ。気を付けてね」


「まあ、スマホがあれば迷った所で何とかなります。方向音痴を治すより、スマホの使い方をマスターする方が楽そうです」


「ただ、スマホのバッテリーがなくなったら、どうしようもありません。ですので、最低限の方向感覚だけは身に付けてもいいと思いますよ」


「テクノロジーに慣れすぎると『いざ』という時に苦労しまっせ。……特に日本は災害が多いですから」


「ということで、今回は『方向音痴は育った街に影響される』のお話でした。読者様の人生の潤いになれば嬉しいです」


「最後まで、ありがとうございます。高評価や応援コメント、読者様が知りたい情報のリクエストも待ってまーす!」


「次回の『男性より女性のほうが失敗を才能のせいにする』で、お会いしましょう!」


「もしくは、読者様が気になるお話でもいいですよ。目指せ、知識の宝物殿。バイバイ」



参考文献

Entropy of city street networks linked to future spatial navigation ability

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