147_都会で植物を育てると成長が早いが寿命も早い #自然 #環境
「アメリカの作家ヘンリー・デイヴィッド・ソローの言葉を紹介しましょう。『自分の知識をひけらかしてばかりいたら、成長にとって必要な自らの無知を自覚することなど、どうしてできるだろうか』。む、胸が痛い」
「やっほー、賢明なる読者様。読むと人生が変わる知識を提供する世界一の美女サクラです! 今回は『都会で植物を育てると成長が早いが寿命も早い』のお話をしたいと思います」
「では、よろしくお願いします」
「読者様は緑を育てていますか?」
「昨今は二酸化炭素の排出量を減らそうとして、様々な施策が行われています。その中に緑化計画、つまり緑を増やすことも含まれていますね」
「え? 『庭に木を植えている』ですか。なるほど、いいことだと思います」
「ですが、それは本当に地球環境に優しいのでしょうか?」
「そもそもですね、木というのは成長する際に二酸化炭素を多く排出します。排出する二酸化炭素の量が吸収する二酸化炭素の量を上回るには26年~33年ほどかかります。とても長い年月がかかるのです」
「いくら苗木を植えても、長い目で見なければ地球環境には優しくないのです。知ってましたか?」
「地球環境のためにいいことをしても、すぐに効果を発揮するわけではないのが緑化なんです」
「読者様も緑化する際は気にかけてくださいね」
「そして、ここからが本題でして、樹木というのは植える場所によって成長速度と寿命が違うことが研究で明らかになったのです!」
「知ってましたか? 植える場所で成長に違いが出ることを」
「今回の研究はボストン大学のものです」
「研究者はボストン市の街路樹と田舎の森林の樹木の大きさや成長具合を調べました」
「ちなみに、ボストン市にある街路樹はボランティアの力を借りて、38765本が調査されました。直径については0.1cm単位で計測されたそうです」
「田舎の森林は25年間にわたって集められたデータを利用しています」
「さて、読者様に問題です。都会の荒波に揉まれて育った樹木と田舎でのびのびと育った樹木のどちらが成長が早かったでしょうか?」
「空気が汚れている都会では、うまく育たないのでしょうか? それとも、田舎の長閑な雰囲気が樹木の成長には欠かせないのでしょうか?」
「結果は、都会の樹木のほうが成長スピードが早かったのです」
「その早さは、実に5倍です!」
「都会と田舎で同じ大きさの樹木を調べた所、成長にかかった年月が5倍も違ったのです!」
「もう一度言います、5倍です!」
「すごい成長スピードですね。人では考えられないスピードです」
「もし、人の成長スピードに5倍も開きがあるなら、子供の成長の差は覆せないでしょう」
「大人と子供くらいの差があってもおかしくありません。成長スピードが遅い植物ならではの違いです」
「どれくらいの差かと言いますと、都会と田舎でそれぞれ35年間育つと、炭素の貯蔵量には一桁の差が開くそうです。つまり、10倍ですね」
「樹木というのは大きいほうが、二酸化炭素の吸収量も大きくなります。地球のために働いてくれて、ありがとう」
「え? 『成長が早いのはいいこと』ですか。そうですね。子供の成長を楽しめる時間が減りますが、基本的に早く成長してくれるのはいいことだと思います」
「ですが、成長が早いということは、老いるのも早いということです」
「都会で育った樹木は田舎で育ったものに比べて、2倍も死亡リスクが高かったのです!」
「うーん、恐ろしいです。やはり、都会の荒波は樹木にもストレスの多い環境なのでしょうかね」
「研究者はですね、この結果を受けて、都会に街路樹を植えるメリットが活かされていない、と述べています。今後は都会の樹木を死なせない施策が必要とも述べています」
「ニューヨーク市の街路樹の26%は植えられてから、9年以内に枯死するそうです。何十年も成長を続ける樹木からすると、かなり早い寿命と言えます」
「これでは二酸化炭素の量を減らすのは無理ですね」
「他にも、コンシン州ミルウォーキーとコロラド州デンバーでは、5年間で28000本の樹木が失われたそうです」
「樹木というのは、案外簡単に失われるようです。気を付けないといけないですね」
「どうして、都会の樹木の成長が早いかと言いますと、樹木同士が密集していないので多くの太陽光を浴びれます。街路樹はある程度の間隔を空けて植えられます」
「太陽光を独占できますので成長も早いのです」
「間隔が広いと、他の樹木と根っ子が絡まりません。どんどん横に広げることが可能なのも、成長を促進させる要素です」
「さらに、二酸化炭素の量も影響します。樹木が成長するには二酸化炭素も必要です。田舎より都会のほうが二酸化炭素が多いのは想像に難くないです」
「都会では窒素の量も多いです。植物の成長に欠かせない肥料といえば、窒素、リン酸、カリウムです」
「都会には窒素の量も多いです。肥料が多いので、成長も早いです」
「もう一つ要因はありまして、最後は温度です。都会はヒートアイランド現象によって、田舎より気温が高いです」
「より光合成が促されるので、成長を助けます」
「つまり、太陽光、スペース、二酸化炭素、窒素、気温などの様々な要素によって、都会の樹木の成長が早まるのです」
「都会の樹木の成長が早まる理由をさらっと説明した所で、今回のまとめです」
「都会の樹木と田舎の樹木の成長具合を調べたら、都会の樹木が田舎の樹木と比べて5倍も早いことが判明した」
「大きいと二酸化炭素の吸収量も増えるから嬉しい……とはならなかった。都会の樹木は死亡リスクが田舎の樹木と比べて、2倍になっていた」
「成長が早いことが必ずしもメリットになるとは限らない」
「読者様も樹木を育てる場合は都会か田舎で気を付けてください」
「とはいえ、今回調べたのは都会の街路樹と田舎の植林地の樹木です。ガーデニングの場合は違った結果になるかもしれません」
「まあ、条件は大体似通ると思います。なので、今回の研究は十分参考になるかと思います」
「ただし、樹木の成長は10年、20年かかります。長い場合はもっとかかります」
「人の時間感覚からすると、植物の5倍の成長スピードは誤差かもしれませんね」
「ということで、今回は『都会で植物を育てると成長が早いが寿命も早い』のお話でした。読者様の知識になれば幸いです」
「お付き合いいただきまして、ありがとうございます。高評価や応援コメント、質問やリクエストも待ってまーす!」
「次回の『筋骨隆々の剣闘士は空想の産物、本当の姿はお腹がブヨブヨだった』で、お会いしましょう」
「もしくは、読者様の気になるお話でお待ちしております。バイバイ」
参考文献
Live fast, die young: Accelerated growth, mortality, and turnover in street trees
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