072_同じビデオ見たり同じオーディオブックを聞くと心拍数が同期する【思考のシンクロ】 #肉体 #思考

「ふむ、『私は知識を得たいと望んでいたが、知識は人と談話する場合でも、舌の力よりはむしろ耳の力によって得られると考えた。くだらない仲間に好かれるようになるにすぎない無駄口や地口や冗談などに浸る習慣を直したいと願った。』と言ったのは……ベンジャミン・フランクリンでしたか」


「やっほー、賢明なる読者様。読むと人生が変わる知識を提供する世界一の美女サクラです! 今回は『同じビデオ見たり同じオーディオブックを聞くと心拍数が同期する』のお話をしたいと思います」


「では、よろしくお願いします」


「読者様は相手の考えを知りたいと思ったことはありませんか?」


「目の前の相手の考えがわかれば、こんなことにはならなかった、と後悔した経験はありませんか」


「私はあります。人と人は違う生き物です。完全に分かり合うことができないと理解していても、相手のことを知りたい欲求を殺すことはできません」


「今回のお話は、パリ脳研究所らが行った実験です。被験者の心拍数のリズムを同期させる方法を発見したのです」


「それがどうした? という話ですが、心拍数が同じということは、脳の状態が同じと言えます。つまり、似たような思考回路になるのです」


「脳の状態がシンクロしているなら、擬似的に相手の考えていることがわかる、ということです」


「どうですか? 面白くないですか。夢のある研究だと思いませんか?」


「少なくとも私はワクワクしています。飛躍している感じがありますが、私は気にしません」


「気になる方は是非続きをどうぞ。気にならない方はさようならです」


「今回の先にも申した通り、パリ脳研究所らの実験です。研究者は4つの実験を行いました」


「まず研究者は、27人の健康な被験者を集めて、ジュール・ベルヌの『海底二万里』のオーディオブックを16分間聞いてもらいました」


「オーディオブックは物語が楽しい部分を抽出しています」


「その結果、被験者の内、17人の心拍数が似ていました。被験者はそれぞれ一人でオーディオブックを聞いていましたが、同じシーンでは同じように心拍数が増減していたのです」


「研究者は考えました、『物語だから心拍数が似たのではないか?』」


「楽しいシーンでは楽しくなるのは当たり前。悲しいシーンでは悲しくなるのは当たり前。当然、心拍数も似通ってくるのではないか?」


「なので研究者は次の実験では退屈な教育ビデオを視聴させて、心拍数が同じになるか調べました」


「被験者の数は27人。ビデオの種類は生物学、物理学、コンピューターサイエンスから選ばれました。一本のビデオの時間は3分~5分です。それらのビデオを5本視聴してもらいました」


「被験者は一度目は特に指示を受けていない状態でビデオを視聴しました。その後、特定の数字から800~1000の数字から7ずつ引きながらビデオを視聴するように指示されました」


「先の視聴は通常状態、いわゆる真剣に視聴しています。後の視聴は別のことをさせて、注意力を奪うためです」


「真剣に視聴した場合と気もそぞろな状態で視聴した場合に違いがあるかを調べたのです」


「読者様も頭の中で7ずつ数字を引きながら、動画を見てください。全然内容が入ってきませんよ」


「その結果ですね、普通の状態で視聴した場合は心拍数の相関関係が確認されました」


「つまらない教育ビデオでも心拍数は同期するのです。物語でなくても、同じものを見ると似通ることが判明しました」


「では、注意力を奪った視聴はどうなったかと言いますと、全然心拍数の動機は見受けられませんでした」


「このことから、心拍数の同期には互いに真剣に視聴する必要があることが判明しました」


「つまり、自分は映画を真剣に観ても、相手が他のことを考えながら観ていたらダメなのです。相手と同じになりたければ、自分も相手も真剣にならないといけません」


「デート中にイチャイチャしながら映画を観ていたら心拍数は同期しません。彼氏彼女と同じ考えに至りたい場合は、お互いに真剣に鑑賞しましょう」


「三つ目の実験では、21人の被験者にオーディオブックを聞いてもらい、その後に内容についてのテストをしてもらいました」


「ただし、普通の状態でオーディオブックを聞くグループと、注意力を逸らされながらオーディオブックを聞くグループに別けられました」


「さらに被験者の呼吸も測定しました。呼吸は心拍数に影響を与えます。呼吸によって心拍数が似通った可能性を考えたのです」


「オーディオブックのテストの結果ですが、真剣に聞いていた被験者は内容をよく覚えていました。注意力を逸らされたグループは成績が芳しくありませんでした」


「この結果に異論はありません。注意力がない時に内容を覚えるのは無理です」


「続いて、呼吸と心拍数の関係ですが、真剣な状態、注意を逸らされた状態、どちらでも一定の同期が確認されました。ですが、呼吸が心拍数に与える証拠にはなりませんでした」


「すべてが上手くいかないのも仕方ありません。予想通りの結果や、十分な証拠を得られないのよくあることです」


「そして、研究者は四つ目の実験を行います。意識障害の患者19人と健康な被験者24人の対照群にオーディオブックを聞かせました」


「意識障害の患者とは、意識不明の患者で、いわゆる植物状態のことです」


「つまり、研究者は意識がなくても心拍数が似るのか調べたのです」


「眠っていても聴覚は死んでいません。音声を聞くのに問題はありません」


「その結果、健康な人と比べて、心拍数の同期は確認されませんでした。うーん、残念です。やはり意識がないと、音声を上手く処理できないのでしょう」


「ですが、これで終わりじゃないのです」


「なんとですね、意識不明でも2名の患者は心拍数の同期が確認されました」


「素晴らしいです。しかも、その内の一人は半年後に意識が回復したのです」


「いやー、驚きですね。逆に言えば、オーディオブックを聞かせて、健康な人と同じ反応をするということは、意識の回復が近いということです」


「今回の研究の肝は、心拍数を計ると意識レベルを測定できるかもしれない、というものです。私が最初に主張していたものは違います」


「ですが、同じ音声、同じビデオを見ると心拍数が同じになることは確かです」


「同じ状態なら、思考が同じになってもおかしくないと思いませんか?」


「え? 『飛躍しすぎ』ですか。確かにそうかもしれません。でも、ロマンじゃないですか」


「相手の思考をトレースできたら面白そうじゃないですか。もっと夢を見ましょうよ」


「だから私は、心拍数が似ることで相手の気持ちが理解できる、というロマンを取ります」


「それでは今回のまとめです。被験者にオーディオブックを聞いてもらったら、心拍数が似通うことが判明したぜ」


「重要なのはオーディオブックの内容じゃなくて、いかに集中して聞いているかだぞ」


「今回の知識をどのように使うかは読者様の自由でございます」


「私なりの拡大解釈が入っているのは否めません」


「ですので、読者様はご自身で考えて結論を出してくださいね」


「ということで、今回は『同じビデオ見たり同じオーディオブックを聞くと心拍数が同期する』のお話でした。読者様の知識になれば幸いです」


「最後までお付き合いいただきまして、本当にありがとうございます。高評価や応援コメント、質問やリクエストも待ってまーす!」


「それでは、次回の『明晰夢を見るための最適なトレーニング』で、またお会いしましょう」


「もしくは、読者様の気になるお話でお待ちしております。バイバイ」



参考文献

Conscious processing of narrative stimuli synchronizes heart rate between individuals

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