強行突破②
………忽然と目の前に現れたアイテムを呆然と眺める九恩。
十個の銃とメガネ、それから小型の端末のようなもの。
《それは裏世界の存在に対処するためのものだ》
声が直接頭の中に響いてくる。
同時に、それぞれの使い方も一瞬で伝わってくる。
「あなたは………?」
神々しいまばゆさに包まれた人物に呼びかける九恩。
が、返事はない。
「もしや、六凡の前にも現れた光の人………?」
やはり、何も返答もない。
そして、光の人は消えた………。
思い返せば九か月前、光の人を見てからずっと葛藤を続けてきた。
正直なところ、いまだに半信半疑ではあった。
だが、退路が絶たれれば前に進むしかない。
案ずるより産むが易し、か………。
やがて、九恩がついにその結論に至った時、ささやきさんに着信があった。
すぐに糸電話のマークを押すと、画面に三玲が映った。
『ご報告があります。輸送機は見つけましたが、中には何もありませんでした。搭乗口が開いていたので、ひょっとしたら、誰かが先に見つけて持ち出したのかも知れません………』
「それはマズイな………あれがなければ、侵入者に対処できないのだからな」
九恩はリンリンに背を向けてささやきさんでの通話を見られないようにしつつも、小声で応じた。
『探します』
「頼む。だが、私も手伝おう。これからそっちに行くつもりだ」
『九恩さまが………!?』
それを聞いた三玲は驚いた様子だったが、九恩はどこか吹っ切ったような口調でさらに言った。
「私にも、何かできることがあるはずだ。もうここにいても、何の意味もないのだからな」
『どういうことですか………?』
「偽装が見破られたようだ」
『偽装………? 何のことでしょうか?』
「君が地球に降りてから、ずっと過去の映像データを加工したものを評議会に送っていたのだが、それが見抜かれてしまったのだ。まあ、いずれそうなるとは思っていたので、やむを得ないことだが」
『………』
それを聞いた三玲は、しばらく何も言えなかった。
『この半年間、ずっとそうされていたのですか………?』
「そうだ。評議会の面々を欺くための加工をしなければならないのでそれなりに手を焼いたが、今日までもってくれれば十分だろう」
『何故、そのようなことを………? ありのままを評議会に伝えれば、処分されるのは私一人だけで済んだはずです………』
「そんなこと、できるはずがないだろう。部下を守るのが上司の務めだからだ」
『………』
お互いに思い合っている。
三玲はそう感じた。
しかも、自分の意思で。
果たして、これは本当にプログラム的なエラーなのだろうか………?
九恩は頻繁に起きる動作不良との関連を疑っている節があったが、それは考えにくかった。
それよりも、別のことと密接に関係しているように思えた。
光の人………。
しかも、六凡と九恩も見ただけではなく、無から有が生じるかのようにモノまで出現する。
そんなことが三度も起きたのならば、もはや単なる不具合の類いや、それに付随した妄想などではないと言わざるを得ないだろう。
では、何なのか?
現時点では分からなかった。
それが、今の三玲の率直な感想だった。
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