ピラミッドとネックレス②
コンコン。
ドアがノックされたのを聞いた三玲が端末からプラグを抜くと、右手の人差し指の先が閉じた。
「ちょっといいかな?」
佐山が部屋を覗き込んでいる。
「どうぞ」
三玲がそう答えると、佐山が横までやってきた。
「何か?」
「いや、毎日、寝る間も惜しんで仕事をしているようなので、ちょっと心配になったものでな………」
「私は大丈夫よ」
「そうか、それならいいが………」
確かに、三玲からは疲れた印象は見受けられなかった。
だから佐山としても、それ以上何も言えなかった。
「他に、何か?」
すると、また三玲が聞いてくる。
激務を気遣って様子を見にきただけなので、特に用事があったわけではない。
なので、改めてそう言われて困ってしまった佐山は、何か話のネタはないかとチラッと机の上に目を向けた。
そこには、数枚の紙が置かれていた。
どれも蝶をデザインしたネックレスの写真で、拡大印刷されたもののようだった。
さらに開いたままの端末を見てみると、どこかの山奥のような場所を写した写真が表示されていた。
その中に、こんもりとした三角形の小山らしきものがある。
【天馬山は古代のピラミットの名残りだった!?】
写真の説明書きの冒頭にはそんな見出しが添えられており、机の脇のプリンターのトレイには画面を印刷したものが出力されていた。
相変わらず、ピラミッドとネックレスを調べているのか………?
一見すると、任務とは無関係のように思えたが、観測所のスタッフに志願してきた時の条件と関連していることも考えられた。
………これから起きるいくつかのことを教えるわ。そして、必ずあなたたちを助ける。だから、その時が来たら手を貸してほしいの………。
それが三玲の求めてきたことだった。
その時、佐山は、三玲の透き通った眼差しの中に秘められた何かを感じたものの、採用するかどうか迷った。
素性も分からないばかりか、持ちかけてきた条件も意味不明に思えたからだ。
それでも最後は自分の直感を信じ、とりあえずは準京都出身ということにしてもらって迎え入れたのだが、すぐにそれが正しかったことを実感するに至った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます