彼女が幽霊だったので幽霊になって会いに行ってみる
櫻田羽美
第1話 彼女の死
彼女の死
「田中が今朝亡くなったそうだ…」
なんともか細い声で担任が言った。
その言葉を聞いた時、頭が急に真っ白になった……
クラスの人達が泣いている中俺だけが泣いていなかった。
亡くなったはずの彼女がいつもの席に座っているのだ。
彼女の名前を呼んでも振り向いてくれない。そこで俺は思った。
――彼女は幽霊になったのだ……と。
俺は小さい頃から霊感が強かった。
友達の後ろに知らない女の人がいたり、クローゼットを開けたら30代くらいの男の人がじっとこっちを見ていたり、
テレビの物陰から小さな男の子が手を振っていたり、最初の頃は驚いていたが、
目は合うけど話しかけても返事がないし、襲っても来ないので、何度も見ているうちに慣れてしまった。
彼女も同じだった。名前を呼んでも返事がない。手を伸ばしても触れられない。
どうしても話したい。そんな浅はかな理由で俺は決心した。
死んで幽霊になって会いに行こう――
私は小さい頃から体が弱い子でした。週に1回は熱で寝込んでました。学校に行ってもすぐに保健室で寝込んでました。
体が弱いため外で遊ぶこともほとんどありませんでした。
このような体質だったため、友達もできずにいつも1人でした。
そんな私の唯一の趣味が読書でした。本は私を知らない所へ一瞬で飛ばしてしまい、様々な感情を与えてくれます。
そんな私のお気に入りの場所は皆さんのご想像通り図書館でした。図書館は私にとっての遊園地でした。
ある日学校帰りに図書館に行くと見覚えのある姿が見えました。それは私の前の席に座っている子でした。
顔は覚えているけど名前が出てこなくてうろうろしていたら、こちらに気づいた彼が驚いたような顔で
「おぉ田中じゃん!」と言いました。
私は急に声をかけられて「は、はひ!」と変な返事をしてしまいました。
彼は、授業で出てきた本が面白くてその本を借りに来たと言いました。そして、私が持っていた本に興味を持ち、その本の1巻目を借りていきました。
その日から、私たちは学校と図書館でその本について語りました。友達と遊ぶことよりも私を優先している彼に、「私よりも友達と遊んだ方が楽しいよ」と言うのですが、
「田中と会話してる方が面白い!」と答える彼に、嬉しさ半分、彼の評価が落ちるんじゃないかという気持ち半分でした。
そんな私の気持ちには気にもしないで楽しそうに話している彼に少しづつ、好意を抱いていきました。
そこで私は、彼がこの小説を全て読んだら告白しよう。と思いました。
そして彼が小説を全て読み終わった日、私は「図書館に来て下さい」と書いた紙を彼の机の中にそっと入れて「体調が悪いので早退する」と保健室の先生に告げてから足早に図書館に行きました。
図書館で彼と語り合った小説の1巻目を読みながら、彼を待っていました。
あとがきを読んでいると「お待たせ!」と彼が来ました。早退した理由や置き手紙の事を聞かれましたが、頭の中は昨日の夜考えた告白のフレーズでいっぱいいっぱいでした。
そして、「んで、要件って何?」と聞いてきた彼の言葉を食い気味に「わ、わたし!あなたの事がす、好きです!わたしとつ、付きあってくだひゃい!」となんともダサい告白をしてしまいました。
そんな私の告白に驚きながらも、「こんな俺でよければお願いします!」と返事をしてくれました。
まさかOKの返事が出るとは思っていなかった私は彼の言葉を読み取るのに時間がかかりました。
その日から私たちはカップルになりました。カップルらしいことは何ひとつもしてませんが……
ですが、私は彼と同じ本について語れることだけで幸せでした。こんな生活がずっと続いたらいいのに。と思ってました。
そんな思いとは裏腹に私の病気は深刻になっていきました。そんな私を心配して彼はお見舞いに何度も来てくれました。
そして来る度に自分が読んだ本について、最近の学校生活についてを楽しそうに話していました。相槌を打つだけでまともに会話が出来なくても私は嬉しかったです。彼の笑顔を見るだけで幸せでした。
しかし、私の病気が治せるかもしれないという病院に移動することになりました。そこはここからかなり遠い場所でした。
ですが、彼は1ヶ月に1回来てくれました。来る頻度は少なくなっても、彼が来てくれることにとても嬉しくなり、来る度に泣いてしまいました。こんな生活でも彼の顔が見れるだけで幸せでした――
彼女が幽霊だったので幽霊になって会いに行ってみる 櫻田羽美 @mittyon
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