第二話 広告のありよう
広告のあり方について考える。
古くはキリスト教の五大聖地巡りや、善光寺、伊勢参りなど収益を狙った宗教勢力が信徒や、僧侶を駆使して宣伝を行っていた。
そして資本主義になってから特に隆盛する。雑誌の表紙のイメージしか自分にはないが、それもまた、その情報媒体製品の購買欲を上げるための広告手段であった。知的階級の人間を対象とした雑誌の表紙はA4B5だか知らないが、大きいためそこにはあらゆる絵が掲示されていた。(よね?)
そのため、広告は人々に購買欲を起こさせるだけでなく、芸術への接点を与え、その点で文化に寄与した。
文化に寄与するというのは両義的ではある。一方は人々の感受性を高め、外向的な価値観を与え、一方は人々の思想を斉一化させ、内向的に同一の価値観に束縛する。
しかし、ここまでは想像の中での話。次はテレビのある視点から考えてみよう。
強くて明るい話題なのが家事用品(食品)と自動車。この業界はCMを続けて打つが、商品の持つ特性よりも、商品を含む、暮らしを表現しようとしている。自動車のテーマは田舎にドライブする緑ある休日、食品の方は明るい食卓。商品が生活に衝撃を与えるのでは無く、商品がある明るい日常を描写する。ただ、絵画の要素は薄れただろう。写真や動画、音声など、現実のものを使うことで、(シュルレアリスムの印象が僕には強い)現代アートやヒューマニズム的な芸術の地位は失われていったと思う。
ドライブの光景に憩いを思い旅にときめき、普段自分がそこにいる食卓の鮮やかさを見る。
その普通の明るさを見続けて、今私達はそんな大きな会社の名前を確実に覚えている。
現代でも広告は、文化を担い、同時に性役割の肯定といった保守的な態度を見せたり、その傾向に疑問を投げかけたり、様々な動きが見られる。食品のCMがイクメンになっているのは間違いなくその証である。
二階堂が結構衝撃的である。あれはかなり文芸的な侘び寂びを使用するので前衛的な部類に入る。かつ、古き良き日本を語り、重伝建っぽい古民家など、伝統も紹介する。同じ部類だがair dogあれも外資(中国系)の企業だが、あれは一番まともなCMにすら見えた。永平寺を紹介し、その観光を守ると、さりげなく空清機をアピールする。多分、あちらは見慣れてはいるからバフはあるが、佐野厄除けよりも日本をしていた。あとJR。過疎の現実はあるだろうが、古き良き日本を上手く表現している。
また別の例では任天堂、プレステの大手ゲームのCMである。これらは、子供に娯楽を提供するものとして、かつ、子供の想像力を高め、彼らの世界を作り出そうとする表現が多い。子供が大人と一緒にコミュニケーションを取りながら遊ぶという要素が欠けた、大人にとってよろしくないゲームがさりげなく彼らの会社の製品にも存在するが、鬼トレなど、ゲーム脳というゲームに向けられた辛辣な批判に適応した知育ゲームも現れた。その上マリオカートなど、特にWiiの頃からは親子で遊べるゲームも登場し、CMでも親子でプレイしている。新たな文化の仲介者が現れたが、CMのもつ文化的価値は彼等のゲームでは引き継がれている。
新たな広告手段について。
アニメ。アニメは本当に難しい。全てのアニヲタ同士が互いに打ち解け会えるとは思えない。(こう言えば聞こえはいいが)ビジュアル系(と声)と、ストーリー系。これが更に、カワイイカッコいい、キャピキャピどんよりとか好きなだけ分かれる。
しかもそれぞれ他者に対する違いもある。昔はみんな見てたから見ろと、俺が発掘しためちゃくちゃいいのだから見ろと、違う。
アニメのキャラクターは、法的には著作権だが、広告の受け手とすれば人格のあるパブリシティ権(財産的肖像権)を持っている。きっと多くの人が知っているアニメであったならば、そのキャラクターは有名人と同じ役割を果たすだろう。
しかし(実際言えば俳優にも同様の事が言えると思うが)広告におけるキャラクターの使用が作品への侮辱であると考える人々はいるだろう。広告という、資本主義の生々しいものに出演させることで、キャラクターの印象が破壊されてしまったというふうに、広告をケガレだと考えることは十分理解できる。
また、アニメは伝統文化には属さない。室町時代に賤民がやっていた猿楽能と同様にその時代の中では一文化の流行である。映画世代(という表現が適切かは分からないが旧『君の名は』とか人間の映画。ジブリディズニーじゃない。)には奇怪である。
宮崎勤(実はその疑いは低いが、しかも結構前の時代)が悪名を広げたロリコン型ギャルゲーアニメが今はアニメの第一線に存在しているかもしれない。(ジブリーガンダムーエヴァときて?)
まあ分からんがジャンプコミックスのアニメの方がさすがに知名度は勝ってる気がするが。
さすがにストレートな言い方が気が引けるので多少過剰な表現になるが、アニメといえば、人の琴線を触りに行くような胃もたれする甘え声、猥褻の一歩手前な描画、これが大きな印象になっているような気がする。(女性である。)現代のアニメのイメージは、僕もそうだし、非アニメ(またいわく古き良きアニメ世代)世代にはこのように感じられる。(多分決めつけであろうが)
この悪いイメージがあるので、(僕の中で)会社が広告にこのようなアニメを取り入れたらもとのような清い状態には戻れないとそこまで思う。
しかし、京急や東武のイメージが強いが(といっても、頭身をデフォルメしているし顔がリアルでないので自分の中でギリギリセーフだが)取り入れる会社(中小私鉄のイメージが強い)、自治体(聖地巡礼系)は多い。
まあ、戦後一周を終えた後なので、そのような文化の隆盛は一つの時代の訪れであろうが。その流れに僕は反感を買ってしまう人間ではあるが、アニメは新しい広告の手段となっている。
そして、ネット広告。この世界これまでの広告のあり方に真っ向から異議を申し立てるものであった。美容、育毛、ゲーム、これらの広告は(言いやすいから三つに絞ったが)インターネットの利用者にとって悪の枢軸であった。
毛穴ケア、整形など人々の自分の顔へのコンプレックス意識を煽り、自己肯定感を下げるような美容広告。
髪がないことへの負の意識を想起させる類の育毛広告。
この二つを統合しても良かった気がする。
そしてゲームの広告。これは二つとは異なる特徴を持っている。
直訳の汚い日本語、もやがかかったような悪いグラフィック、誰でも解けるような簡易なパズルを見苦しく失敗する姿を人に見せつけるプレイ画像、これがとければIQ〇〇とかの見え透いた嘘、日本人には過剰で煩いリアクション、ケバい色彩、品性のないお色気、簡体字を日本式漢字と誤用する怪異さ、桁単位がK,M…で日本語の桁綴り(一十百千万億)と違う点。
これはただの悪口。しかし、問題はこの広告手法がまったくコンプライアンスに抵触しないのでこれはただの粗雑なadでしかないという点だ。そう、これはモラルに反したadではない。ヘイトでもない。
これを考えさせられたのが、
(クオーラというサイト)のリンク
この記事の下の方にある、(回答者)氏の解答である。利益的には問題ないがこのようなクソみたいなCMを作ることで恥ずかしくないのか、良心が痛まないのか、と述べている。
ただ、こんなクソみたいなものを作って良心を痛めることはそれはそれでまた違うと思う。会社としての社会貢献は、彼等のゲームを提供し、文化を広げることである。クソみたいなものを作ることを恥とするのは、いつまでも最高品質だが利益率が低いCMを作り続ける広告会社だけではないか。そうも考えられる。そう、私達はミシュランでも、宅配ピザも、冷凍食品でも、自炊でも、色々なコストと味覚を考えて食事を作ることができる。適切な家計で回すことも、会社を保つためにも、会社の製品を長く顧客に愛顧頂くためにも必要なことである。
広告の制作費と、掲載費の釣り合いは必要である。資金力の少ない中小では、制作費を過剰に費やして掲載する場が少なくなるようではいけない。
なおさらに、現代ではその粗雑さに惹かれる(まあ蔑んでるというほうが正しいが)人間がいて、彼らが他の全うなadのゲームよりもこのゲームをプレイしてくれることもある。
日本人のプライドに抵触するものではあるがこの手法はかなり効率の高いものなのである。
このような昨今こゲーム広告の特徴を踏まえた上で次の話に進もう。
このようなカオスなネット空間は、広告に大きな問を突き付けた。
それが、広告は文化を豊かにさせるものであり続けるべきかと言うことだ。
これら悪の枢軸は広告の持つ文化的役割を完全に放棄し、完全に会社の利益に特化したものとなってしまっている。
これらは私達の感受性を高めることもしないし、私達の嫌悪を意図的に買い、劣等感を与える。この結果、私達は他の広告に対しても同様の嫌悪感を持ち、時間のロスだとイラつかせることになっている。
そのために、私達は文化を伝える媒体を一つ失ってしまった。
しかし、ネットではまともな広告は視界からフリップであっと言う間に消えてしまう。悪の枢軸が他の広告に対して大きな悪印象を波及させているためだ。
この現状をどうすればいいのだろうか。広告の精神論は今岐路に立たされている。
補記:昔書いたことのコピペである。この内容をダチに聞いたら、そりゃ広告は商業のことに特化すべきだろうと言う。あと他のやつに見せたら、漫画忘れてない、と言われる。その人女子やったから言葉に詰まった。「まあ、効果出てるよねぇ、汗」と返した。
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