第16話 黄金のサイドバック

 冬の寒い日。粉雪がちらつく午後。

 河川敷で少年サッカーの試合が行われていた。私は橋の上から試合の様子を眺めていた。両チームとも陣取り合戦のようにボールを敵陣へ蹴り込んでいる。ミットフィルダーの頭上をボールが飛んでいるという具合にだ。私は一人の選手に目を奪われていた。その選手は左サイドバックの選手だった。豊富な運動量で上下動を繰り返していた。ピンポイントのクロスも上げていた。その姿はアフリカのサバンナの肉食獣を思わせた。私はその少年を長友佑都だと思った。そうだ。きっと長友の生まれ変わりに違いない。よく見れば顔も長友に似ている。彼は長友だ。

 試合が終わったと同時に私は彼に近づいた。

 「君は長友か?」私は言った。

 「違います」長友は私をおかしな人を見る目をした。

 「いや長友だろ?あのサッカー日本代表の長友佑都だろ?」

 長友は私の前から逃げていった。

 彼のチームメイトたちは私のセリフに大笑いした。

 私は彼は長友佑都ではないと思えなかった。きっと彼は将来長友佑都みたいな選手になるだろう。いやなるに違いない。彼はれっきとしたあの日本代表黄金のサイドバック長友佑都だった。

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