シベリアからやってきた日露ハーフツンドラ美少女はクールでエキセントリックで殺伐としているけれどポンコツでかわいくて俺のことが大好き!?
第37話「シベリアで培ったツンドラ力VS暑いぞ埼玉!~編集者志望の西亜口さん~」
第37話「シベリアで培ったツンドラ力VS暑いぞ埼玉!~編集者志望の西亜口さん~」
★☆★
「祥平、今日はあなたの家に寄るわよ」
放課後。校門を出たところで西亜口さんから耳元で囁かれる。
西亜口さんは俺よりも先に教室から出て、校門のところで待っていたのだ。
「うぇえっ!?」
「うぇえってなによ。殺すわよ?」
相変わらず物騒だ。
「今日はあの脳筋武道女は部活でいないみたいだからね。チャンスは最大限に生かすのがわたしの主義よ」
「……えっ、でも、それだと家にふたりっきりになっちゃうけど……」
「だからこそでしょう? お邪魔虫がいない間に、あなたに誰が主人であるかを骨の髄まで叩きこんでおかないと」
おそロシア。
というか、西亜口さんと家にふたりっきりというのはプレッシャーが!
「そのうち妹もどきが来襲するのでしょう? ならば、先手を打っておかないと」
「せ、先手って……」
「あなた……今書いている小説の主人公……メインヒロインは誰なのかしら?」
「えっ……そ、それは……」
あの小説は西亜口さんが転校してきたことにインスピレーションを受けて書き始めたのだ。なので、当然――。
「し、西亜口さん、だけど……」
「……そ、そう……そうよね、わたしがメインヒロインよね……」
西亜口さんは安堵したような表情を見せる。
だが、それも一瞬。
「中押し、ダメ押しをしておかないといけないわね」
野球じゃあるまいし。
「あなた、まだ昨日の小江戸川越デートを書いていないでしょう? さっさと書きなさい」
「え、えぇえっ……。でも、いろいろありすぎて、どう書いていいか……」
俺の技量ではあれだけの人物と街の描写をできる自信がない。
「まあ、どう書こうと勝手だけれどメインヒロインが誰かという部分は忘れないでほしいわね。がんばって書きなさい。可及的(かきゅうてき)速やかに書きなさい。遅れたらシベリア送りになるつもりで書きなさい」
冷たい瞳で見つめられ……否、脅される。
「わたし実は編集者志望なのよ。あなたにはいい小説を書いてもらうわ。書かないと言うならばあなたをシベリアの屋敷に監禁して鉄格子のついた部屋で書かせるわよ。オプションとしてわたしが常に罵り続けてあげる」
そんなカンヅメは嫌だ。どんなオプションだ!
しかし、西亜口さんはシベリアでどんな暮らしをしてたんだろうか。
そこは気になる。
「いつかあなたをシベリアに連れていきたいわね。宮殿と見まがうばかりの西亜口家の豪邸。そこには鉄格子つきの部屋がいくつもあるのよ」
おそロシア……。
ほんと、どういうところに住んでいるんだ……。
「姉とはよくスパイごっこをして忍術を極めたものだわ」
なるほど……。だから西亜口さんは微妙に身のこなしが常人離れしてる部分があるのか。西亜口さんの姉も、さぞかしエキセントリックなんだろうな……。
「まあ、シベリアでの話は今はいいわ。とにかくあなたが小説を書く様子を背後からじっくりねっとり観察させてもらうから」
それだと執筆が捗らない気がするが……。
まぁ、校門前で長々と話しているのもなんだな。
先日、里桜が教室に来てからというもの俺たちの関係についてクラスメイトたちから疑念の目を向けられているからな……。
そりゃ俺のような陰キャが学園の美少女ふたりと行動してちゃな。
「それじゃ、行くか……」
「ええ。行きましょう」
西亜口さんもほかの生徒たちからの視線に気がついているだろうに、動じることはない。
俺とはツンドラ力が違う。さすが永久凍土。
俺のような生温い(というより夏は暑い、暑すぎる……)埼玉育ちとは肝の据わり方が違う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます