第47話 Fクラス対Sクラス(2)

 ミリアside


 ボク達Sクラスは森の西側の一番奥まで進む。


「今日は何分で勝てるかなあ」

「5分持てば良い方じゃね? Fクラスのカス共に負けるわけねえだろ」

「それじゃあ賭けをしようぜ! 誰が一番多く倒せるか」

「いいねえ」

「だが賭けているからってやり過ぎて殺すなよ? Fクラスは雑魚過ぎてうっかり⋯⋯てあり得そうだからな」


 クラスの男子達は勝つことは当たり前だと思っているのか、Fクラスをバカにし油断しきっている。


 全員がそうとは言わないけど正直ボクはこのノリについていけない。だからSクラスで友達を作りたいと思わないし、作ろうとも思えない。

 この人達は初めはボクに対しても態度が悪かった。だけど実技訓練で魔法を見せて、ボクがラニ姉の友達だと知ると一気に媚びへつらうようになってきてうんざりしている。

 相手の色々な強さに対して態度を変えるようなら初めからバカにするようなことをするなと言いたいけどこの人達は変わらないと思う。

 それならメルルンのような優しい人と一緒にいたいけどクラスが違うためそれも難しい。


「今日のクラス戦はミリアさんが出るまでもないです」

「ここで待っていて下さい」

「うん、わかったよ」


 元々やる気がなかったからちょうど良かった。それにFクラスの子達がSクラスの人達にいたぶられる所は見たくないしね。


「ヒャッハー! 狩りの時間だ!」

「Fクラスは魔法の練習台にちょうどいいぜ」


 この人達は何を言っているんだろう? 正直な話、クラス対抗戦が始まったらボクが背後からあなた達を狩ってやりたい。そんな気持ちになる。


 そしてスタートの合図である炎が空を舞い、Sクラスの人達は一斉にFクラスの子達の元へと向かうのであった。


 ユクトside


 リリーの手で戦いの火蓋が切られる。

 だが俺達はここからではFクラスとSクラスの試合は見られないと思いきやいくつもある巨大な四角い画面からそれぞれの場面を見ることができた。


「これもミリアちゃんが発明した魔道具ですよ。ビジョンという名前で離れている景色が見れるとか⋯⋯」


 ラニが俺の横に来て魔道具の解説をしてくれる。


 離れた所を見る魔道具か⋯⋯そんなこと考えもしなかった。やはりミリアの発想力は想像以上だということが改めてわかった。


「ミリアは本当に凄いな」

「その凄い子をを育てたのはユクト様ですけどね」

「いや、これは本人が生まれ持った資質が良いからだよ」


 録音する魔道具といいミリアは天才と言っても過言ではないだろう。


「あっ! ユクト様! 画面に動きが!」


 ラニの言うとおり1つの画面を見るとSクラスの面々が4人と5人に別れた様子が見られる。そしてどうやらミリアは初めの場所を動かず様子を見ているようだ。


 ミリアは動かなかったか。

 Fクラスの子達にはミリアがいる時といない時の策を授けているが、前者の場合はかなり厳しいものになると思っていた。

 この試合でやはり1番脅威なのはミリアで、Sクラスの子達と連携してきた場合Fクラスの勝率は2割ほどになっていただろう。


「Fクラスの底辺共にミリアを出すまでもない。貴様らだけで捻り潰してしまえ」


 ビルドは余裕の表情で試合を見守っている。

 Sクラスの敗北へのカウントダウンが始まっているというのに愚かな奴だ。


 そして俺は5人の一団の方を注視する。

 作戦通りならそろそろだ。

 Sクラスの5人が映っていた画面が突如白い靄に包まれてビジョンを見ている俺達からは何も見えなくなる。


 メルルside


 私は木の影に隠れ、Sクラスの人達の気配を探る。

 今までSクラスの人達と試合をした時は、私達をバカにしているのか隠れることはせず向かってきた。そしてSクラスの人達は今回も同じ様に接近してきたため、どこにいるかすぐにわかった。

 どうやらミリアちゃんはいないみたい。ユクトさんはミリアちゃんがいた場合は1度退くように言っていたけどいないなら⋯⋯。


霧魔法ミスト


 5人のSクラスの人達までの距離が30メートルくらいになった時、私はユクトさんに言われたように霧魔法を発動する。


 すると私を中心に霧が発生しSクラスの5人を包み込む。


「な、何だこれ!?」

「狼狽えるな! ただの霧だ!」

「どこからか私達を狙っているかも! 注意して!」


 さすがのSクラスも霧で視界が悪いため走るのを止め、敵を見つけるため方円の陣を取る。


「くそっ! どこにいやがる!」

「Fクラスのくせに生意気な!」


 Sクラスのメンバーは左右上にと視線を向けるが、霧が深いためFクラスのメンバーを見つけることができない。


沼地魔法スウォムプ


 そしてSクラスが焦りを見せている中、メルルと同様に木の影に隠れていたネネが土魔法を解き放つ。すると周囲の場所の土が柔らかくなり、Sクラスのメンバーの足を地面に沈めていく。


「何だこれ!」

「足が取られて思うように動けない!」

「落ち着け! 1度この場所から脱出するぞ!」


 1人のSクラスの者の声に従い、全員がこの場から離れようとするが既に遅かった。

 Sクラスの頭上にはFクラス8人の男子が放った炎、氷、雷の魔法の矢が降り注ぐ。


「ぐわぁっ!」

「きゃあっ!」


 Sクラスのメンバーは逃げることも出来ず、突然の攻撃に対して何もすることが出来ない。

 そして攻撃が止み霧が晴れた後、その場にはうずくまっているSクラスのメンバーしかいなかった。


 やったあ⋯⋯私達やったんだ。

 私はクラスメート達に視線を送るとみんなSクラスの人達を倒したことが信じられないといった表情をしている。

 なぜなら今まで何度もSクラスとチーム戦の試合をしてきたけど1人ですら倒したことがなかったから。


「まだ終わってねえ⋯⋯次に行くぞ」


 ライルくんが小さな声で私達の気を引き締める。

 たしかにまだ私達は試合に勝ったわけじゃない。それにまだミリアちゃんが残っている。


 私達Fクラスはミリアちゃん以外のSクラスの人達を倒すため、この場を離れまた身を隠すのであった。


―――――――――――――――


【読者の皆様へお願い】


 作品を読んで少しでも『面白い、面白くなりそう』と思われた方は、目次の下にあるレビューから★を頂けると嬉しいです。作品フォロー、応援等もして頂けると更新の励みになります。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る