第2話 身長差 東京 大阪 北海道

「ああもうだから殴るなこのミジンコチビが!」


 ぐるぐるパンチを続ける大阪の顔を手で抑えて東京が距離を取るが大阪の眉間からはシワが消えない。


「チビってお前も大して変わらんやろ!」

「じゃあお前何センチなんだよ!?」

「ワイなんか昨日家で計ったら一五三センチもあったんやぞ!」


 一五三センチで「も」と言う大阪を、だが東京は鼻で笑って……


「はっ、俺なんか昨日家で計ったら一五四センチもあったぜ、お前のほうが一センチチビだな」

「はぁ!? 何一センチ程度で威張っとんじゃ! それに正確な身長は明日の身体測定やろが!」


 大阪が東京を押し倒し、マウントポジションを取るが東京は余裕の表情である。


「負け惜しみ言ってんじゃねえよ豆チビ! やーいやーい一センチチビでやんのー」

「こんの腐れ東京者が、明日は絶対ワイのほうが……」


 言い争う二人の口が同時に止まる。

 二人の体がまるで曇りの日のようにすっぽりと影で覆われてしまったからだ。

 東京と大阪はやはり同時に空を仰ぎ見て、そして絶句した。


「「ッッ~~!!!??」」


 デカイ、とにかくデカイ、日本人離れした体格どころの騒ぎではない、それこそアメリカのNBAやNFLでもいないような大巨人が丁度二人の横を通り過ぎる所だった。


 東京と大阪、小柄とはいえ人二人分の体を包んだ影は彼が落とした物だ。

 巨人は二人の存在に気付かず、道端の小石のように跨ぐとそのまま玄関へと歩みを進める。


 北海道……身長二一〇センチ、体重一四〇キロ

 北海道の面積は二位の岩手県と五倍以上の差をつけてブッチギリ一位である。

 身長の高い低いで争っていた自分達が虚しくなって東京と大阪は無言のままに玄関へ歩き始めた。

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