第9話

 じいちゃんの17回忌の法事。親戚のみんなが集まった。30人くらいはいた。住職さんがお経を終えると話を始めた。

 私が故人のお話をするよりも、生前可愛がっておられたお孫さんから、個人のお話をしてもらうほうが、よいかなと思いまして、今日は、お孫さんに話をしてもらうことに、決めました。ではどうぞと。1番年上の従兄弟が壇上に上がり話を始めた。1〜2分話したところで、実は一番可愛いがられていたの、孫の中でも3番目の〇〇なんですと、私のことだった。なので、ここは、〇〇が話をしたほうが良いと思いますと。


 突然のことで、焦った、困った、参った。

私は、引っ込み思案で人前が苦手なのだった。


 ところがその時は、なぜだろうか分からないけれど、話をしてみようという思いは、あった。

何を話したらよいのか、席を経ち、マイクの前に立つまでは、思いつかなかった。後ろを振り返ると、じいちゃんの遺影が笑っていた。

 そうだ!考えたのではなく、感じたと言う方があっているかもしれない。思うまま、じいちゃんとのことを話そうと、思った。そこにはなんの囚われも縛りも、プレッシャーもなかった。


 エピソードを必死に話した。じいちゃんが優しくて暖かかったことを。


 拍手と喝采を受けて、生まれて初めて、人前で話をすることが、こんなに楽しいんのだと、感じた。いみじかった。このことを、きっかけに人前で話すことが、楽しくなった。

 そして今日も、友人の結婚式でスピーチをしている。今日で6回目。

 じいちゃんありがとうね。たくさんの優しさと愛情を。じいちゃんが出会う人が、みんな笑顔であった理由もなんとなく、わかる気がした。そして、引っ込み思案であった私が、人前で楽しく話をすることができるようになったことを、感謝します。      

 ありのまま生きるということ、ありのままの言葉を話すということ、その言葉は人には届くということ。


 これが、じいちゃんからの贈り物だった。

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じいちゃんからの贈り物 マルボロメッシ @marlboro-messi

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