第7話

 じいちゃんは、たった一度だけ、私にブチギレた。

 いつものように、じいちゃんとばあちゃんは、朝早くから、豆腐屋で働いていた。私は前日から熱を出して、寝ていた。豆腐ができあがり、配達に出かけようとしたとき、少しだけ体が楽になったような気がして、外で遊んでいた。そんなとき、じいちゃんが、大きな声を出して、怒り狂った鬼のような形相で、こちらに走ってきた。

 これは、まずいなと、子供ごころでも、理解ができた。

 軍隊あがりのじいちゃんは、孫の私には優しいが、自分の子どもたち(母や母の兄たち)には、メチャクチャ厳しく恐ろしい存在であったらしい。その時も、小脇に抱えられて、家に、戻った。その後は、黙って静かに寝ていた。というより、その時のじいちゃんの顔が恐ろしすぎたからだ。

 次の日には、熱は下がった。


 告別式が終わり、親戚みんなで昼飯を食べているときに、親戚のおじさんと、この話をした。おじさんは言った。じいちゃんは、いつも、楽しそうにお前の話をして、笑っていたんだよって。じいちゃんに会いたくなった。

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