第2話

 医者が死亡確認をした。

家族が集まり、みんなが涙した。


 じいちゃんは、豆腐屋だった。毎朝3時から、ばあちゃんと二人で仕事をはじめる。子供の僕は、まだ、寝ていて、それから数時間して、物音と大豆のいい匂いで毎朝、目が覚める。すべて手作りの豆腐だった。豆腐が出来上がると、そのまま自転車で配達に出掛ける。店頭販売もしていた。たくさんのお客さんがニコニコしながら、豆腐を買いに来ていた。


 2号店を出さないかと、取引先の銀行から、誘われていたことがあったが、じいちゃんは、頑なに断ったそうだ。「自分の目の届かない仕事はしたくない」と。


「あの時、2号店を出していたら、楽できたのになぁ」と、ばあちゃんは、病院を出るまえの霊安室で、そう言って、微笑んでいた。

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