第28話通学路に潜むもの

侑もすっかり中学三年生になり、大人っぽくなってきたある日のこと。

担任の山谷やまたに先生が、朝礼でこんなことを言った。

「最近、この近所の通学路で通り魔事件が発生しています。昨日も他の中学校の中学二年の女子生徒が、襲われる事件が発生しました。なので、下校の時にはなるべく一人にならないように気をつけるように。」

朝礼の後、クラスの女子たちはその話で持ちきりになった。

「ねぇ、ねぇ、あの通り魔事件のことなんだけど・・・」

「えっー、その話止めない?超怖いわー」

「そういえば、となりのクラスの生徒が 通り魔の姿をチラリと見たことがあるって言っていたわ。」

教室の端で聞いていた侑は、事件の予感を感じた。

「一体、犯人はなんでこんなことをするんだろう・・・?」

侑は事件の捜索を始めた。まずは犯人についての調査だ。

ということで侑は、下校中に辺りを注意深く見ながら犯人を捜し始めた。

だが犯人が姿を見せることはなかった。

「おかしいなあ・・・、ぼく の通学路にはいないということなのかな?」

結局、その日は通り魔に出会うことはなくて、侑は無事に家に帰ってきた。

「お帰りなさいませ、侑様。」

今日も相変わらず上条さんが、出迎えてくれた。

「そういえば最近、近所で通り魔事件が起きているという話を聞いた?」

「はい、ご存じです。中高生の女子を重点的に襲っているようです、男子である侑様もどうか気をつけなさってください。」

そう言って上条は仕事へと戻っていった。

「通り魔事件・・・、気になってきた」

侑はいつの間にか探偵の顔になっていた。







翌日、侑が通り魔事件について調べようと思い立った時、侑が教室に入るとみんなが何かの話題で持ちきりになっていた。

「なあ、七海ちゃんが通り魔事件にあったって本当か?」

「うん、昨日の下校中にやられたそうだよ。」

「連れ去られそうになったんだって、本当に怖いわ。」

昨日通り魔事件があったことを知った侑は、真っ直ぐにみんなのところへ向かった。今までのようなためらいは、すっかりなくなった。

「ねえ、ねえ!通り魔事件のこと、詳しく教えて下さい!!」

侑の剣幕にみんなはおどろいたが、何人かは侑に昨日の通り魔事件の詳細を教えた。

昨日の午後4時から午後5時ごろ

七海は友だちと三人で学校を出たが、家が近くなり一人で歩いていた。

そして家から一番近くにある角を曲がった時だった・・・。電柱からいきなり男が飛び出して、七海に飛び付いた。

「キャーッ!」

七海は抵抗したが、男の力が強くて逃げられず、そのまま引きずられていった。

「おい!何してるだ!!」

だが偶然通りかかったおじさんに見つかり、男は七海を置いて走り去った。

七海はおじさんに保護され、無事に家に帰宅することができたが、七海はこの出来事のショックで今は学校を休んでいるそうだ。

「ねえ、誰か七海さんの家の場所を教えてよ。」

「おい、そんなこと聞いてどうするんだよ?」

一人の男子が疑わしげに侑を見た。

「ぼくが通り魔を捕まえます。」

するとクラスのみんなは、「そんなの無理だ」と侑を笑った。でも侑は事件を本気で解決する気でいた。








その日の下校時刻、侑はこっそり七海の家を目指して歩き出した。

結局、七海の家の場所を知ることはできなかったが、近くに住んでいる女子をこっそり尾行して、その周辺を捜すことで七海の家を特定する作戦を取った。

侑にとってはギリギリの作戦だ、もし尾行がバレたら後々ヤバいことになってしまう。

二人でならんで歩く女子の近くを、侑は電柱の陰に隠れて様子を見ている。

女子たちが別れた、侑は電柱の陰から飛び出す。

「よし、この近くに七海さんの家があるはずだ。」

侑は住宅街を歩き回った、しかし七海さんの家は中々見つからない。

「あーっ、どこにあるんだろう?」

そして侑はとある家の表札を見た、そこには"七海"と書かれていた。

「ここだ・・・、七海さんの家は。」

そして次は一番近くにある角を捜すことだ。

しかしここで、侑はおじさんから声をかけられた。

「おい、お前こんなとこでなにうろうろしているだ?」

侑は固まった、ここで変なことを言ったらマズイ・・・。

「あの、七海さんのお宅ってこちらですか?ぼく、学校のプリントを持ってきたんです。」

「ああ、ここじゃよ。とすると、あの子は今日学校に来ていないのか?」

「はい、休みです。」

「うーむ、やっぱりあんな目にあったからなあ・・・。」

「おじさんは、七海のことをどうして知っているんですか?」

「ん?ああ、それは七海さんを助けたのはこのわしじゃ。」

「えっ!?」

これはラッキーだ、事件の当事者から直接話を聞くことができる。

「じゃあ、七海さんを連れ去ろうとした男の顔を教えて!」

「うーん・・・、歳は四十後半くらいで、右目のしたにほくろがあったな。あの日は黒の上着を着ていた。いつも散歩をしていてよく見かけていたから、この近所の人じゃないかなあ。わしに解るのはここまでじゃ。」

「そうですか、ありがとうございました。」

「ああ、ほな気をつけてな。」

おじさんは手を降って去っていった。

侑は事件の犯人に少しながらも近づいた、でもまだまだこれからだ・・・。











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