第23話学校の裏トライアングル(2)

真澄が死んでいると聞かされた侑と宮坂たちは、イチローセンターから大急ぎで屋敷に帰って来た。

屋敷にはすでに警察が来ていて、裏庭には規制テープが貼られていた。

「おい!真澄!真澄ーっ!!」

「おい、入っちゃだめだ!!」

規制テープを乗り越えようとする宮坂を警官が止めた。

「真澄が死んだって、嘘だ!!」

「悲しいことを言うが、嘘じゃない。上条さんが遺体を先に発見したんだ。」

「そんな・・・」

宮坂はその場に泣き崩れた。

その様子を五人と侑は、何も言わずに哀れみの目線で眺めていた。

それから侑は上条に、真澄の遺体を見つけた時のことを教えてもらった。

「洗濯物を干そうと裏庭に出たとき、真澄さんの靴を見つけました。靴を拾ったら、そこにはうつ伏せに倒れている真澄さんを見つけました。遺体には背中にキズが大きくついていて、そこから血が流れていました。」

侑は状況を想像し、犯人を考察した。

「犯人はここに真澄さんを呼び出して殺したか、連れてきて殺したか・・・。となると真澄さんが知っていた人が犯人である可能性はあるな。」

そこで侑はまず、真澄の死を嘆いていた宮坂に話を聞いてみることにした。

「真澄のことか・・・。今は何も聞かないでくれ・・・。」

侑は落ち込んでいる宮坂の気持ちを考え、話を聞くのは止めておくことにした。

次に宮坂と一緒にいた五人に話を聞くことにした侑、するとその内の一人・矢野三田やのさんたから、こんな話を聞くことができた。

「実は宮坂から黙っているように言われていたんだけど・・・、宮坂と真澄は付き合っていたんだ。」

その言葉に侑と四人は目が釘付けになった。

「その話は本当なの?」

「ああ、あの二人は小四のころからの付き合いだ。他の連中は知らないだろうけど、真澄にはすでに恋人がいたんだよ。」

「じゃあ、犯人はもしかして・・・」

「宮坂だというのか?それはあり得ないぞ!」

矢野は三人に言った、侑もその意見に同意だ。

真澄が殺された時間、宮坂たちと侑はイチローセンターで野球の練習をしていたはずだ。

「じゃあ、犯人はここに侵入して、真澄を連れ出して殺害、その後すぐに逃走したということだね。」

となるとやはり真澄さんは、外からやってきた何者かに殺されたんだ。

そしてそいつは真澄の知り合い・・・、でも本人は死んでいるから誰かに聞くしかない。

「ねえ、誰か真澄さんのことについて知っている人っている?」

侑は五人に問いかけた、するとまた矢田が話し出した。

「そういえば、真澄さんの噂を聞いたことがある。真澄は夜中に出歩いているって。」

「それは、どうしてなの?」

矢田は言いにくそうに口ごもると、侑の耳に小声で言った

「あいつ、パパ活してるようなんだ。」

「パパ活って・・・何?」

侑が言うと、五人は侑に静かにしてとジェスチャーされた。

「そんなこと、大声で言うな!」

「簡単に言うと、女の子がおっさんと一緒に過ごして、女の子が金をもらうということだ。」

「でも、どうしてそんなことを・・・?」

「真澄の家、とても貧しいんだ。その上父がいなくて、母は働かないろくでなしだからな。真澄は家族のためにやっているんだよ。」

「なるほど・・・」

つまり真澄はパパ活で危ない男と出会い、ここを突き止められて殺されたという可能性が浮かんだ。

「それにしても、まさか真澄ちゃんが殺されるなんてな・・・。」

五人と侑は改めて起きた出来事の重大さを再確認した。










その日の真夜中、何の前触れもなく目覚めた侑はあの封筒を見つけた。

「また、Uからの呼び出しだ。」

侑は慣れたように地下迷路を進んでいく、そして侑はUのところへとやってきた。

『よく来たね、侑。どうやら地上ではまた事件がおきたようだな。』

「うん、そうなんだ」

侑はUに事件の詳しい説明をした。

『ほう、侑と同い年の遊女がいたとは・・・。そうなると、夜の男だけでなく一番身近な、大人の男も怪しいと思うぞ。」

「一番身近な、大人の男?」

「例えば・・・、教師とか」

「先生が!?えーっ、有り得ないよ。」

侑は学校の先生が真澄を殺すなんて、あり得ないと思った。

『いや、よく調べて見ないとわからないぞ。とにかく被害者の身辺調査をしてみるんだ。』

「わかった、やってみるよ。」

『ところで、何か犯人の目撃情報は無いか?』

「そういうのは・・・、聞いていなかった。」

『早く訊き出してくるんだ!!』

Uに一喝されて、侑は地下迷路を後にした。







その翌日、事件のこともあり合宿は僅か一日で切り上げられた。

それから夏休みが終わるまで侑は真澄のことについて調べたが、野球部のメンバーと僅かな知り合いしかツテがなく捜査は難航した。

だけど矢野から、こんな証言を聞いた。

「誰にも言っていないんだけど・・・。実はあの合宿の直前、源田先生に合宿のことを電話で話したんだよ・・・。それで「真澄も行くのか?」とか「どこでやるのか?」って訊いてきて、答えたら即電話を切られたよ。」

つまり源田先生が、あの合宿を知っていたということだ。

「でも、どうして源田先生は合宿のことを訊いてきたんだろう?」

その日、侑は源田先生に質問した。

「ああ、野球部の間で噂になっていたんだ、一部の生徒が合宿を計画しているって。それで矢野に電話で聞いたんだ。それだけだよ」

源田先生はそれだけしか言わなかった。



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