第21話執事殺害事件(3)
執事室にて何か事件の手がかりを探していた侑だったが、ダンボールを開けようとした時に、田辺から声をかけられた。
しかしそこにはいつもの田辺はなく、ナイフの刃先を侑に向けている凶悪な田辺の姿があった。
「田辺さん・・?」
「まさか、侑くんが嗅ぎ回っていたとは思わんかった。最初はガキの遊びかと思ったが、これに気づかれたらそうはいかない。油断禁物やな。」
そして田辺は侑を捕まえようと走り出した、しかし侑はとっさに避けて執事室から逃げ出した。
田辺は転んでしまい、しばらく動けない。
その隙に侑は電話のところへと向かい、110当番通報をした。
「あっ!?やめろーっ!!」
通報に気づいた田辺が、ナイフを振りかざして侑へと突進した。
侑が気づいた時には、田辺が目前に迫っていた。
侑に向かってナイフの刃先が光る、侑は目を閉じた。
そして目を開けると、侑は生存していた。しかし上条が左足から血を流して倒れていた。
「上条さん!!」
「侑様・・・。無事でなりよりです。」
「あれ!?田辺はどこだ?」
侑は辺りを見回したが、田辺の姿はどこにもない。
しかし今はそれどころじゃない、上条を助け出さなくては。
侑は上条を助けるために、今度は119番通報をした。
翌日、侑は病院へ上条のお見舞いへとやってきた。
「上条さん、大丈夫?」
「ああ、太ももを刺された時は危なかったけど、何とか生きて帰ってこれたよ。」
「よかった、また家にいてくれる?」
「ああ、でもまさか田辺が犯人だったなんてね・・・。」
侑が警察と救急車を呼んでから、警察は田辺に疑惑の目をむけて捜査を始めた。
そして田辺は、逃走してから五時間後に警察に連行されていった。
そして警察の取り調べで、蓮実を殺したことを自白し、殺人容疑で逮捕となった。
蓮実を殺した動機は、不法な利益の独占。その不法な利益というのは、侑の屋敷にあった骨董品を売却していたということだ。
田辺は屋敷を調べあげて、盗み出す時間やルートを計画し、協力者として蓮実を引き入れた。
しかし蓮実は借金を抱えており、田辺が提示した分け前では足りないと言い、二人はそれで揉めていた。
結果的に蓮実の要求を飲んだ田辺だが、それは口約束に過ぎず、後で蓮実を殺して利益を独占するつもりでいた。
そして骨董品を売却し、屋敷の駐車場に戻ってきたところで、田辺は蓮実の不意をつき、持っていたベルトで蓮見の首を絞めて殺害。
それから蓮実の遺体を屋敷の物置まで引きずると、蓮実の頭をハンマーで殴って撲殺を偽装した。
「それにしても、まさか屋敷の骨董品が知らないうちに売られていたとはねえ・・・。今は売られてしまった骨董品を取り返すために、重雄さまが奔走なさっている。私も傷を治したら、協力しなければならないな。」
「うん、とにかく事件が解決してよかったよ。」
「あの、侑様。質問してもいいですか?」
「いいよ、どうしたの上条さん?」
「侑様はいつから田辺が怪しいと思っていたのですか?以前から、屋敷の中をやけにせわしなく動いていらっしゃいましたが。」
上条に言われて、侑はあわてふためいた。
「えっ!?あの・・・、ぼくも事件を解決したくて・・・」
「侑様・・・、お気持ちはわかりますが、危ないことはなさらないでください。」
上条に注意され、侑は何も言えなかった。上条が助けてくれなかったら、侑が入院していることになったからだ。
侑は病室から出ると、ふと思った。
「はじめての事件だったけど、ぼくとしてはよくできたと思う。でも上条さんに見つかるようでは、ぼくもまだまだだな。」
侑は屋敷へと戻っていった。
そしてその日の真夜中、侑は地下迷路の入り口を開けて、Uの待つ部屋へとやってきた。
『侑、事件の方はどうなった?』
「解決したよ、犯人は田辺だった。」
『そうか・・・、侑はどこまでいけた?』
「田辺が怪しいと思うとこまではいけたけど、途中で襲われてしまったんだ。」
『そうか、口封じされそうになったか。だが犯人に近づくことができただけでも上出来だ。しかし、探偵というものは完全に犯人を追い詰められないと、ダメだぞ。』
「うん、そうだよね。」
『よし、それじゃあそんな侑には、これをあげよう。』
そう言うとUは、本棚の中から一冊の古い本のようなものを持ってくると、Uに手渡した。
「これは何?」
『これは私が作った事件の調査を記録したものだ。これを見て、実際の事件の内容を知って探偵の練習をするといい』
侑が一枚ずつめくると、そこには古い言葉と黄ばんだ紙で何が書いてあるのかよくわからなかった。
「こんなので探偵の練習になるのかなあ?」
『なるとも、それじゃあまたな。』
そして侑はUから渡されたファイルを持って、地下迷路を後にした。
翌日、学校から帰って来た侑は、Uから貰ったファイルを読み始めた。
昔の言葉も含まれるこの文章は、侑が自ら辞書などで調べて、読みやすく書き直した。
そして侑は事件の調査記録を読んで、まるでミステリーを読んでいるかのような気分になった。
「ぼくもこんな事件を解決してみたいな。」
侑の心に探偵への興味が芽生えた。
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