第16話学校からの悪夢

ついに侑も小学校を卒業し、この春あらたに中学生になった。

「侑、すっかり大きくなったなあ・・」

「本当ね、引き取られてきた時はまだ小さかったのに。」

重雄と百合絵は自分達の身長に近づいてきた侑を見て、しみじみ感じた。

「それじゃあ、行ってきます!」

侑は屋敷を出て、新しく通う中学校へと向かった。

これから新しい学校で、新しい生活が始まる。侑は胸いっぱいの希望に満ちていた。

そして中学校に行った侑は、新しいクラスと担任と教科書で、これまでにない学校生活を送る・・・はずだった。

学校に来てから三日後、侑は中学校の先輩・速水はやみサクヤに目をつけられて、絡まれるようになってしまった。

「おい、侑。お前ん家、立派なお屋敷だそうだな?」

「うん・・・、もしかして近所?」

「ああ、お前んちから歩いて十分のところに俺の家はある。だからご近所どうし、仲良くしようぜ。」

速水の取り巻きたちも、侑を見てペコペコと頭を下げている。

「いいよ、これからよろしくね。」

「ああ、よろしく!」

侑と速水は握手をした。

しかし速水はそれから廊下に出ると、顔をニヤリとさせ悪い笑みを浮かべた。

「これで金が手に入るぜ・・・」

速水は初めから、侑の家の金が目当てだったのだ。

しかしそのことを全く知らない侑は、翌日速水たちのところへとやってきた。

そして速水は侑に向かって、こう言った。

「なあ、明日一万円持ってきてくれないか?ちょっと遊びに行くからよ。」

「一万円・・・。ごめんなさい、ぼくはそんなにお小遣いを持っていないんだ。」

「あ?なに言っているんだよ!」

速水の声が突然荒々しくなった、侑の体はビックと震えた。

「お前んち金持ちだろ?一万円くらい、どうということないよな〜?」

「そうだ、そうだ!」

「持ってこいよ〜!」

速水の仲間たちも侑に詰め寄る。

侑は恐怖と混乱で何もできずに固まってしまった。

「いいか!!明日、必ず持ってこいよ!!」

速水たちはそう言うと立ち去って言った。

「どうしよう・・・、一万円なんて簡単には用意できないよ・・・。」

侑はそれから学校から家に帰るまで、どうしたらいいのか考えたが、答えは出なかった。

やっぱり、断るべきか・・・。いや、それでは酷い目に遭うことが確定してしまう。

やはり一万円を用意しよう・・・、でも親に頼むとなると理由が必要だ。

何かまともな理由はないか・・・?

「あっ、そうだ!」

侑は家に帰ると、百合絵に話があると言った。

「侑、話ってなんなの?」

「実は、百科辞典が欲しいんだ。でもお小遣いが足りなくて・・・、一万円があればいいんだ。用意してください。」

侑はうそをつくことに抵抗を感じながらも、百合絵に頼みこんだ。

「・・・わかったわ、夕ご飯が終わったら渡してあげる。」

百合絵は何も疑わずに了承した、そして夕ご飯が終わると百合絵は侑に一万円を渡した。

「大切に使うのよ。」

侑は胸が痛む思いで一万円をもらった。

「はぁ・・・、何とか一万円を手に入れたけど・・・」

正直、百合絵から一万円を貰い続けるのは不可能だ。

一万円を貰い続ける理由もそう思いつかない、一体どうすればいいんだ?

侑は部屋に戻り、貰った一万円をヒラヒラさせながら途方に暮れた。








そしてその日の夜、侑は目が覚めるとまたUからの封筒を手に取った。

しかし今回の封筒には、一枚の手紙が中に入っているだけで、その手紙にはこんな文章が書かれていた。

『今夜、我が部屋にて待つ。そなたの悩みを解決する手助けをしてやる。』

Uがぼくの悩みを解決しれくれる・・・?

侑は今一つ信じられなかった、でも気にはなったのでUのところへ向かうことにした。

地下迷路の入り口に着くと、まるで侑が着くのを予期していたかのように、扉があいていた。

侑は地下迷路を進み、奥にある扉を開けてUの待つ部屋へとついた。

『やあ、来てくれたんだね侑。』

「うん、どうして僕の悩みがわかったの?」

『お前は母から一万円を貰ったのに、どこか浮かない表情をしていた。それが我の疑問だ、答えてはくれないか?』

「・・・実はね」

侑は中学校であった出来事をUに話した。

『ほう、侑の学校にもそんな奴がいたとはなあ・・・。これはどうにかしないといけないなあ。』

「うん、お父さんとお母さんに言おうと思ったけど、心配かけたくないし・・・。」

『ほぉ、嘘ついて金を取った割にはいい心がけをしてるじゃないか。』

Uに指摘されて、侑はウッとなった。

『まあ、それはさておいて速水とその仲間から侑を引き離さないといけない。そのための考えはある。』

「本当!?」

『ああ、侑には速水たちを家に連れて行くだけでいい。後は全て、私に任せるがいい。』

「うん・・・、わかったよ」

侑にはUが何をしようとしているのか直ぐに分かったが、Uに任せれば取りあえず大丈夫だろと思った。

そして侑は地下迷路から出て、再び就寝に着いた。










『侑にあんなことをさせるなんて・・・、そんなやつらには恐怖の地下迷路でお仕置きしてくれるわ。』

Uはそれから、速水たちに対してどんな恐怖を与えるのか、怒りを力に考えた。

そして翌日、Uによる戦慄の地下迷路ショーが始まるのだった。


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