第9話高宮救出隊

侑の家に泊りに行った高宮が行方不明になったことは、すぐに高宮の両親のところに伝わった。

侑は重雄と百合絵と一緒に、高宮の両親と向かい合うソファーに座っていた。

「あの、徳次がいなくなったって本当ですか!」

「ええ・・・、夕食の時間になったのに呼んでも捜しても、姿が見えなくて・・・。」

「どうしてくれるのよ!!そもそも、お宅たちがちゃんと見ていないから、徳次がいなくなったんじゃない!!」

「はい、本当に申し訳ありません・・。」

「申し訳ありませんですむなら、警察は必要ないわよ!!こんなことなら、お泊まり会なんて止めさせるべきだったわ・・・。」

高宮の母親は眉間にシワをよせながら後悔した。

「落ち着くんだ、起きてしまったことは仕方ない。幸い、徳次は外に出ていないようだから、まだこの中にいるに違いない。」

高宮の父親が母親をなだめた。

「でも、ここはお屋敷よ。いくら迷うとはいえ、ここに住んでいる誰かが発見することは可能よ。なのに、いくら捜しても見つからないなんておかしいわ。」

「もしかして、徳次くんはあそこに・・!」

重雄の脳裏に地下迷路が思い浮かんだ。

重雄の言葉を聞き逃さなかった高宮の母親は、重雄を問い詰めた。

「あそこって、どこのことですか?」

「・・・この屋敷の地下迷路のことです。」

「地下迷路ですって・・・。」

徳次の母親は目を大きく見開いて驚いた。

「普段は人に言わないことなのですが、この屋敷には地下迷路があるんです・・・。そこに迷い混むと、脱出するのは不可能だと昔からの言い伝えで言われています。」

「そんな、バカバカしい言い伝えが信じられますか?」

「地下迷路・・・、そういえば!」

高宮の父親が何か思い出した。

「出かける前に、荷物の準備をしている徳次を見たんだが、『明日は地下迷路を探険だ!』とか言っていたんだよ。気分がよくて変なこと言っただけだと思っていたが、そういうことだったのか・・・。」

「それ、本当なの?」

侑が高宮の父に質問した。

「侑、何か知っているのか?」

「ぼく、高宮くんから地下迷路を探険しようと誘われたんだ。止めろと言って解ってくれたと思っていたけど・・・」

「そんな・・・、それじゃあ徳次は自分の意思で地下迷路に・・・。」

高宮の母親はあまりのショックに、ヘナヘナと座り込んだ。

「ぼく、高宮くんを助けに行きます!」

侑は大声で重雄と百合絵と高宮の両親に宣言した。そして侑はズボンのポケットから、あの封筒と地下迷路の扉の鍵を取り出した。

「侑、それは危険だ!やめなさい!」

重雄が厳しい声で言った。

「でも、高宮くんをほっとけないよ!それとも父さんが、あの地下迷路に入ってくれるの?」

侑の質問に重雄は一瞬黙り込んだ、そして侑に言った。

「気持ちは解るが、あの地下迷路は危険なんだ。だれか一緒についてきてくれないと心配だ。」

「それなら私が付き添います、あなたはあの地下迷路に入ったことがあるよね?」

高宮の母親が侑に言った。

「うん、二回入ったことがあるから、大丈夫だよ。」

本音は不安な侑だが、高宮くんを助けるためにもそうは言っていられない。

こうして侑と高宮の母親と上条が地下迷路へと侵入し、高宮を救出しに向かった。

懐中電灯を持った侑を先頭に、高宮の母親と上条が後に続く。

「この地下迷路、いつからあるの?」

「そうですね・・・、聞いた話しではこの屋敷が建った頃だと言われています。しかしその時は、いわく付きの出来事なんてものはなかったそうです。」

「そうなの・・・、こんなところに一人ではいさせられないわ。早く助けださないと!」

侑は後で高宮の母親と上条が話しているのを聞いた、そして奥の扉を開けるとUのいる部屋へと到着した。

『よく来たね、侑・・・。今日はお客様が一緒だね。』

「うん、君が連れ去った高宮くんを心配して来たんだ。」

「あ、あなたは何者よ!徳次をどこへやったのよ!!」

高宮の母親が震えながら、Uに向かって叫んだ。

『おやおや、どうやらあの子の母親のようですね。今、あの子を連れてきますよ。』

Uは以外にもすんなり徳次を連れてきた、徳次はやはり恐怖によって青い顔でブルブル震えている。

「こわい、こわい、こわい・・・。」

「徳次ーっ!」

『おっと、徳次くんを返してほしければ、あなたには謎の人質になってもらいますよ。』

Uが高宮の母親に言った。

「それはどういう意味なの?」

『元々、私は侑に出す謎の「景品」として徳次くんを連れ去りました。ですが正直なところ誰でもいいので、代わりにあなたに「景品」になってもらうことにしたのです。』

「私が、徳次の代わりに・・・」

『まあ、母親なら答えは見えているでしょう・・・』

Uはクスクス笑いながら、徳次の母親を見た。侑は嫌なものを見る顔になった。

「な・・・、そんなこと認められる訳がないだろ!」

『それはこっちのセリフですよ、部外者が口を出すな!!』

Uは上条に怒鳴りだした。

「わかりました・・・、徳次のためなら仕方ないわ。」

「高宮様、危険です!ここは、応援を呼びに行きましょう!」

「止めないで、徳次の命には変えられないのよ!」

『覚悟は決まっているようですね、それでは徳次くんを返しましょう。』

そしてUは高宮くんを返して、高宮の母親を人質とした。

「侑・・・、こわかったよーっ!」

高宮くんは侑の中で泣きだした、侑はUを怒りの目で見つめた。









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