愛を知らない殺し屋と愛を失った碧眼少女~転生して得たのは最弱のFランクスキル【愛】だった。最強の殺し屋は、少女のために異世界を蹂躙する~

いとうヒンジ

プロローグ



 人間、生きていれば自分の人生を振り返るタイミングがある。


 例えば卒業。

 例えば就職。

 例えば恋人との別れ。

 例えば親しい人の死。


 自分の生き方は正しいのか、このままでいいのか、なぜ生きているのか、生きる価値はあるのか。

 立ち止まり振り返る時が、必ずある。


 そして俺――しき創二そうじにも、その時は存在した。


 ただ、それが俺に訪れたのは一般的とは言えないタイミングだろう――少なくとも、先ほど例に出したどのタイミングでもない。


 自分が特別だと言うもりは更々ないが。


 しかし広く凡庸な人物だと言ってしまうと、それは逆に清く正しく生きている一般市民を敵に回すことになってしまうのも事実だ。


 だって、俺は人殺しだから。


 人を殺すために生まれて、人を殺すために育てられて、人を殺すために生きていたから。


 殺し屋一族、式家。

 古くから時の権力者の懐刀として、その力を陰で振るってきた殺し屋一族。

 その長の息子として産まれた俺は、人を殺すだけの武器になるしかなかった。


 時には刀。

 時には銃。

 時には己が拳。


 十八年――式創二の人生は、人殺しのためだけに存在していた。


 けれど、今となってはもう、どうでもいいことだった。


 なぜなら俺は、あの日。


 美しい碧い瞳の少女を殺してしまった、あの日を境に。

 自分の人生を振り返り。


 そして、自殺したのだから。



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