第24話 おいでませ!アルディオスの森へ!!天国と地獄編5
時間は少し遡るっす。
私等、ハンター組は何組かのチームに分けられて、バーゼル帝国の探索部隊に組み込まれる事になったんっす。
ん?ハンターのお仕事?
主に魔獣や犯罪を犯した賞金首の討伐、又は捕獲を生業としている戦闘のプロっすね。
ソロで活動する人もいれば、私みたいに数人の気の合う仲間とチームを組んで活動したり、まぁ色々っす。
話が逸れたっすね。
私等のチームはハンターの世界ではちょっとした有名人でしてね。
ある組織の依頼で、この森に侵入しなきゃならん事になったっす。
私等は悩んだっす。依頼主はとってもヤバい組織っす。断るっていう選択肢は取れず、かといって悪名高いアルディオスの森へ足を踏み入れる決心も付かなかったっす……。
そんな板挟みの状態で、バーゼル帝国がとんでもない報酬額でハンターの募集を募ったっすよ。
普段なら二の足を踏む様な依頼も、べらぼうな報酬額に目の眩んだ多くのハンター達が群がったっす。
当然、私等もこの依頼に食い付いたっす。
べらぼうな報酬額の為じゃないっすよ?バーゼル帝国が大軍をもってあの森に侵攻すると布告したからっす。
万を超える人間の侵攻で、森は必ず混乱の極みに陥る筈。
私等は、その混乱に乗じて依頼を遂行しようという、火事場泥棒的な作戦に打って出たんっす。
まぁ〜、結果は目を覆いたくなる酷い有り様になってしまったっす。
私等は、このアルディオスの森を甘く見過ぎていたんっすよーー
「なんなんすかこの森はっ!?魔獣どころか見た事もない化け物が地面から現れるなんて聞いてないっすよ!私、お
「ギャーギャー。うるせぇぞ、キキ!お前の声は頭の芯に響くんだよ!黙ってろ!つっ〜〜。頭が痛てぇ………」
「そりゃぁ前日にあれだけ酒をかっ喰らえば頭痛もするじゃろ。相変わらず阿呆じゃの。ドグラよ」
喧しく騒ぐ三人のハンターの周りには、焦燥しきったバーゼル兵達と異形の化け物の骸が十体あった。
人間の形によく似たソレは、赤黒い皮膚をした複腕、複眼の巨体で、何処かしら体の部位を欠損させて地に倒れ伏している。
探索部隊を指揮する隊長と思われる男が、ハンター達の元へと歩み寄る。
「あんた等のお陰で、多くの部下が救われた」
武人然とした厳つい男が、三人に対し深々と頭を下げると、直ぐさま顔を上げ破顔した。
「いや〜。俺達は運が良い!あんた等みたいな凄腕のハンターが、俺達の部隊に割り振らていた事を神に感謝せねばな!」
「いやいや。私等だけじゃ危なかったっすよ!隊長さん達の働きがあったこそ、あの化け物達を退治する事が出来たっす!」
黒衣を纏ったキキと呼ばれた女が、謙遜しながらそんな事を言うと隊長は苦笑いを浮かべた。
「はははっ。まぁ、そう言う事にしておこう。……しかし、あの少年の力には正直驚かされたぞ」
隊長は横目で彼女等のもう一人の仲間である少年を見やる。
赤いマントをなびかせ、ブツブツと何事かを呟きながら可笑しなポーズで気取る美少年。
栗色の髪に青い瞳。まだ、
幼い体で、あの化け物相手に大立ち回りを始め、十体中五体をあの子が斬り殺してしまったのだから。
「あの子はちょっと特別なんっす!なにせ、今代の勇ーーっもがぁ!?」
「お前、何を口走ろうとしてやがる!アホかっ!!」
背後からキキに抱き着き、口元を手で塞いだモヒカン頭のおっさんが、酒焼けした声で怒鳴りつける。
キキは顔を捩じらせる事でおっさんの手から逃れた。
「ぷはぁ!ドグラのおっさん、酒くせぇっす!!私から離れるっすよ!」
「いや、そうしたいんだがな……。ぐへへっ。お前、やっぱいい体してやがるな〜〜」
「うおぉぉぉぉぉ!?ぶっ殺すぞ!!エロオヤジ!!」
乙女の体を弄られたキキは、ドグラを地面に投げ捨て、殴る蹴るの暴行を加える。
そんな二人の姿に、慌てて止めに入ろうとする隊長だったが、彼等のもう一人の仲間である老人に静止されてしまう。
「良い。良い。あの二人のじゃれ合いは何時もの事じゃて。それよりも隊長殿。そろそろこの場から離れて、一旦本隊に合流し仕切り直さんか?この森はやはり一筋縄ではいかんようじゃしな」
「あ、ああ。それは俺も考えていた事だ。あんな見た事もない化け物が現れるんだ。一度本隊に戻って報告もしなきゃならんと思っていた」
「ふむ。では、早々に行動に移った方が懸命じゃろう」
「ぐわああああああああぁぁぁぁっっ!?」
突如、少年が蹲り片手で顔を覆いながら、声を上げた。
「くッ!僕の中で封印された邪龍が怯えているっ!?鎮まれっ!ルナティックカオスロードダークネス!僕は世界を壊したくは無いんだっっ!!」
「あん?ル、ルナ、何だって?あの子、いきなりどうしたんだ?」
「気にせんで良い。……ちょっとした持病の発作じゃ」
不憫で憐れむ様な眼差しを向ける老人に、少年は頰に一筋の汗を垂らしながら深刻そうな表情で告げる。
「ラムザ爺ちゃん、ヤバい奴が近付いて来てる……」
それは、カタカタと耳障りな音を鳴らしながら、不気味な笑顔を携えてやって来た。
ずんぐりむっくりと太った、血に塗れたメイド姿の眼鏡女。
脂肪によって細められた目の奥は、ドス黒い殺意に満ち満ちていた。
「デュフフフフ。魔ノ者が殺されている。侵入者の中にも出来る奴がいるみたい。良い人形の素材になりそう」
四人のハンター達はペロリアの存在を視認するや否や、直ぐさまそれぞれの持つ得物を構え戦闘態勢に入った。
数々の修羅場を掻い潜った彼等の生存本能が最大限の警鐘を鳴らす。
「何すか、このヤバいメイドさんは……」
「知るか……。どうすんだよ?アレはやべぇぞ……。逃げるか?」
「無理じゃな。背を見せれば即座に喰われるぞ」
少年は、自分の納得がいくキメポーズを何度も取りながら、体を踊らせる。
「出来る事は一つだけだよ。僕の中に封印された邪龍の力を今解き放ち、悪を討ち亡ぼす!!」
緊迫する状況の中、少年の仲間達は憐れんだ目付きで彼を見つめると、思考を一致させた。
『おめぇにそんな力はねぇ』だろうとーー
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