勇者の守護者~誰かの為に出来る事~

Dr.醤油煎餅

プロローグ

第0話 ある兵士の死


「はっ!…はっ、はっ!」


 一人の軍人は、二人の民間人を抱え街中を走っていた。それを追うのは、いくつもの軍人、戦車、直立戦車、戦闘ヘリ。追われているのは、日本国防軍の軍人、東郷とうごうりょう。彼はある部隊を任されている隊長で、今は少し事情があって一人で、二人の人間を抱えて逃げ続けていた。


 この世界は、数年前、途轍もない災害が起こった。その災害は、突然に起こった。天は轟き、大地は裂け、海は荒ぶる。人類が未だに経験したことのない未曽有の災害が、世界を巻き込んで、人類の進歩を、遺産を、破壊して起こった。それは沢山の人間の、沢山の大切なものを壊して踏み躙った。

 それでも、その災害はただ壊してきたわけじゃない、与えたものはあった。その一つが超能力だった。災害発生以前は、空想の産物だったが。災害発生後、人の思念が現実に伝わりやすくなった。その影響で資質も関係あるが、何人かの人間は脳を少し弄るとより強力になって事象が変更出来るようになった。それが超能力と言われ、各国で国力復活の為に熱心に研究され始めた。その結果、各国が物資を奪うために戦争を仕掛け始め、今は日本も戦争を仕掛けられて攻撃されている。

 現在日本には実験で生まれた超能力者は五十四人存在する。亮はその中の一人だ、超能力者の人間で構成された六部隊の内の一つの隊長を務めている。


 それはさておき、亮は、今、逃げている。戦えないことは無いのかもしれないが、数が桁違いだ、それに民間人も抱えている、戦うのは無謀である。

 しかし逃げるのにも限界はある、だから亮も腹を括った。民間人二人を建物の影に隠して、敵軍の前に出てきた。

 亮の得物は刀。普通は鼻で笑われる武器であろうが、振える者が振えば、立派な兵器にもなる。

 亮は突っ込んでいく、その速度は人間が鍛えて出せるような速度ではない。亮の超能力は念動力。自身が認識できる場所に力場を発生させ、そこに力を加える。それが亮の使える力である。

 亮の速度に敵軍に動揺はなかったが、対応できるわけでは無い。亮は自身を超能力で後押しして、速度を上げて敵地に切り込む。前方にいた複数人の軍人が盾を構えていたが、気にせず切り裂く。まるで果物を切ったかのように、スパッと上下に分断される。他の軍人は戦車に取り付けられた小銃を構え、亮に向けて撃ち始める。普通なら全身ハチの巣だが、亮は念動力を操って壁を作る。

 亮は止まらない、壁を作って防いでいる間に刀を構え、念動力で力場の刀身を作り、そのまま振う。その斬撃は誰も阻めない。戦車も先程の軍人たちと同じように上下に分断される。亮は両断した戦車を踏み台にして上に飛ぶその先には何機もの攻撃ヘリ。

 ヘリからの風圧がすごいが、超能力で体を押すことで風圧に負けない様に対抗している。そのまま突撃してヘリ内部に入り込む。中に入っていた兵士たちは小銃を構えて亮を迎え撃とうとするが、亮の振った刀が小銃ごと内部の人間を切り裂く。

 他のヘリや戦車達は、亮の乗っている攻撃ヘリに砲撃や銃撃を浴びせようと照準を合わせる。それを察知したのかしてないのか、外へ飛び出し他のヘリに飛び移る。飛び乗られたヘリは、振り落とそうとするが亮に刀を振り下ろされ左右に分断される。そのまま上空に留まっている間に刀身を伸ばして真横に薙ぐ。そのまま戦闘ヘリ全機を切り捨てる。それだけではない念動力で刀身を伸ばしただけではなく、大小大きさの異なる力場を発生させ、上空から撃ち下ろし兵士と戦車に分けて上から圧し潰す。何人か生き残ったが、これなら逃げられそうだ。


 建物の影に隠していた、民間人を回収する為に来た道を戻っていく。建物の影には二人の少女がいた。一人は足に怪我を負っていて、動くのは辛そうだった。少女達は亮が来たら、表情に希望が戻る。パアァと明るい表情になって、怪我をしていない方が近づいてくる。


「大丈夫だったかい?」

「は、はい。お、お陰様で、怪我はないです」


 亮が声をかけると、緊張気味に大丈夫であると告げる少女。

 さっさとここから移動する為に、少女達を抱える。

 すると周りに何人もの人間が突然現れて、囲われてしまう。現れた瞬間に銃撃を始め、亮の体に穴が開いていく。少女達の体も貫かれ、直ぐに絶命してしまう。亮の体も限界だった。

 だが、最後の力を振り絞り、この辺り一帯を捻じ伏せようと念動力を発生させる力場の壁が展開されて、四方に巨大化しながら圧し潰して辺り一帯を破壊して突き進む。

 その後には、亮の死体だけが立って残っていた。その表情は、周囲の者が恐怖する位、怒りに満ちていた。

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