第28話アムカムの夏休み その1

 ラヴィと言う名前は、今迄にも何度か耳にしていた。


 初めてわたしを見た人の何人かが、咄嗟に口にしていたのだ。

 初めはそれ程気にしていなかったが、何人もそんな人が出てくると流石に気になる。



 ライダーさんには、この際聞いてしまおう、と軽い気持ちで尋ねたのだけれど……。

 まさか、あんなに辛そうなお顔を見せられるとは、思ってもいなかった。


 この案件は、気軽に顔を突っ込んで良い物ではなさそうだ。

 気にならないと言えば嘘になるが、わたしの想像が正しければ、わたしが知ろうとする事で、ソニアママと、ハワードパパの二人を悲しませてしまう事になるかもしれない……。そんな事なら無理に知る必要は無い。


 これからは静かに成り行きに任せよう。いつか自然と知る時が来たなら、知ればいい事なのだ。いや、そんな時が来なくても、別に良いのだ。お二人が辛い思いをする事さえ無いのなら……。

 これからは、決して自分からアクションは起こさない様にしようと思う。






 あの合同手合せの翌日、卒業式も無事終わり、わたし達もそのまま夏休みに入った。


 修練場で手合せをした後、ソニアママに修練場で使うトレーニングウェア的な物が無いか聞いたら、ゆったりとしたパンツと、Vネックのシャツを出してくれた。


 夏休みに入ってから毎朝、コレを着て村の中をランニングしている。

 走ると言うのはボディーコントロールをする為の基本だからね。

 地を足で蹴る強弱を付けながら、程よい力加減を体に染みつかせようと思う。


 後、コースを森の脇の道に取っているので、毎朝森の中の気配を探る事も忘れていない。



 ランニングから帰って来ると、家の庭ではいつもハワードさんが剣の鍛練をしている。


 型を一つずつ確かめる様に、時にはゆっくりと、時には速く、静かな呼吸で剣を操っている。


 わたしとしては、正式な剣の使い方を習った事が無いので、ハワードさんにこの機会に教えて欲しいとお願いしたのだが……。


「スージィは、ワシなどよりも遥か高みの剣筋を操っている。ワシに教えられる事など、何も無いよ」

「でも・・・わたし・・・ならったことない・・・です・・・からだうごく・・・ままけんつかって・・・いるだけ・・・、です」

「ならば尚の事だ。我々が目指す物は、人にも剣にも世界にも、無理を与えず素直に振るう剣なのだから。既にその域にあるスージィの剣に、ワシの振るう道半ばの剣など教えては、折角の剣筋を乱してしまう」


 そう言ってハワードさんから、剣の指導をして貰う事を断られてしまった。

 しかし、だからと言ってハワードさんの鍛練を見ていてはイケナイ事にはならない!

 なので毎朝ランニングから帰ってシャワーを浴びた後、わたしは大人しくハワードパパの鍛練を眺めているのです!


 ハワードさんの剣技は力強くしなやかだ。


 剣を振るたび、その身を踏み込むたび、全身の筋肉が緊張し躍動する。

 滴る汗が振り飛ばされ、身体から出る湯気が身体の動きに巻かれて、蜃気楼の様に散って行く。

 力強い太刀筋は剣閃を残し朝日を映し出し、幾条もの光の筋をハワードさんの周りに浮かび上がらせていた。


 ハワードさんの剣技は、格好良くてとっても綺麗だ。

 わたしは、静かにそれを見ている時間が大好きになった。

 鍛練が終わったハワードパパにタオルを渡すのも、わたしの大事な役目だ。


 タオルを渡すとハワードさんは、それはそれは嬉しそうにタオルを受け取ってくれる。

 その顔を見るとわたしも凄く幸せになる。


 その幸せな気持ちのまま、ハワードさんは朝のシャワーへ、わたしは朝食の準備へと向かっていく。

 これがクラウド家の朝の一時ひとときだ。




 朝食の後は、屋敷のお掃除と洗濯のお時間だ。


 掃除は掃いて拭いて磨いて、と基本的な作業なのだが、今までは二階をエルローズさん、一階をソニアさんが担当していた。

 階段の昇り降りで、ソニアママの脚に負担が掛からない様にね。


 わたしがいる今は、わたしが階段周りを中心に一階も二階もやらせて貰ってる。


 何分、若いんで!動き回れるんで!!


 でも速さに任せて掃き残し、拭き残しがあったりすると、エルローズさんの厳しいチェックに引っかかってしまうのですが……あぅっ!


 お洗濯もそう!当たり前の様に洗濯機など無いので、全て手洗い!

 力を入れ過ぎては生地が傷む、抜きすぎては汚れが落ちない、何度もやり直しをさせられるのです。

 エルローズさんはイメージ違えたがえず、やっぱりスパルタな人でしたっ!


 朝食後の凡そ二時間程、厳しいご指導の下こうして毎日家事の手伝いに費やしているのです。

 ふっふっふっ!日々確実に女子力が上がっているのを感じるザマスよっ!





 この夏休みが始まってから、家事の手伝いをした後は、ほぼ毎日の様に神殿に通っている。

 神殿では、わたしに最も不足している、この国での慣習や社会的常識を中心に教えを頂いている。


 神殿では、ミアやビビと一緒する事が多い。

 二人とも神殿に、魔法の勉強をしに来ているのだ。


 この二人とは夏休みの間も、ほぼ毎日会っていると思う。

 午前中は神殿で、午後も空いて居る時は大体一緒に居る事が多い。

 ミアとの一緒率が圧倒的に多いけど……、あれ?ひょっとして会って無い日、無いかもしんない……。

 神殿にはデイジー先生もいらっしゃるので、文字の読み書きも併せて教えて貰えて大変ありがたい。



 おかげで色々と、この国に対しての知識が増えてきた。


 まず日付や時間。

 今は辰星歴しんせいれき2418年4の蒼月あおつき

 1年は365日でひと月は30日と31日、1の月のあおあかが交互に6の月まである。


 要するに1年は12ヶ月。

 一週間は7日。

 1日は24時間。

 ほぼ現代日本と一緒。


 因みに、何故あおあかの月があるかと言うと……、この星を周っている衛星は二つ。青い月と赤い月があるのだ。

 これが連星の様に、お互いを周り合いながらこの星を周っているのだそうだ。


 つまり、一月ごとにあおあかの月の位置が、手前と奥とに交互に入れ替わっているからだ。

 赤い月は青い月より少し小さいので、赤い月が手前に来ても青い月の輪郭は見えるのだそうだ。

 だから蒼月あおつきの時は、日付が一日多いと言う話だ。



 それで実はつい先日、赤の月が手前で二つの月が重なり、更にそのまま皆既月食まで起きたそうだ。

 つまり太陽とこの星と二つの月が一直線に重なると言う、百数十年に一回の稀な天体ショーが起きたばかりなのだそうだ。


 ん~~!何か惜しい事をしたなぁ……と。

 見られなかった事が、凄く損した気分になりますた!




 で、この国での通貨だが、最小単位はc(クプル)と言う。


 硬貨は1cクプル、5cクプル、10cクプル、25cクプルの銅貨コイン。

 50cクプル、100cクプル、250cクプル、500cクプルの銀貨コイン。


 1000クプルからは1a(アウル)と呼ばれる単位が使われる。

 この1aアウルは金貨1枚の単価だ。


 アウル金貨は1aアウル、5aアウル、50aアウルの三種類。

 それ以外に、10aアウルと100aアウルの2種類のアウローラ紙幣、つまりお札がある。


 コインの大きさ厚さは、価値が上がる程大きく厚くなっていくので触ればまず判る。

 50アウルなどは結構なサイズになるので、わたしの手では握り込む事が出来ない程大きい。


 因みに、クプルが国の最小単位とは言ったが、実はクプル銅貨の下には更にスタンと呼ばれる鉄貨てっかも流通している。

 これは100sスタンで1cクプルなのだそうだ。大体は、子供のお小遣いみたいな物で主に使われてるっぽい。

 クプル銅貨から上の貨幣は国が発行しているのだけれど、鉄貨てっかはそれぞれ自治体が作っているのだそうだ。だから他所の土地では使えないんだとか。


 通貨価値としては、1アウルで日本の壱萬円くらいなのかな?あくまで自分の感覚的なものだけど……。

 でも、ウチのクラウド家が、11aアウルもあれば、一ヶ月生活するのに十分。と言っていたから、あんまり現代日本の価値基準には当てはまらない気もするね。



 余談だが、アムカムでは狩り取った魔獣の毛皮や骨の素材は村で買い取ってくれる。

 村ではそれを加工販売して、護民団の運営費に補填しているそうだ。


 この前わたしとハワードさんで狩ったボアとウルフは中々見ない中層の深い所からの魔獣なので、買い取り額も高価になり、ボア一体で17~8aアウルになったそうだ。

 やっぱ蛇皮は高いのねっ!


 ウルフの皮も無傷な物は珍しくて、一体12~3aアウルになったと言われた。


 結局、両断したウルフと合わせて100aアウルあまりを、「君の分だ」とハワードさんから渡されて固まってしまった。


 貰い過ぎだと言ったのだが、これが王都で売られればこの10倍以上で取引されるのだから貰い過ぎなんて事は無い。と笑われたが、そんな問題じゃない!


 お世話になるんだから、ハワードさんに貰ってもらわないと困る!

 生活の面倒見るのは保護者の特権でもあるのだから、子供が心配する事では無い。


 などなど、すったもんだがあったのだけれど。

 結局わたしの学費に使用し、それ以外は成人するまで貯金してハワードさんが預かると云う事に落ち着いた。


 学校へ行く前に買った服の代金とかは、ココから取って下さいね。

 とお願いしたら……。「スージィの服を買ってあげると言うワシの楽しみを奪わないで欲しい」と逆に悲しそうな顔で言われてしまった。


 うぅ……ハワードパパにあんな顔をされては、コチラが引かない訳にはいかないのですよ…。


 ちなみにぃ~、12~3aアウルが10体なのに買い取りが100aアウル程なのは、そのウルフとボアの皮の一部を使って、わたしの狩り装備を作っているからだ!

 夏休みの間には出来上がるそうだから、きっともうすぐだと思う。

 今から楽しみなのですよっ!カッコイイ装備だと嬉しいゾ!



 一つ、衝撃的な事実としては、クラウド家が実は辺境伯の家系だと言う事を知ってしまった。


 ビックリよね!世が世ならハワードさんってば伯爵様……あれ?侯爵様だっけ?……あんまりそういう、貴族の爵位っていうの?良く分からないんだよね……。

 実際の所、ハワードさんの曽祖父様ひいおじいさままで辺境伯と言う物だったそうだ。


 因みに、アムカムと云うのは、当時の辺境伯の家名だったそうで、150年前に封建制度が解体され、民主化が行われた時、爵位を返上し家名も廃止したのだそうだ。


 クラウド姓はその当時の奥方様の旧姓で、それ以降、クラウドを名乗るようになったと云う話だ。


 そして、アムカムの森ことイロシオ大森林に隣接している村は、アムカム村を合わせて全部で5つ。

 この5つの村と1つの町を合わせて、アムカム郡と呼ばれている。

 これら全てが、嘗ての『アムカム辺境伯領』なのだそうだ。


 アムカムの森防衛に当る護民団は、このアムカム郡が統括している。

 そしてその最高責任者が、ウチのハワード・クラウドさんなのです!


 ハワードさんを『御頭首ごとうしゅ』とか『お頭』とか呼ぶ人たちが居るんだけれど、それはこう云う事らしい。


 護民団の班長をされている家の方達は、元々はアムカム辺境伯の従士だった家系の方達なので、現代でもハワードさんの実力もあり、その対応は常に敬意を払われているそうだ。


 でも『お頭』は止めてくれないかな?

 盗賊か山賊みたいで、何かヤダ!



     ◇



 で、大体午後は外出する事が多いのだが、夕方以降はまた家の手伝いをする事になっている。


 主にソニアママご指導の下、お裁縫やらお料理やらの家事全般なんですけどね。


 元々、自分は自炊暮らしを15~6年はしていたので、大体の家事をやって来てたから自信はあった。

 あったのだが!……ココのそれはレベルが違った!!


 ま、考えてみれば当たり前なんだよね。

 ココには、掃除機も洗濯機も電子レンジもガス台も無い!すべて手作業なのだ。

 裁縫も、ボタン付けぐらいしかやった事無かったしね。

 それがまさかレースを編むとか、刺繍をやる事になるとは、思ってもいなかったわよ!


 で、何気にソニアママってば、結構なスパルタだった。

 常ににこやかに「あら、よく出来てるわね。じゃあもう一度やってみましょうか?」「そう、もう出来るようになったのね?偉いわ!じゃあ今度はこれをしてみましょうか?」等々、有無を言わせぬ雰囲気で、次々と課題を提示してくる。


 与えられる課題のレベルがドンドン高度になって行く度、「ふおぉぉっ?!」と、目を回しそうになりながらも挑んでいる。

 有難い事に、このスージィの身体はとても器用で物覚えが良い。

 元のオサンの身体だったら、とてもじゃないけどこんなペースで出来るようにはならなかったと思う。


 更に言えば、オサンだった頃なら、レースや刺繍とかやってたら、忽ち辟易してしまったと思うんだよね。

 でも何故か、ワタクシ事スージィは、とても楽しめてやれている。出来上がりが可愛かったり綺麗だったりすると、とてもテンションが上がるのだ。


 元のオサンからは考えられない心の動きだが、これが身体と精神が同調してると云う事なのだろうか……。

 元の記憶と心身が、少しずつ乖離して行くのを感じるが、それが『スージィ・クラウド』を作って行く事になるのだと思う。


 少なくともわたしは、今のスージィのこの在り方と、周りの環境がとても気に入っている。

 元オサンの記憶を持つ思春期の少女……。

 それが今のわたし、『スージィ・クラウド』なのだと自覚しているのだ。


 さあ!ソニアママ。どんどんわたしを仕込んで下さいよ?いつか貴女の期待に添える様、何処へ出しても恥ずかしくない立派な淑女になってみせますからねっ!




 あとあれだ!シャワーやドライヤー、ウォシュレット!この辺の機器が使えた理由。

 これは『魔法道具』の存在があったからだ。

 う~~む!実にふぁんたじぃ!!


 この装置の中心部分には、脱着可能な魔力が充填されている、電池のような物が装填されている。

 電気を蓄えている訳じゃ無いので、『電池』って表現は変なんだけどねっ!



 『魔法道具』は、一つの魔法だけが使える装置で、『魔力電池マジック・セル』に魔力をするか、新しい魔法電池マジック・セルを装填し直す事で、道具自体は長く使って行ける物なのだそうだ。

 『魔力電池マジック・セル』は文字通り電池みたいな円筒形の形状で、小さい物では単三電池くらいかな?クラウド家で使っている一番大っきなのが、お湯を出す魔法道具用の物で、ヘアスプレーくらいの大きさだ。


 この筒のボディーには、縦長に細い窓が付いていて、そこから淡いエメラルドグリーンの光が漏れ出ている。

 この光が弱まると、内蔵魔力も少なくなっているので、その時には魔力を充填して使うのだそうだ。

 充填しても、光も発せず中身が澱んできていたら、それはそのセルの寿命なので、その時は『魔力電池マジック・セル』を交換するのだと教わった。


 使用済みの『魔力電池マジック・セル』は、村の燃料屋さんが引き取ってくれる。

 その時には廃棄されるセルに対して、『今迄頑張ってくれてありがとう』と、手を合わせて送り出してあげるのだとソニアさんに教わった。

 うん、物を大切にする良い文化だね!



 でも、こんな便利な物があるなら、もっと色々な物に利用すれば良いのに、と思って聞いてみたんだけれど。「明かりはランプがあるでしょ?オーブンも薪があるわ。わざわざ魔法道具まで使う必要は無いでしょ?変な子ね」とソニアさんに笑われてしまった。


 この国は、……少なくともこの村の人達は、今ある物で足りるなら、それを使って行けば良い。態々魔法道具まで使うまでも無い。という意識が当たり前らしい。


 それでも生活水準はそんな低くなく、結構近代的?

 少なくとも中世とかじゃない。

 やっぱり19世紀くらいなのかな?でも内燃機関が無い世界だから、微妙な違和感もあるのよねー。


 あれか?内燃機関の代りに、魔法技術が進歩した世界って事で良いのか?

 こういう世界観、何て言うんだっけ……?



 んで、因みにこの『魔法道具』、わたしでは使えないのです。

 あ、使えないと言うのはちょっと違うな、わたしではのだ。


 要するに、主電源のオン、オフがわたしの権限では出来ない。


 出来るのは、既に起動している物を使うだけ。

 つまりシャワーなら、魔法道具を起動して貰った後、お湯を出すとか温度を変えるとかは出来るけど、誰も居なければ起動できないので、使う事が出来ない。と云うワケ。


 この『魔法道具』起動には資格が必要なのだ。

 アウローラが公認する国家検定制度で『魔法技能士資格検定まほうぎのうししかくけんてい』と言うらしい。

 なんかイキナリ、名称がファンタジーから外れて来ましたがっ!


 でも、資格の内容はファンタジーだと思う。

 試験に受かると、自分のエーテル体に資格の等級に合った魔方印が記録されて、魔法道具などの有資格者ゆうしかくしゃしか使えない物が使用可能になるのだそうだ。



 この『魔法士検定まほうしけんてい』四級で魔法道具の起動が出来る様になる。


 三級で魔力電池マジックセルへの魔力充填等が出来る。


 二級以上になると魔法道具の保守点検や、開発が出来る様になる。


 二級を持っていれば生活には困らないそうです。

 この村にある魔法道具屋さんも二級保持者。でないと商売が出来ないからね。


 え?一級はどうなんだ?って?


 一級保持者は最早神っ!……っていうか、一級と二級には天と地ほどの差があって、そんなレベルらしいんだけどね。


 一級を持っていれば、新たな魔法開発も許可される。

 危険が伴う事もある無秩序な魔法の開発は、国が禁止しているのだ。

 それを、一級保持者になると研究を許されるそうだ。

 また大学など最高教育機関での指導も、一級保持者が行う事になっている。


 そう、実はヘンリー・ジェイムスン教授は、魔法技能士一級保持者だったのですっっ!


 因みに、ウチの大人たちは皆、三級を持っているそうです。

 だから誰でも充填が出来るから、魔力電池セルの魔力が尽きても安心なんだって。


 でも、ハワードさんだけでなく、ソニアさんやエルローズさんまで魔法が使えるというのは、ちょっと驚きだったね。



 そんで、この資格って、主要都市や王都で取れると云う事で、主要都市の高等校へ入れば魔法技能の授業でそのまま取得出来たりする。

 レベルの高い学校になると、入学試験が通れば資格取得になるのだとか!

 なのでこの村では、高等校の進学率はほぼ10割なのだそうだ。


 そういう訳で今、村に居る子供達は誰も魔法道具を起動できない。

 夏休み明けから進学するカーラ達は、次に帰って来るときは有資格者になっているらしい……。


 別にちょと全然悔しかったりしないんだからねっ!



     ◇



 で、夏休みの午後の時間なんだけど、大体、お昼の片付けを済ませた頃にやって来るミアに拉致られる。


 晴れている日は、当然の様に外を連れ回されるが、雨の日でもわたしの部屋で一緒に過ごすので、本当に会って居ない日が無い。


 ウチのソニアママもハワードパパも、わたしが村の子達と仲良くするのが本当に嬉しいらしくて、いつもミアの事をとても歓迎してくれる。


 村の中を案内して貰う時は、決まってビビが一緒だ。


 行く先々で、村の人達への挨拶や施設の説明とか、本当にちゃんとしていてとても頼りになる。多分わたしはこの子の事を一番信頼している。


 因みにミアは、わたしにとって一番の癒しポイントだ。


 軽くパニくりがあっても、この子が居ればすぐ落ち着く。特に胸部とか胸とか堕肉とか……。わたしの中のオサンが、愉悦に浸って行くのですよっ!



 そんな夏休みの前半は、ミアに連れ回されながらもカーラ達お姉さま方に、更に拉致られる事が多かった。

 あの人達、わたしとミアが何処に行くか把握してるんじゃないかな?大体行く先で捕まるのよね!


 カーラ達に拉致られた最初の頃は、そのまま誰かの自宅へ連れて行かれてた。


 そして始まる着せ替え遊び。


 初めは服を脱がされて下着だけにさせられると、とても恥ずかしくって、涙目なって隅に縮こまってしまってた。

 まぁそんな時でも、ミアの胸部があれば直ぐに立ち直るんですけどね!


 やっぱりココに来て、わたしの中の羞恥心とか、娘心的なモノが、生まれ育って大きくなっている気がする。

 男だったなら、恥ずかしかったとしても涙目になって縮こまるとか、ありえなかったんだけどね。

 自分が確実に変わっているのが、この事からだけでも良く分かった。



 で、結局服を剥ぎ取られた後は、三人が持ち寄った衣装に、次々と着せ替えられるんですよね。


 普通に可愛らしい物からボーイッシュな物、お茶らけた物や、ファンキーな物まで。

 お姉さま方は、キャッキャと喜んだり大ウケしたり。これスマホとかあったら、絶対パシャパシャ撮りまくってるよね!


 特にアリシア!この人こう云うのが好きなのか、何処から持って来たの?って言いたくなる物を、やたら用意してくる。


 ゴスロリっぽいのはまだ良い。

 レザーでベルトが沢山着いたパンクっぽいのも、何気に厨二臭いけど格好いいから良いよ?!

 でも同じレザーでも、このあちこち引き千切ぎられていて、大事な所まで見えそうになってるボンデージなのか、世紀末覇者なのか分んない衣装は何処から用意したの!?


 でも、一つ分った事がある。

 おっきなリボン付けられて、幾重にも重なって大きく膨らんだティアードスカート。

 今まで着た中で、一番フリルが大きくて沢山着いた衣装。


 そう、何かのお話に出てくるお姫様か、宝塚か!?みたいな恰好にさせられた時。

 自分でも分るくらい、テンションがダダ上がりになってしまったのだ!


 あぁ、わたしってばこういうのが好きなんだ!という事を自覚させられた。


 思わず鏡に映った自分を、色んな角度から何度も見直してた。

 クルクルと回ると、薄桜の生地のスカートが光を反射して、綺麗なローズピンクの光をヒラヒラと撒き散らしながら広がるのが楽しくって、何度も鏡の前で回っては一人ポーズを取っていたら……。


 いつの間にか、お姉様方が悶死しそうな様相でのた打ち回ってた。

 ミアが赤い顔してハァハァしながら、何度もわたしの名前を呼んでいたのはちょっと怖かったけど……。その日は一緒に来たビビまで、顔を赤らめプルプルしてた。


 ハタッと我に返り、むっちゃクチャ恥ずかしくなって、その日はジェシカの家だったから、彼女のベッドへ「うにゃぁぁぁぁ!!」と叫びながら潜り込んでしまったのだ。


 その後直ぐに、ベッドから無理クリ引き摺り出され、お姉様方とミアに思い切り滅茶苦茶捏ね繰り回される事になる。


 色んな柔らかい肉の弾力に挟まれ回されて、目玉グルグルになってますが、こんなん状態のわたしの身体の様々な場所を……、それはもう大変なトコロも含む!を触りまくってる手!ミアの手でしょ?!最近気づいたんだからね!もう!!

 ……まぁ、わたしもミアの堕肉を揉みしだき捲くってるワケだから、文句は言えないのだけどね……。


 そんな感じの姦しい日々を過ごし、わたし達の夏休み前半は、あっという間に過ぎて行ったのだった。


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次回「アムカムの夏休み その2」

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