第16話スージィ目立たず平和な庶民を目指す!

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「もう始めてから結構経ちましたから、身体も随分と出来上がってきましたね」

「そうか?そう言えばもう2年位やってるな」

「何気ない日常の動きでも、かなりパフォーマンス上がってますよ。身体が楽なんじゃないですか?」

「そうだな、歩くのとか全然平気にはなってるよな。疲れとかも寝りゃ取れるし、10代に戻ったみたいだよね」

「まあ目指すのは5歳児の回復力ですから、まだまだですけどね」

「なんじゃそりゃ?!!」


「でも、今の先輩の身体は既に達人の域には入ってますよ」

「え?そうなの?全然強くなった気がしないけど?」

「強くなる修行もしてないのに、強くなる訳無いじゃないですか!ベースが出来たって事です。そこから其々専門のトレーニングをしていく事で、野球なら野球。テニスならテニス。武道なら武道の達人に至るためのベースが出来た。と、達人へのニュートラルな状態に入ってるって事です」


「そうなの?なんだ。んじゃ何かやった方が良いのかね?合気とか居合とか?」

「やりたければやってみたら良いと思いますよ?何か武道系やりたいんですか?」

「ん~~、特にそう言う訳でも無いかなぁ……。気が向くものがありゃ良いんだけどねぇ」

「まあ、やりたい物が出来てからで良いんじゃないですか?それに、日常生活の達人になるってのも有りだと思いますしね」


「何気ない日々の暮らしこそ至高だよ。一日一日を大切に生きる事こそが人生と言うものだ」

「言い草が年寄り臭いですよ」

「もうオヤジの域ですから」

「そうですよね、身体の在り方に沿って心の在り方も変化しますからね」


「なんだよ。心身共に年寄り臭いって言いたいのかよ?」

「そうじゃなくて、身体のパフォーマンスが上がってますから、自ずと精神にもゆとりが出来始めてるはずですよ」

「そうなの?心の在り方何て分かんないよ?ゆとりなんてあんのかな?」

「そうですね、それじゃ心の在り方っていうのを水に置き換えて考えてみましょうか」


「水?」

「水です。水の入れ物です。心が狭かったり小さかったりする人はコップや洗面器位の大きさしか無い。多少広ければ風呂桶や池位はあるかもですが……、まだ全然小さい。揺れたり風が吹いたりすれば、直ぐに水面が波立ってコップや洗面器では、あっと言う間に零れてしまいます。拳大の石なんか投げ込んだら、コップなんかは割れてしまうし、洗面器でも殆んど溢れてしまいますよね?抱えるような石だったら、風呂桶でも溢れるでしょう。池だって波立って大変です。プール位なら溢れずに済むでしょうけどね」


「その風とか石とかってのは、外からの刺激とか攻撃とかって話?」

「そうですね、心が外から受ける影響です」

「そういう精神攻撃的なものってさ、受け続けてると段々丈夫になって効かなくなって来んじゃね?その、塀や壁とか立てて守るとかもあるっしょ?」

「それは心が麻痺しているだけですよ。塀や壁なんか立てたら攻撃以外も弾く様になってしまいます。前にも言ったと思いますが、痛みって言うのは重要な情報なんです。それを受け入れて耐えられるのが強さってモノです。痛みを感じない事は強さとは違います。とは言っても、受け切れない衝撃を受け止めろとは言いませんけどね。要は受け止められる素養を創っていく事が大切なんです。例え車やダンプの様な岩が飛び込んでも、深い湖ならやがて水面は直ぐ落ち着きます。対岸では波も立ちません。嵐の様な風が吹き荒れたとしても、海の様に広ければその場所の水面は荒れても、違う場所では波一つない凪いだ水面があるでしょう。細やかな風でも小さい波は立ちますが、直ぐに鏡のような水面を取り戻す。それが究極的に目指すところです」


「おお!明鏡止水ってやつだな!?」

「身体能力が変われば、それに見合って心の奥底にも変化が訪れます。表面上では気づかなくとも少しずつ深さや広がり、或いはその在り方までもが変わって行くものです。

 いいですか?です。それをお忘れのないように」


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「……また、夢か……」


 目が覚めるとそこには見知らぬ天井があった……ってのは、何かのプロローグだったっけ?



 天井は高く白い。

 天井一面に1メートル角程で、木製の枠が格子状に組まれていた。

 その格子の中には、円形に植物をモチーフとしたデザインが複雑に描かれ、豪華さを演出していた。

 格子の木枠も重厚でレリーフが細かく彫り込まれ、この天井を見るだけでこの部屋の格調高さが伺われる。


 今はベッドの中から天井を見上げている状態だ。

 ベッドは柔らかく体を包み、清潔感のあるカバーとシーツで覆われている。


(ベッドで寝るなんて、こっちへ来て初めてだな……これだけ気持ち良けりゃ、そりゃグッスリ寝ちゃうよねぇ。昨夜は……ああ、そうだ、夕食の途中で寝ちゃったんだ。それにしても何て言うか、……ここに来て幼児化してないか?自分!)


 昨日は涙が止まらないまま、慌てたハワードに抱きかかえられて帰宅。


 夕日に感動したとスージィが伝えると、取り乱すハワードに呆れ気味にソニアが、「女の子にはそう云う時もありますよ」と諌める一幕があった。


 その後の夕食でスージィが再び、旨い美味いと感涙に咽びながら、鹿ステーキや鹿のタンシチュー等で腹を満たすうちに寝てしまった様だ。


(なんだか、お二人には恥ずかしいトコばっかり見られてる気がするよ。思い出すだけで恥入ってしまいます……)


 外はまだ陽は昇っていないが、空は白み始めていた。


 思えばこっちに来てからは日が沈んでから寝て、日が昇れば起きると言う、何ともナチュラルな生活スタイルになっていたな、と考えながらベッドから抜け出した。


 ベッドに入れられる前に、寝間着に着替えさせられていた様だ。

 薄い水色のコットンの織物だろうか?軽くて肌触りが良い。


(食事中に寝落ちして、寝間着に着替えさせられ、ベッドまで運ばれる……。ホントマジで幼児だよコレ……)


 俯いて自嘲気味に考え、頬が少し引き攣ってしまう。


 目の前の壁には、小さな机が置かれその横に姿見が立てかけてあった。

 机の上には、着替えが綺麗に折り畳まれ置いてある。


 姿見は、ピンクに染めた木枠で可愛らしいレリーフが刻まれている。

 天辺にはリボンまで掘られていて、余りこの部屋の調度には合っていない。


 きっとエルローズさんが着替えをする時の為に、と気を利かせて置いてくれたのかな?と推察する。


 そのまま寝間着を脱ぎ捨て、ショーツ一枚の姿で鏡の前に立った。


「う~~む、ちゃんと鏡で見るのは初めてだな……、やっぱりこの身体、13歳って言うには……大人くない?」


 身長153ってのも二十歳はたちくらいでもおかしくないよなぁ……。などと、身体の色々な部分……胸やら腰やらお尻やら……を触りながら、色々と感想を洩らしていた。



 細い首に小さい肩、決して小さくは無い!と思う形の良いお椀型のバスト。

 キュッと引き締まった折れそうに細いウエストに、ちょっと縦長で小さいおヘソ。

 小振りだが少し後に突き出た、立体的で可愛いお尻。

 細い足首からふくらはぎへ広がるライン、内側へカーブを描き膝から内腿へと昇る脚線美はとってもエロ可愛い。


ウン!可愛イヤラシい良いスタイルだ!


「髪も、こうしてちゃんと見ると……ウン綺麗。赤って言うか……、光を透かすとルビーみたい」


 右に左に頭を動かし髪を振って見る。

 外側に跳ねた髪が紅い光を振り撒いた。

 綺麗な天使の輪がその紅い色を更に引き立てる。


「お顔も……、まるでお人形さんみたいに整っちゃって。……でも、確かに幼さはあるかなぁ?ちゅうぼうって言えば見えなくも無い?でも、ウン!オメメくりっくりの美人さんだねぇ!……綺麗だよ、スージィ…………」


 鏡に手を置き決め顔で言ってみる。


「ン!……さて」


 少し頬を染めながら、軽く咳払いをして一歩下った。

 若干恥ずかしく成った様だ。


 改めて鏡に向き合い、脚を内股で肩幅に開き、腰を軽く左へ突出し右肩を上げ左肩を下げる。

 右腕は体に沿って下へ伸ばし、掌を後方へ向け指を反らす様に開く。

 左腕は脇を閉め胸の下で曲げ手を顔の前へ、手の甲を正面に向け指を開き、人差し指は鼻筋に合わせ正面を見据えた。


 香ばしいポーズの完成だ。

 いわゆるレベル1のジョ〇ョ立ちである。


 そのポーズのまま鏡を睨み……。


「……いつからコレが、夢ではないと気付いていた!?」


 と鏡に向かい問いをぶつけた。


 『バ・バーーーーン!』と背中に描き文字も背負う。


 トットット、とベッドまで後ずさり、そのまま仰向けに倒れ込んだ。


「けっこー前からですぅ~~~……」


 ぷしゅるるるる~~~……と空気が抜ける様に萎れて行って。


「やっぱり他人と接触したら、夢じゃ無いと思い知るるるぅぅぅ……」


 ゴロンゴロンと転がり回ってからうつ伏せになり、呻き声を上げ始めた。


「こんなのさ~~どー処理したらいいのよ~~~?ゲームの女キャラで?在り得ない力で山脈削ったり?モンスター相手に無双したり?こんなんでイイの?人間でいいの?此処に居てイイの?生きてって良いの?」


 うンにゃあぁぁ~~~~っとベッドの上で手足をバタつかせる。


「でも今、コレは生きてる。生きてる以上は生きて行きたい。ハワードさんは優しくてソニアさんの料理は美味しい。美味しいは正義!美味しいは身体が喜ぶ。身体は美味しいと生きるを渇望している!ならば生きる事を考える!ちゃんと生きる!!」


 なんか当たり前の事なんだけどさ……とかついでに呟いた。


「そんでも人間、屁理屈でも何でも良いからまず、自分を説得しないといけないからねぇ~」


 めんどくさいよねぇ~~……。ぷはぁーーーっと、もう一度転がって仰向けになり盛大に息を吐き出した。



     *****◇*****◇*****



 では、これが夢ではないとしたら何なのか?


 ゲームか?ゲームの中か?いや、それこそ無いわ。

 アニメやラノベに出てくる様なVRMMO?ヴァーチャルな体感ゲームをやっていたとか言うなら、まだそんな可能性も感じたかもしれないけど、自分がやっていたのは普通にPCでのMMOだ。

 いきなりリアルでヴァーチャルなゲーム世界に来てしまったとか、それこそ無茶だ無理ゲーだ!

 夢だと言われた方がまだ説得力がある。

 ゲームの中の世界ってのは、やっぱ無いだろう。


 大体にしてゲーム的要素が薄くね?

 まぁ確かにスキルは使えるしインベントリもある……けど、ウィンドウとか出ないし、ステータスも判らない。

 『氣』や『力』の入れ方一つで能力の上限下限が幾らでも変わるし……。

 能力の数値データと無いんじゃね?とか思ってしまう。


 やはり、どこかの骸骨なギルマスや、仮眠中に召喚されたプログラマーみたいなラノベっぽく、異世界転移ってのが落とし所か?

 実際自分寝落ちしてたし…………多分。

 あ、プレイヤー達が丸ごとキャラとして、異世界へって話しもあったっかな?


 どっちにしても……どことも知れない世界に、仲間も知り合いも無く、プレイキャラクターの姿でたった一人で放り出された、ラノベ的異世界転移……ってのが今の現状。

 それでFAかな?




 で、そんな異世界で生きて行くのならば、考えておかなきゃイケナイ事が幾つかある……。


 まず絶対的にクリティカルな案件は……。どうやって生きて行くか?つまりどうやって生活するか?だ。


 お金があると言ってもゲーム通貨だしね。

 あれがそのまま使えるとは思えない。

 見た目は金貨っぽいが、此処でのきんの価値がわからん。

 大体本当にきんなのか?玩具おもちゃのおかねとか言われたら目も当てられないぞ。


 持ち物を売ってお金にするのもアリだけど、武器防具を売るのは色々と騒ぎにでもなって、危険な事になったら嫌だから控えた方が良いよな。

 毛皮とか壺とか当たり障りの無い物なら平気かな?

 何処で売ったらいいかワカランってのが一番の問題なんだが……。


 客観的に見て、今の自分は言葉もよく喋れない世間も知らない国外のガキだ。

 突然どことも知れない、知り合いも居ない場所に放り出された子供が取るべき正しい選択は……。


 信頼の置ける大人を頼る!これしか無い。


 現代日本なら警察機構を頼るべきなんだが、ココにあるのかがワカラン。


 騎士団ってのがあって、それが似たような組織っぽいのはチラリと聞いた話では伺えたけど、この村には居ないっぽい。


 でも、幸いな事に神殿での様子を見るに、クラウドさんは、この村ではそれなりの地位なり信頼を持たれてるご様子だ。

 クラウドさんに相談するのが正解かな。

 何時までも、ココでお世話になっている訳にもいかないもんね。

 上手くすれば、住む場所や仕事を紹介して貰えるかも知れない。


 ウン、その位は期待できそう。

 今日早速、時間があったら話しを聞いてもらお!

 生活基盤については、まずはそれから……ってトコだな。


 …で、だ。

 知らなきゃいけない事もある。その筆頭が勇者問題。


 それと異世界転移者。


 神殿で、ヘンリーさんから聞いた話からしか分かんないけど……。


 200年前に、この世界に現れた大きな力を持つ別世界の人間。

 200年前に何かからこの国を救って国を纏め上げ、現代の礎を創った。


 らしいんだが……。何となく思うんだけど……何となくだけどね。

 この勇者って、……現代人だったんじゃね?


 いや、根拠は薄いと思うんだけど……なんというか、この世界の文明の進度って……なんかチグハグなんだよね。


 交通機関は馬車くらいで、どうやら内燃機関は存在していないらしい。


 生活様式を見る限り18~19世紀位だと思うんだけど……。

 我々の世界なら産業革命が起きて、蒸気機関とか発達して列車が動いてた頃だが、どうもそれが無いっぽい。


 ライフラインも無い。

 水道は無くて井戸だ。台所では手漕ぎポンプで水を出してた。

 当然電気もガスも無い。オーブンは薪で、明かりはランプと蝋燭だ。

 そのくせ温かいお風呂にシャワーまで使える。

 コードの無いドライヤーまであった。


 驚いたのはウォシュレット!なんであんの!?


 もーービックリしちゃったわよ!イキナリ温水に突き上げられちゃうんだモン!

 乙女的には大変な事態ですよコレ!?うぴゃぁぁぁ!とか変な声あげちゃって、エルローズさんに驚かれて笑われちゃったし……。

 あぁっ!思い出しただけで恥ずかしくなってきた!


 絶対におかしい!

 インフラの土台さえ無いのに、生活水準が現代並みとかどうかしてる!

 どっか横から、技術だか知識だかを挟み込んだ様にしか見えない。

 何やった!?勇者!


 勇者と随行者以外にも渡界者は居たのかもしれないし、居なかったかもしれない……。

 まぁこの辺は、今の段階では全く分りませんけどね。


 でも居たとして、その行方を追うのは間違ってないと思う。


 勇者たちは何処から来て、何をやって何処へ行ったか?

 コレが取敢えず調べる所かな?

 もし彼らが元の場所へ帰る事が出来ていたなら。……帰る手段があるのなら。


 自分も帰る事が………なにが?……どこから?……どこが?……どこに?……。


 やめよう、コワイ考えになってくる。

 まぁ『勇者伝説を追う』は確定事項で。


 もう一つ、最大級の懸念案件。

 勇者はゲームプレイヤーだったのか?

 勇者がそうなら随行者もか?

 それ以外にも居たのか?

 今も居るのか?

 これからも来るのか?


 今のトコ自分はこの世界に来て無双したけど、ゲーム内では雑魚プレイヤーだ。

 高レベルプレイヤーが居たら瞬殺される自信はある。

 PKが来たら一溜まりもない。


 今までに、この世界へ渡って来た人……これから来る人が高レベルだったなら、自分は雑魚庶民もいいとこだ。

 勇者が高レベルプレイヤーだったってのは、十分に考えられる。


 少なくとも、自分は勇者になろうなんて思わない。

 庶民の自覚あるからね。


 男と生まれたからには天下狙わずどうする?……的な発想する人も居るんだろうけど自分には無いし。

 そう云うのは、どうかコチラとは関係無いトコで頑張って下さいね……と考えるタイプですから。


 そんなね、己以外の大多数の面倒見るなんて自分には無理ですからね!

 精々家族とか友だちとか身内とか、身の回りの人らの面倒見るので精一杯になっちゃいますよ!

 出来て数人のチームリーダーっすからね!!


 ミスしないように前もって注意警戒しつつも、ミス出たらフォローして、愚痴聞いてやったり、慰めてやったり、叱ったり。上からスケジュール調整の無理言い渡されて、そんなん無理!!と言ったり言われたり。それでもチームに助けられつつ何とか間に合わせても、出来て当然みたいな顔で受け取られて、ねぎらい位掛けろよコノヤロ!と思っても言えなくて。それでも打ち上げの酒は美味いんで、このチームで良かったなぁとか思ってしまう……。


 そんな庶民なんですよ!!


 社長?大変だよね?大勢の生活の責任背負ってんだから頑張って下さいよ!

 ボクには出来ません!考えただけで胃に穴が開く!

 夢をでっかく?天下?しらねぇよ!!勝手に見てろ!!!

 別にヒルズの高層階からブランデー燻らせて、夜景を見たいとも思わないし。

 オレは地べたが好きなんだ!野毛の立ち飲み屋の樽テーブルで、焼き鳥食いながらホッピー飲むのが美味いんだよ!!


 ああ!シロコロ喰いてぇ!!!


 ……おっと、失礼しました。

 なんかこんな所で、仕事のフラストレーションが噴き出しまくってしまいましたね……。まぁ要するに自分は根っからの庶民である!と強く主張したかった訳です。


 色々と覚悟も決めなきゃいけないだろうしね……。


 正直、自分の様なイレギュラーな存在が、この世界に居て良いのか?とも考える……。

 だから、目立つ様な行動はとるべきでは無いのだ。

 本当なら、どこかでヒッソリと身を隠すべきなのかもしれない。

 それが出来ないなら、せめて慎ましく庶民としての生活を築いて行けば良いのだ。


 そう、庶民としてこの世界に融け込む様に努力をしよう。


 高レベルプレイヤーが居るのなら、悪目立ちして彼らに目を付けられたらその時点でendにも成りかねない。

 目立たず出しゃばらず、地域に根差す明るい庶民!目指すところはそれ!


 己を知り、奢る事無く、身の丈に合った生活を模索するのだ!



     *****◇*****◇*****



「……己を知り……か」


 仰向けにベッドに転がり、上にあげた右手を見ながら呟いた。


「『心と身体はひとつ』……ね」


 右手を上げたまま拳を握りしめ……。


「身体は美少女!頭脳はオッサン!!」


 パタリと力なく手を額の上に落した。


「……なら、心は?……心は何なんだろね……?」


 その問いに答える者は何処にもいない。


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次回「スージィとクラウド家の朝」

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