やっぱり似た者同士
事前に用意していた隠れ家——といっても、単なる洞窟だが——に到着してからしばらくして。
ようやくカケルの体力が回復したようだ。
もう白目もむいていないし、ヨダレも垂らしていない。
カケルの体力が回復したのを確認して、セイレーンは委員長に言葉を投げかけた。
「ずっと気になっていたのですが…… 委員長様が指にはめておられるその指輪、ひょっとして、『スキル封じの指輪』ですか?」
「その通りです。よく、ご存じですね。私はスキルを封じられていたんです。離宮に用意されていた私の部屋には、スキル封じの結界が張られていて——」
興奮した様子でカケルが口をはさむ。
「えっ、それって魔法の結界と、どう違う…… あっ、ごめん。つい熱くなちゃった……」
これだから、異世界ものラノベマニアは……
「結界は『聖術』によって作られるのですよ」
セイレーンが微笑みながら教えてくれた。
結界についてもう少し知りたかったカケルだが、ここは大人の対応をすることにした。
「ごめん、話を続けてくれるか?」
カケルが委員長に言葉を向ける。
「私は結界が張られた部屋にずっと閉じ込められていたの。そして部屋の外に出るときは、必ずこの指輪をつけさせられていたってわけ」
そう言って、二人に指輪を見せる委員長。そして——
「私は今、『スキル封じの指輪』をはめている。だから私はスキルを使えない、そうよね?」
真剣な表情でカケルとセイレーンの顔を見た。
二人とも委員長の真剣さにおされて、無言で頷くのみ。
「じゃあ、私のスキルの名前を言うよ、いいわね? 私のスキルは『説教』。説明には、『言葉で人の行動を変容させられる』って書いてあったわ」
「……それは、精神干渉系のスキルですか?」
セイレーンも真面目な顔で委員長に問う。
「たぶん、そうだと思います」
そう言うと、委員長はこの世界に召還された日の出来事を話し出した。
この世界に来てすぐ。
謁見の間で全員、ステータスを確認させられた。
委員長のスキルを見た後、クラスメイトの態度が変わったそうだ。
「そりゃあ、相手を洗脳出来るような、怪しげなスキルを持ってるんだからね……」
寂しそうにつぶやく委員長。
いたたまれなくなった委員長はこの世界に来て3日目に、級友たちが暮らす王宮から出て行きたいと、自分から申し出たそうだ。
ただ、向かった先の離宮で24時間監視されるなどとは、思ってもいなかったそうだが……
「うおおおーーーん! 委員長、辛かったよなぁ!!!」
「びえええーーーん! 委員長様、おかわいそうです!!!」
「……ねえ、ひょっとして、あなたたちって、実は似た者同士なの? 私に同情してくれるのは嬉しいんだけど…… でもね、私が王宮を出るって言った理由はそれだけじゃないの」
そう言って、話を続ける委員長。
「王女がみんなに悪い噂を流したみたい。『彼女はみんなを洗脳出来るから危険だ』みたいなことを言って。最後まで味方になってくれた剣道部の
「あの王女の野郎! 酷いことしやがって。絶対に許さネエからな!!!」
「あの王女の野郎め、です! 絶対に許して差し上げませんからね!!!」
「……全然大事なことじゃないけど、二回言わせてもらうわ。あなたたちって、実は似た者同士なの? 喜怒哀楽が激しいの? それとも情緒不安定なの?」
口ではそう言いながら、ちょっと嬉しそうな顔の委員長。そして——
「これからも、私はこの指輪をつけ続ける。だから早瀬君たちを洗脳することは出来ない。これでいい?」
委員長はそう言うと、カケルとセイレーンの顔を交互に見て確認する。
しかしカケルは——
「大丈夫だよ、そんな指輪つけなくても。委員長がそんなことしないヤツだって知ってるからさ」
「…………ありがと」
委員長は
「カケル様は発言も男前です!」
嬉しそうにセイレーンが声を上げた。
その言葉を聞いた委員長は、
「ひょっとして、早瀬君も洗脳系のスキルを使えるの? なんだかセイレーンさんの様子がおかしいんだけど?」
と、カケルに向かって言葉を放つ。
「なんだよ、失礼なヤツだな。今のはセイレーンさんのナチュラルな反応だよ」
カケルはそう言い返したが……
「……絶対におかしい」
まだ納得できない様子の委員長だった。
なにせ委員長は高校入学以来、カケルが女子にモテている様子など、一度も見たことがなかったのだから。
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