ファーストコンタクト

はじめての魔法

呪文を唱え、俺は炎を纏った右腕を少し離れたところに置いてある藁で作られた練習用の人形に向けて思いっきり突き出した。纏った炎は俺の意思に反応して腕から離れると蛇のような動きをしながら人形に当たった。人形は一瞬で塵になった。これが魔法か。面白いじゃないか。俺は今、修練場と呼ばれる道場みたいなところにいる。まー床は石畳だったり色々違ってはいるんだが用途としては道場のそれだった。


俺が転生したこの世界は、5年毎に開催される世界魔闘大会なるもので各国の序列を決めるらしい。そしてその世界魔闘大会、通称WMTでは各国を代表する信託の騎士が5人一組で戦うことになる。5人を決めるのは各国でその基準が異なり、WMT前に大会を開催してその順位の高い者だったり、神託を受ける高名な呪術師に判断を任せたり、WMT用に指導者をつけて若者を教育するなんてところもあったりで様々なようだった。俺が落ちてきた国カーマウォアはその中の教育を選択していた。国民は15歳になると魔法適性試験を受けることが義務付けられていて、その時の潜在値の高い者がWMT候補生として選ばれる。そして俺が落ちてきたここWMT養成学校エディスで本格的教育を行い、WMT選手として育て上げられるのだそうだ。あれ、俺の出番なくね?とか思ったが杞憂だった。天空からの使者、つまり俺のことな。それは昔からのしきたりでよっぽどの事がない限りWMTの選手メンバーに組み込まれるらしい。まぁ潜在値を測られたりするんだが、女神からの贈り物効果でだいたい他の一般生徒よりも能力が段違いだから仕方ないだろう。だけどなー。なんだろ、この大学受験を裏口で入学した感じ。他の生徒たちは色々頑張ってきたのにぽっと出の奴とか入って大丈夫なんだろうか?そんなことを考えたりしたが、実は各国で参加するチーム数は最大で5組まで出場可能となっていると聞いてほっと胸を撫でおろした。さすがにそんな他人蹴落としてまで俺TUEEを体験しようとも思わないしな。そんな諸々の話を俺はスタイリッシュなおばあ様とでも言ったらいいのだろうか?豪華な装飾の施された服、後ろでまとめられたグレイヘア。これぞ王室って感じの学長から聴いた。


そんなこんなで俺は今、教員であるシエルさんから初歩の呪文を習っていた。魔法は精霊契約が基本と女神が言っていたが、それは莫大なエネルギーを必要とする場合に限ったことで簡易的な呪文は空気中の構成要素の比率を変えることで成り立つみたいだった。地球の空気は確か、窒素とか酸素とかだった気がするが、こっちは各精霊のエネルギー、マナが構成要素の大部分を占めていてその中の火なら火、水なら水の要素を集めてやると魔法は発動した。俺はシエルさんから習ったことを右手でまとめてみた。親指に火の構成要素を高め、人差し指に水の構成要素、中指には風の、薬指には土の、小指には光を。そこであることに気づく。習った構成要素の他にも使っていない要素が存在する。それを集めたらどうなるんだろう。そんなことを考えていると、


「すごいじゃない。そんなこと出来る人初めて見たわ。」


俺が右手に五大要素を集約していることにシエルさんはとても驚いていた。どうやらこれはとても難しいことらしい。なんてこった。俺はとんでもない才能を贈り物に選んでしまったようだ。

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