俺は人の風上にも置けないヤツ。

きむち

第1話 社会適合者なんていないんだよ。わかったな?

クズとはどんな人間を指すのだろうか。


浮気者?意地悪なヤツ?口が悪いヤツ?女たらし?性格が悪いヤツ?etc…


もしそうならば俺はクズだ。いや、超クズだ。


もはや──




人の風上にも置けないヤツだ。



◈◈◈



優美ゆうみさん、一緒に帰らない?」


「え、あ、う、うん。いい、ですよ」


女を帰りのデートの誘つた俺の名前は神浦かみうら 凜々都りりと。男子。高校2年。


自分で言うのもなんだが、簡単に言えば俺は人気者だ。

うん、自分でも分かる。


俺が所属するクラス、いや、学年の殆どの人間が俺を慕い、そして関係を深める。


隣でモジモジとする黒髪の女の名前は北野 優美。顔は普通。いや中の上ってところ。

けど別に付き合ってる訳じゃない。勘違いするなよ。俺はこんな普通の顔の女とは付き合わない。絶対にだ。神に誓う。


じゃあなぜ帰るかって?

簡単だよ。とりあえず仲良くなってりゃ後々に色々(意味深)でもできるんじゃねぇかなと。


あー、はいはい。クズですよ。俺は。


北野とは1週間ほど前にInstegramという画像共有アプリのストーリーの投稿をきっかけに話すことになった。毎日話すようになって、そして今に至る。


こういう女はだいたい落とし穴にハメさせやすい。

ちょっと優しくしたりちょっと一緒にいれば直ぐに惚れてくれる。単純なんだよ。

だから俺はコイツと一緒に帰るんだ。


「じゃあ、優美さん、帰ろっか」


「は、はい──」



◈◈◈



「へぇ〜、優美さんってゲームもするんだね」


正直なとこ、くだらない話なんてしたくない。

つまらないし、北野の日常や趣味の話なんてしていても全く楽しくない。ただただ暇なだけだ。


暇だから話を聞いてちゃんと反応してるフリして、だんだんと紫色に染まりかけている東の空をながめていた。


つまんねぇー。もっと面白い話しろよ。


「そ、そう言えば凜々都くんは好きな人とか、い、いるんですか…?」


お、早速面白い話じゃん?

てか、普通にもう俺にハマりかけてね?しんど(笑)


「いや、今はいないかな。でも、気になる人なら」


うん。完璧な回答。


「…聞かせてもらってもいいですか…?」


匂わせとくか。

ちなみに匂わせってのは、遠回しにアナタのことが気になってます〜、とか、好きです〜とか、そんな感じの印象を与える言葉とか行動を指す。多分。


「そうだな、毎日話してくれて、一緒に帰ってくれる人、かな」

そうちょっと照れてます風を醸し出しながら、途切れ途切れに言葉を零す。


「………そ、そうなんですねっ」


両の指を絡ませ、北野は俯いてモジモジとする。

んー。きたわこれ。


ちなみに今までで北野と一緒に下校をしたのは計7回。もうそろそろいい具合だと思うんだけど。


じゃあ最後の一言いきましょうか。


「──優美さん」


「は、はい!!」


「俺ん家来ない?」



◈◈◈



「優美さん、俺さ、優美さんのこと好きだよ」


「…………ほんと、ですか?」


神浦家、凜々都つまり俺の部屋のベッドの上にて、俺は北野に偽物の愛を伝えた。

こういうのはストレートな方がいいんだよ。意外と。


「うん、本当だよ」


「私も、です……」


はいはーい。知ってましたー。


そんな顔を赤くしてもちっとも俺は興奮しないから。とりあえずキスしない????


「ありがとう。嬉しいよ」


爽やかに。そして静かに返事をする。

さらに続けて囁くようにこう呟く。


「目、つぶって──」


一瞬、目を見開いた北野はしかし、ゆっくりと目を閉じ、こちらを見上げる。


控えめな化粧をした、まあ一般には美人と言えなくもないが、そのプルりとしたピンクの唇に、しっとりと唇を付ける。


つまり、接吻キスだった。


「んっ………」


北野の声が漏れる。


そう。その声だよ。俺が興奮すんのはさ!


ゆっくりと北野をベッドに押し倒す。

そしてゆっくりと手を握る。


「り、凜々都さん、そういうのはまだ……!」


ここで多少は拒否されることも知ってる。

けど──


「……いや、かな?」


この一言で全ては済む。

少しだけ目を薄めて、子犬のような顔を意識して、目を潤ませる。そうすると、


「……いや、ではないですけど……」


顔を赤らめてそう呟く。


ほらね。


「じゃあ、続けていい、かな?」


やめろやめろ。笑いを堪えろ。女がどんどん堕ちてく姿ってやっぱりサイコー!!


静かな顔で笑いをこらえてそう伝える。


「………はい」


そう小さい声で北野は頷いた。


俺はベッドの近くの棚から『0.02』と書かれた小さな箱を取り出し、そこから正方形の包み取り出す。


キスをしたまま丁寧に。

しかし相手の不安をゆったりと取り除いていく。


自分の手を相手の服の隙間に侵入させる。


ああ、なんて愉快なんだろう──!!


アドレナリンが溢れ出てくるのがわかる。生きている喜びを感じる。


そう、もう一度言おう。


俺は、


だ──!!






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る